絵描きの恋
恋をした。
自分の描いた絵の女の子に。
「なんてこった」
この娘を見るたびに胸が高鳴り、苦しくなる。もう忘れていた恋の感覚。しかし、どうやったって叶うわけない。忘れよう。
次の日。僕は恋した娘の絵をたくさん描いていた。気付いたらやってた。どうしよう。可愛すぎる。
キャラクターと結婚式を挙げるような人は実在するが、自分がそうなるなんて。だが、恋はハリケーンだ。
知り合いのAI開発会社の人にお願いして、VRのワールドにビジュアルを再現し、性格やバックストーリーを読み込ませた。
……違う。本当の彼女はこんなしゃべり方も考え方もしない。AIはただの傀儡だ。それに、ちょっとあいつ異常だよなって噂になってるみたいだ。だからそれ以降、僕は彼女に勝るような現実の女性を探すことにした。
数年後、僕は結婚した。絵の仕事がうまくいったのだ。彼女のおかげで上達したからね。
でもやはりだめだ。妻は結婚した途端豹変した。世間体や自分の老後が怖いとか、遺伝子を残したいといった本能に突き動かされて結婚したんだ。まるで猿だな。
僕は妻を説き伏せてつくった、専用のアトリエに向かう。一日の大半はここで過ごす。仕事に集中するためという理由なので妻も文句は言えない。
そこで毎日のようにあの娘の絵を描いた。
それから……結局、妻とは離婚することになった。
最初のうちは多少なりともあった愛情もなくなってしまった。顔も老いてきて、完璧すぎる彼女との違いにも耐えられなくなってきた。妻は仕事もやり出して今や自立している。女はあの娘のように、いつまでも少女のように美しい美貌を持ち、お淑やかで、従順で、変わらない愛を僕だけに注ぐべき存在であるべきなのに、まるで言うことを聞かない。それに離婚は高くつく。養育費も大変だ。愚かな選択をした。
それに比べ、この娘はいつまでも美しい。描けば描くほど美しくなっていく。僕にほんとうの愛をくれる。僕も、彼女を心から愛している。現実なんてもうどうでもいい。
「ずっと、ずっと、永遠に愛しているよ」
「ふふ。わたしも!」
彼女は言った。この恋は本物だった。




