第7話 猫探し
「……はぁ……猫、いないな……」
路地裏をひたすら歩きながら、俺はため息をついた。
薄暗い石畳の道、古びた木箱、ゴミ袋の山。
怪しそうな場所は一通り探したけど、猫の気配すらない。
「なあ、もう諦めないか?」
ついに俺は足を止めた。
膝が笑ってる。今日の俺の体力、もう限界だ……。
「なにいってんの?あんなにお客さんが猫ちゃんのこと心配してたんだから、絶対に見つけないと!」
黒髪の占い師は、目をキラリと光らせて言った。
お前が“明後日の朝には戻る”なんて適当な占いしなきゃ、そもそも俺こんなことしてないんだけどな……
心の中で毒づいたけど、たしかに猫はかわいそうだ。
見つけてやれたら、あのお客さんも安心するだろう。
「でも、もう探し始めて2時間は経ってるし、やみくもに探すのには無理があるだろ…」
「うーん…それはたしかにそうねぇ……。あ!私にいい案があるんだけど」
「……信用ならないんだけど」
そういいながらも、彼女の後をついていく。
たどり着いたのは市場の一角にある魚屋だった。
「すみませーん!サーモンのいちばん脂がのってるやつください!」
「は?おい何をしでかすつもりだよ!」
思わず声が裏返った。
「しでかすってなによ。失礼ね」
彼女は口をぷくーっふくらませながら、さっきの路地裏へと足を進めていく。
そしておもむろにマッチを取り出し、さっき買ったサーモンを炙り始めた。
「あっつ、あっつ!ちょ、サーモン持って!」
「ちょ! 直に渡してくんなって…あっつあっつ!」
ていうか魚の匂いで猫を釣ろうってか?
そう簡単に見つかったら苦労しないっての…
___にゃあん。
「……え?」
俺の足元に、赤い首輪をつけた三毛猫がちょこんと座っていた。
「「見つけたっっ!!」」
俺と占い師の声が、完璧にハモった。




