第5話 国一番の占い師
白い建物を通り過ぎ、角を曲がれば国一番の占い師の占い小屋があるらしい。
思わず駆け足になる足音が、石畳にカツカツと響いた。
ついにきたぞ……!美少女との出会い……!
村にいたころは同世代の女の子なんていなかったからなぁ。
ここから俺のハッピーライフが始まるのかも……。
胸の鼓動がどんどん速くなっていくのを感じる。
……が、角を曲がった瞬間、俺は固まった。
重圧感のある茶色いレンガの小屋。
その入り口の赤い扉には、立派な木札がぶら下がっていた。
『本日受付終了』
……ヒューッ、と俺の心の中で木枯らしの吹く音がした。
「ええ!昼過ぎでもやってるっておばちゃん言ってたのに!!」
なんてついてないんだ……
せめて、美少女占い師を一目拝みたかったけど仕方ない。
明日は休みにする予定だし、朝から並ぶとするか。
「はぁ~……」
と、ため息をついたそのとき。
「~~~」
……ん?
何やら、小屋の中から女性の声がする。
まだお客さんがいるのか?
俺は思わず、赤い扉の隙間に目を寄せた。
耳を澄ますと、若い女性の声と、もうひとりの落ち着いた女性の声が聞こえる。
「ひっく…飼い猫が、いなくなってしまって…三日も帰ってこないんです」
「なるほど、それはさぞお辛いでしょう」
黒くて胸元まで伸びた髪の毛。
村じゃ黒髪の人なんてみたことがない。
あれが……噂の美少女占い師……?
クソッ…もっとよく見たいのに、隙間が小さくて見えない…。
って俺何やってんだ!?
扉の隙間からのぞき見になんて完全に変質者だろ……!
慌ててバッと体を引き戻した。
……けど、気になる……。
この占い師の発する声、なんだか不思議と落ち着くんだ。
俺は引き戻した体をまた、扉の隙間へと寄せた。
「見えました。安心してください。三毛猫で赤い首輪をつけたあなたの大事な猫は、明後日の朝あなたのもとへ戻るわ」
「っ……すごい……!なんでいってないのに、毛の色と首輪のことまで……ありがとうございます!やっと希望が見えました」
すげぇ…!これが国一番の占い師……!
本当に占いができるんだ……。
「本当に……本当にありがとうございます!ずっと不安で眠れなかったんです。今日ようやく安心して眠ることができます」
「当然のことをしたまでです。またなにかあったら来てくださいね」
お客さんが深く頭を下げて出ていく。
……うわやばっ…。
俺は慌てて壁の陰に隠れた。
今の絶対ばれたか……?
……と思ったら。
「……あ゛ーーーー!またやっちゃったよーーー!」
そこには先ほどの落ち着いた様子からは想像できないくらい、黒い髪をわしゃわしゃとかきむしる占い師が。
え……?
「猫ちゃんの毛の色と首輪しか見えてないのに、なんで”明後日の朝帰ってくる”とか言っちゃうのよぉぉぉ!」
……はい?いま、なんて言った??




