第9話 占い師はまさか実家暮らし
「……とはいっても、今日はもう日も暮れたし」
占い師は腕の中の猫をなでながら、ふうっと小さく息をついた。
「飼い主探しは明日にするわよ。あんた、明日も付き合いなさいよ?」
「えー、明日もかよ。ま、どうせ休みにする予定だったからいいけど。……てか、猫はどうするんだ? 俺、宿借りてるから無理だぞ」
「もちろん私が預かるわ」
「え? あんな狭そうな小屋で?」
「しっつれいね!!」
占い師がむっとして、猫を抱いたまま腰に手を当てる。
「いっとくけど、あれは占い小屋であって“家”じゃないの!家は隣にあるんだから!」
「……え、そうなの? 二軒持ち? 意外と稼いでんじゃん、国一番の占い師様」
「なにそのまるでわたしが、“インチキ占い師”みたいな言い方」
占い師がジト目でこちらを見る。
うっっっその顔も可愛いのかよ
「いや事実――」
「なんかいった?」
「いや......すみません」
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「じゃ、今日はここまでね。明日は朝七時、ちゃんと来るのよ!」
「はいはい、わかりました」
俺たちは小屋の隣の通りを歩き、占い師の家の前で立ち止まった。
白い壁の小さな家。窓からは温かい灯りがもれている。
「ここがあんたの家?」
「そうよ。文句ある?」
「いや……別に。ただ――」
ちょうどそのとき、扉が開いて中から女性が顔を出した。
「あら? ミライアちゃん、お友達?
あらあらあら!かわいい猫ちゃんまでいるじゃなあい!どうしたの?」
「ママっ!? ち、違うの、この人はそんなんじゃなくて!この猫ちゃんはお客さんの猫で今日だけ預かることになったの……」
慌てて右手をぶんぶん振る占い師。
ミライアっていうのか...名前まで可愛いな。
母親はふふっと笑って、
「あらそうなの? じゃあ、猫ちゃんだけ先にお家入れちゃいましょうか。ミライアちゃんも風邪ひいちゃわないうちに早く家入りなさいよ」
「はーい……」
パタン
「……お前、実家暮らしなんだな」
「なによ。まだ十五歳なんだし、別にいいでしょ」
占い師...もとい、ミライアはぷいっと顔をそむけた。
「え、十五!? 俺と一個しか変わんないじゃん! そのくせ“ぼうや”って言ってたよな!?」
ミライアは腕を組んで、ふんっと顔をそらす。
「一個も間違えば、あなたはじゅうぶん“ぼうや”よ」
「うっわ、性格わる……」
「なんですって!!??
……はぁ。まあいいわ。明日も朝から行動するから、ちゃんと来るのよ」
「はいはい、何回も言われなくて行くって。
これでも約束は守る男だからな」
ミライアはふぅん?といいながらこちらを見る。
う……ほ、ほんとだぞ?約束破ったことないんだからな
「ていうか、あなた。名前は?」
「そういえば、ちゃんと言ってなかったな。
俺はペルノ・サエナー。ジリビーン村出身の14歳だ」
「ペルノ、ね。見かけによらずいい名前してるじゃない」
一言余計だぞ
「私の名前はミライア・インチキータよ。よろしくね」
「インチキータって名前からしてインチキ占い師じゃねえか」
おっと思わず声に出てしまった
「失礼しちゃうわね!もうしらない!」
バタァン!!
『こらー!ミライアちゃん!扉強く閉めちゃダメって言ってるでしょぉ!』
『ごめんなさぁい』
中から不貞腐れた声が聞こえてくる。
怒られてやんの〜
…………さてと、俺も宿に帰るとするか。
なんだか、今日は色々濃すぎる1日だったな。




