表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

第13話 猫の飼い主

俺たちは角にある赤い屋根の家へ向かった。


「そんで?どうすんの?家の中に入るのか?」


「まさか!そんなことしないわよ」


「じゃあどうすんだよ」


「あなた、そこの窓から覗きなさいよ」


「はあ?そんな犯罪者まがいなことやらねえーよ!」


「わたしの占い小屋のぞいてたくせによく言うわね」


「……グゥ」


「なにグゥの音は出るのよ。いちいちムカつくわね」


「てか普通に少し離れたとこから隠れて、その女の人が見えるのを待つのが一番だろ。ほら行くぞ」


そう言って、ミライアの腕を引っ張って路地裏に入る。

家の角がちょうど見える位置だ。


──てか、やばい。勢いで女の子の腕掴んじゃったよ。細い。柔らかい。うわぁ……。


「ちょ、ちょっと! なにすんのよ! 腕掴まないでよ!」


慌てて手を離す。


「……ごめん」


「許可なく女の子の腕掴むとか信じらんないっ!

……これだからぼうやは」


ミライアは少し苛立ったように言ったが、

耳が赤く染まってる気がした。


なんだよ、こいつもちゃんと女の子っぽいとこあるじゃん。

ていうか、まじまじと見るとやっぱりかわいい。

そばかすのない白い肌に、長いまつ毛。

薄い唇は血色がよくて、やわらかそうだ。


キスとかしたら気持ちよさそうだなあ……って、

きもいきもいきもい!俺なに考えてんだよ!変態か!


「あんた、さっきから百面相してるけどどうしたの? きもいんだけど」


「おまえ、いちいち辛辣だな」


「事実を言って何が悪いのよ」


ミライアがじっとこっちを見つめてそう言う。

風が少し吹いて、黒髪がふわっと揺れた。


……口は悪いのに、こういうときだけ絵になるんだからずるい。


「あっ! あの女の人!」


赤い屋根の家から、青いストールを巻いた女性が出てきた。

心なしか、疲れたような暗い表情をしている。


「ほんとだ、青いストールしてる! あの人で間違いないのか?」


「ええ、間違いないわ。この家で確定ね」


「じゃあ、このあと猫を連れてきて渡せばいいのか?」


「はぁ?何言ってるの?それじゃあ占い通りにならないじゃない」


確かに、ミライアのインチキ占いでは“明日の朝に猫が戻る”と伝えていた。


「でも、あの人……あんなに辛そうな顔してんだぞ?」


「それはわかってるわよ。でも、もし占いを疑われたりしたら……」


ミライアは眉を八の字に下げ、うるんだ瞳で俺を見上げた。


はぁ……しおらしい顔しやがって。


「俺にいい考えがある。一旦、家に帰るぞ」


___


「一体どうするつもりなのよ」


「たしかに占いでは“明日の朝”って出たけどさ。

一日早く戻ったところで、飼い主は喜ぶだけだろ?

早まる分には誰も疑わないよ」


「……それも、そうね」


ミライアは小さくうなずくと、ちらりと俺を見る。


「でも、猫ちゃんはどうやって渡すの?」


「いい考えがあるって言っただろ?」


俺は茶色い紙袋を二枚、得意げに掲げた。


「え?……ま、まさか」

ミライアは頬をひくつかせる。


___


コンコンコン。


「すみませーん」


ガチャ。赤い屋根の家の扉が開いた。


「近くで首輪をつけた猫を見つけたんですが、あなたの家の子ですか?」


「あぁっ!……ミオちゃんっっ! 無事でよかった……!

私ずっと探してたのよ。ありがとうございます、本当にありがとうございます! うちの子なんです、数日前から行方不明になっていて……」


「いえいえ、とんでもないです」


女性が涙ぐみながら猫を抱きしめる。

……その優しい光景の中、俺たち二人は紙袋を被っていた。


「あの……ところで、なぜ紙袋を被っているの?」


「最近ハマってるファッションでして」


「そ、そうなの……? よければ、お茶でもどうですか?」


「いえ、お構いなく! じゃ、失礼します!!」


駆け足でその場を去る。


後ろから、呆れた声が飛んできた。


「ねえ! これ絶対あなたひとりでよかったわよね!?」


「……まあ、終わりよければ全てよしだろ!」


「全然よくないわよ!」


ミライアの怒鳴り声が通りに響く。

俺は小さくため息をついた。


やべ、たしかにミライアがいる必要はなかったかも……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ