第6話 巻き込まれてしまった
聞き間違いか…?
「あ~~もう!私のバカバカ大バカぁぁぁ!!」
……いや、聞き間違いじゃなかった。
赤い扉の隙間の先には、占い師が自分のほっぺをぐいーーっと引っ張りながらうなだれている。
「明後日の朝とか言っちゃった~~~~!どうしよどうしよどうしよぉ~~!」
座っている椅子をがったんがったんと揺らしている。
おいおい、さっきあんなに堂々と占ってたよな!?
どういうことだ…。
「はぁぁぁ~毛の色と首輪までしか見えてなかったのに…。でもでもでも、あのお客さんほんとうに焦ってたし、すぐにでも倒れちゃいそうなくらいクマもすごかったし…うん、しょうがない!」
は?この占い師、適当なこといったうえ、自分を正当化しだしたぞ。
これが国一番の占い師??インチキじゃないか。
……これはやばいものを見てしまった。退散、退散っと…。
扉から離れようとしたその時……
黒く、大きい瞳とパッチリ目が合ってしまった……
占い師がぐんぐん違づいてくる。
やばい……逃げたいのに逃げられない…!動け俺の足!!
そう思ったが虚しくも
ガチャリ ついに扉が開かれてしまった。
顔だけ出して、無表情でこっちを除く美少女。
そして。
にたり。
「み~~~た~~~な~~~?」
お化けみたいな顔でメンチを切ってきた。
「ひぃぃい!ごっごめんなさーい!!!」
思わずしりもちをつく俺。
こ、怖ぇぇぇぇ!なんだこの人!!
「ちょっと!大きな声出さないで!いいから、こっち入りなさい」
占い師に手を引かれ、俺は小屋の中に入ってしまった。
「まったく……のぞきなんて良い趣味してますねぇ~?」
「いっいやこれには…その深いわけが…いや深いわけなんかないか…」
「なにボソボソ話してるのよ。まあいいわ。あなた、覗いたからには覚悟できてるんでしょうねぇ?」
占い師の黒曜石のように黒く大きな瞳がぎらりと光る
やばい殺される!
ぎゅっと目を瞑った瞬間
パンッ!!
占い師が俺の肩を叩いた。
「___ちょーっと手伝ってもらうわよ?」
「……は?」
「明後日の朝には戻ってくるって占っちゃったの!
だから、そうなるように明日中に猫を探さないとまずいのよ!」
「いやいやいや!そんな無茶な!?」
「いいの?覗き見されました〜!って悲鳴あげるわよ?」
「は、はあ……?なに言って――」
「っっっスゥー……っすみませー――」
「ちょっと待って待って!わかった!わかったから!!」
ほんとに勘弁してくれ………
「じゃ! 決まりね!」
ウッ……笑顔がまぶしい。
いや、違う。怖い。これ絶対、やばい流れの笑顔だ。
「え、いまから……?」
今日は外壁掃除で腕ガタガタなんですけど!?
心の中で叫んだ俺をよそに、彼女は当然のように言い放つ。
「決まってるじゃない! 見つからなかったらインチキ扱いされちゃうでしょ??」
いや、そんな“何言ってんの?”って顔されましても……。
「そもそも、君が“明後日の朝には戻る”なんて占っちゃうからーー」
「はいはい、つべこべ言わない!黙ってついてきなさい!」
彼女は勢いよくドアを開けた。
まぶしい午後の日差しの中に、黒髪がさらりと舞う
「ちょ、ちょっと!?話聞いてました!?……いや、ついてくけど!ついてくけどさ!」
俺はもう、観念して彼女の後を追いかけた。




