第11話 10秒占い
ミライアの瞳が、きらりと光った。
朝の光が水晶に反射して、部屋の中を淡く照らす。
空気がすっと張り詰め、俺は思わず息を止めた。
「……見えた。五番通りの雑貨屋の前を歩く、あの女の人」
ミライアが低くつぶやき、そっと水晶から手を離す。
光が静かに消えて、部屋にふたたび静けさが戻った。
「おお!それで?どこに住んでるんだ?名前は?」
思わず前のめりになる俺。
「……それしかわかんない」
「短っ!!」
ミライアはむっとして唇を尖らせる。
「あなたには言ってなかったけど、私は一度に10秒しか占えないのよ」
「は? 10秒?」
「そう、10秒。見えるのはそれだけ」
「短っっっ!!」
たった10秒しか占えないのに、国1番の占い師とか言われてんのか??
「はぁ、なるほどな……」
俺は腕を組んでうなずいた。
どうりで、昨日も猫の柄と首輪しかわからなかったわけだ。
でも……ん?
「たしかに占えるのは10秒かもしれないけど、
占いのときって“念じたり”するんだろ?
それをもっと細かく念じれば、くわしい住所とかもわかったんじゃねえの?」
俺が言うと、ミライアの瞳がぱちくりと瞬いた。
「……はっ!!!」
完全に“今思い出しました”って顔すんな。
「ま、まあ? そうしようと思えばそうできるんだけど、
ちょっと今回は間違えちゃったというか?
いま、猫ちゃんの飼い主はどこにいるのかなーって占っちゃったっていうか?」
「いやいや、今どこにいるかじゃなくて“家の場所”を占えや!!」
俺のツッコミに、ミライアはビクッと肩を跳ねさせた。
「う、うるさいわね! 朝だから集中できなかったのよ!」
そう言いながら猫をひょいっと抱き上げ、
「ねー? そういうときもあるからしょうがないよねー?」
と猫に同意を求める。
……が、猫はじとっとした目でミライアを見つめ、
尻尾をパタパタと不機嫌そうに揺らした。
「……完全に怒ってんじゃねえか」
「う、うるさい!」
ミライアはぷいっと顔をそむけた。
俺はため息をひとつついて、腰を上げた。
「……はあ、しょうがない。いまからその雑貨屋に行くぞ。その飼い主はいまそこにいるんだろ?」
ミライアは腕を組んで、ふんっと小さく息をつく。
「そうね!ま、あなたのいうとおりについていってあげる」
朝の光がカーテンの隙間から差し込み、
ミライアの黒髪をやわらかく照らした。
……まったく、素直じゃないなこいつ




