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第3話 ノーウェンへ

「ノーウェン行きの乗合馬車、出発するよー!」


「わああ!すみません、乗ります!乗りまーす!」


慌てて荷物を抱えて走る俺。

めったに村の外を出ないから、見慣れない景色に夢中になってたら時間ギリギリ……


初日からこれって、先が思いやられる……


「お兄さん、ギリギリだったねぇ」

と、馬車の御者がにやりと笑った。

「危なかったな、あと10秒遅かったら出発してたよ」


「そ、そんなギリギリだったんですか……!?」


「ははっ、冗談だよ」


心臓に悪いわ。


馬車の中は、思ったよりぎゅうぎゅうだった。

商人っぽいおじさん、買い物帰りの夫婦、荷物を抱えたおばあさん。

俺は一番後ろの席に腰を下ろして、荷物を足の間に置いた。


ゴトン、と車輪が動き出す。

木造の車体がぎしぎしと揺れ、窓の外の景色がゆっくり動き出した。


「……いよいよ、首都かぁ」


村の土道しか知らなかった俺にとって、

こうして“遠くへ向かう”ってだけで、もう立派な冒険だ。


「お兄ちゃん、ノーウェンは初めてかい?」

隣に座っていたおばあさんが、にこにこしながら声をかけてきた。


「はい、そうなんです。こうやって馬車に乗るのも初めてで」


「まぁまぁ、それは立派だねぇ。

 でもねぇ、ノーウェンは人が多くて目が回るから気をつけなよ。

 特に、道端の占い師にはついてっちゃだめだよ」


「占い師……ですか?」


「うんうん、最近首都では占いが流行していてねぇ

 もちろん、いい占い師もいるけど、

 中には金儲けのために適当なことをいう___インチキな占い師もいるのさ」


「へぇ……」


やっぱり首都にはいろんな人がいるんだな。

俺なんて見た目からして田舎者だし、狙われないように気をつけなきゃな…


そんな他愛ない会話をしているうちに、馬車は街道を抜け、丘を越えた。


そして見えた。


遠くに広がる白い石造りの街並み。

陽の光を受けて、まるで輝いているみたいだ。


「……すげぇ……これが、ノーウェン……!」


胸がドクドクと鳴った。

14年生きてきて、いまがいちばん胸が高鳴ってる気がする。


馬車を降りた瞬間、足の裏から世界が変わった気がした。

石畳の道、行き交う馬車、屋台のにおい、遠くから聞こえる鐘の音__


どれもこれも、村では見たことも聞いたこともない!


「今日から首都での暮らしが始まるんだ…!」

…と、意気込んだものの

馬車を降りてわずか5分後には財布を落としかけた。

先行きは、不安でしかない。



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