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6話 炎

<シリウス>

「お前達は、僕が、殺す!」


謎の光と共に大人へと急成長した子供、その異様な光景に兵士達は思わず戸惑う。

それはパレ・リブッカーも同様で――


<パレ・リブッカー>

(子供に化けていたのか?こちらが本体か?変化の魔術はある程度見てきたが…………あの黒い光は…何だ?)


硬直した周囲。

その隙を逃さず、シリウスは近くの兵士を思いっ切り殴る。


<シリウス>

「ん゛っっっ」


殴られた兵士は吹き飛び、後ろにいた兵士をなぎ倒しながら地に背を擦って停止した。


力が沸いてくる、なんて感覚はない。

だが兵士を殴り飛ばした時、確かに感じた快楽と高揚感。

―笑みがこぼれる。


<シリウス>

「ハハハッ」


仲間がやられ、我に返る兵士達。


<パレ・リブッカー>

「はっ、警戒しろ!陣形を組め!様子見-」


シリウスは襲いかかる

前方に3人、後方に4人

右拳、左拳、蹴りの三連を繰り出す。


<シリウス>

「ゆるさない………」


振り向きざまに敵を殴る。


<シリウス>

「なぜ殺した………」


両手の裏拳で左右から来る敵を弾き飛ばし、向かってきた敵に体を回転させ蹴りを入れる。


<シリウス>

「なんっで殺したああああああ!」


<連盟軍兵士>

「銃だ!銃なら!」

兵士数十名がシリウスを取り囲み、銃口を向ける。


<連盟軍兵士>

「発射!」

掛け声と共に、全周から火炎弾が放たれ、レグルスを襲う。


<連盟軍兵士>

「やったか!?」


<シリウス>

「………………熱っいんだよなあああ!」


火だるまになりながら兵士に立ち向かう。

次々と殴り飛ばされる兵士達。


<シリウス>

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


<連盟軍兵士>

「拘束魔術なら!」


兵士数名が鎖を放ち、シリウスを拘束する。


<シリウス>

「ががががああああああああああががががあああああああ」


鎖を無理矢理引きちぎるシリウス。


<シリウス>

「うgrるうぐうgぐるるがぐぐrっぐううるるuぐ」


瞳孔を思いっきり開き、殺意に満ちた目で辺りを凝視する。

うなり声を上げる姿は獣のようだった。



<パレ・リブッカー>

(変化の魔術は基本的に変身前後で術者自身の魔力総量は変わらない。変身前後で自身の魔力量をコントロールしているとなると相当高度な魔術師ということになる。しかしそのような術者には見えない。明らかに魔力量が上昇している、それに兵士を倒す程の戦闘力、アルティメイタムか?いや、それよりも-)


tu-tu-tu-


訝しむパレ・リブッカーをよそに通信が入る。




王宮にて


<王の横の女>

「異世界管制局から通信です」


<異世界管制局 本部長>

「申し上げます。先日観測された数値がカカミト、迷いの森周辺で再び観測されました。子供だったのですが、光を放ちながら大人の姿になったと………」


<王>

異世界人グレイトはそやつで間違いないないだろう。光か、映像は残っているか」


<王の横の女>

「小隊のドローン映像を展開します」


<王>

「ん――――この光、どこかで………」


映像を凝視しする王。


<王>

「パレ、聞こえているか」


<パレ・リブッカー>

「はっ!」


王からの通信で我に返るパレ・リブッカー。


<パレ・リブッカー>

「王よ、ご命令であれば何なりと」


<王>

「そこの男を捕らえ、我のところに連れてこい。至急ではない。時間はかけて構わん。方法もお前に任せるが、なるべく殺すな」


<パレ・リブッカー>

「承知いたしました」


<階段に座る女>

「モリタミの奴を殺さないなんて、珍しい~あの子何かあるの?」


<王>

「確かめたいことがある」




戦場にて


<パレ・リブッカー>

「捕らえるとは言ったものの、私の兵士を倒す程の戦闘能力はあるのが厄介だな」


<連盟軍兵士>

「隊長殿!大変です!」


<パレ・リブッカー>

「どうした。何があった?」


<連盟軍兵士>

「捕らえていた魔王軍の魔物が、暴走しー」


木が、空気が、地面が振動する。音を立て何かが近づいてくる。


<魔王十七将 デボン・キャトルズ>

「お゛で゛の゛あ゛し゛を゛き゛っ゛た゛な゛!!!!!!」


巨大化した怪物―デボン・キャトルズが進撃する。



少し前


<デボン・キャトルズ>

「あしがない、あしがないよお」


黒焦げになり、拘束されているデボン・キャトルズ。


<連盟軍 副隊長 リーン>

「さっきからこいつ泣いてばっかりだなこいつ。」


<デボン・キャトルズ>

「なきむしだとお!おでそんなんじゃないもん!」


<連盟軍 副隊長 リーン>

「黙ってろ。お前が生きているのはひとえに隊長のー」


<デボン・キャトルズ>

「もーおこった!! MOT-Dきどう!」


―MOT-D起動します―


<連盟軍 副隊長 リーン>

「おい!何をー」


何かの音声と共にぐわんぐわん、とデボンから音が聞こえた。

最初静かに鳴っていた音は次第に大きく、強く鳴り響く。


それと共に体の至る所が蠢動する。ドクドクと心臓が鳴り、肉塊がねずみ算式に増殖する。


<デボン・キャトルズ>

「ぐがあげぎごあばあうsがpgmばpがhんbわgwば」


肉塊は音を立て高く高く積もっていく。そしてそれは次第に一つの形へと変貌した。


巨大化。

体長は10メートル以上になり、

変身前の人型とは程遠く、魚の頭、ヒレ、蜘蛛のような手足が4本。

胴は丸々太ったフグのよう。

だが体にはポリ袋、ペットボトル、発泡スチロール、プラスチック容器、乾電池、アルミ缶などあらゆるゴミが突き出していた。


<連盟軍兵士>

「うわああああああああああああああああ」


悲鳴を上げる兵士。


<連盟軍 副隊長 リーン>

「狼狽えるな。まさか巨大化とは、しかし隊長から任された任務、ここで逃げ出すわけにはいかない」

剣を高く掲げる。


<連盟軍 副隊長 リーン>

「リーフチェイン!」


10m超あるデボンの体をツタが巻き付き拘束する。


<デボン・キャトルズ>

「うーうーうー」


うなり声をあげるデボン


<連盟軍 副隊長 リーン>

「今だ!一斉に攻撃!」


<デボン・キャトルズ>

「プラスチックガーベージ」


突如デボンの口から射出されたゴミが兵士に覆い被さる。

着弾した箇所の草は枯れ、土はただれ、兵士は溶けていた。


<連盟軍 副隊長 リーン>

「まずい、毒属性か!いったん引け!シードバイン………」


リーンが攻撃を放った直後、ゴミが覆い被さる。

その後、彼の声を聞く者は誰一人としていない。


<デボン・キャトルズ>

「なかまふやそ、なかまふやそ」



――――――


<デボン・キャトルズ>

「あ゛し゛を゛き゛っ゛た゛や゛つ゛ゆ゛る゛さ゛な゛い゛!!!!!!」


幸い速度はそこまで速くない。

すぐさま奴の懐に入る。


<パレ・リブッカー>

(このままでは被害が拡大する)

廻炎かいえん


足を切断し一時的に行動不能にする。


<デボン・キャトルズ>

「ま゛た゛あ゛し゛き゛っ゛た゛!」


<パレ・リブッカー>

(先に――)


一直線にレグルスに斬りかかる。


パレ・リブッカーの気配を感じ、振り向きざまに鋭い眼光を向ける。


<シリウス>

「来たな!」


仲間が殺される光景がフラッシュバックする。

―裕平、エミー、サトウ、アスカさん―

自分によくしてくれた善良な人々を、自分を仲間と言ってくれた人を殺された。

活気に満ちていた街も、営みも奪われた。

怒りが、慟哭が収まらない。

手から血が滴るほど、拳を強く握りしめる。


<シリウス>

「お前だけは必ず殺――」


<パレ・リブッカー>

「峰打ち 羽々はばねり


殴る体勢を取った時には、僕は十字に切り裂かれ、女は納刀を終えていた。


<シリウス>

「ガ ッ」


そのまま倒れ込み意識を失った。


パレ・リブッカーはすぐに踵を返し、デボンへと戻る。


跳躍と共に突きの構え

刀はジリジリと火花を散らし

炎の風が幾重にも刀に巻き付く。


<デボン・キャトルズ>

「こ゛ん゛な゛ん゛で゛た゛お゛れ゛な゛い゛ぞ」


ボコッボコッと音を立て、斬られた第1関節と足を再生させる。


<パレ・リブッカー>

(やはり一撃で葬らなければ………来る)


<デボン・キャトルズ>

「プラスチックガーベージ!」


大量の魚の死骸やゴミが口からマシンガンのごとく射出される。

着弾した箇所は酸で溶けたようにドロドロになっていた。


<パレ・リブッカー>

(射出速度も速い、だが-)


ゴミの降る中一つも触れず、その悉くを避けるパレ・リブッカー。

当らないと分かり、波状攻撃を仕掛けようとするデボン。


<デボン・キャトルズ>

「ガーベージサイクロン!」


デボンの魔力が口に収束する。


<デボン・キャトルズ>

「おまえもなかまになれー!………ん?」

発車の直前、右足に巨大なツタが巻き付いた。


<パレ・リブッカー>

(あれはリーンの魔術―今だ)


大地を強く蹴り、高く跳躍する。


<パレ・リブッカー>

「痛覚並べて辛炎しんえんに、からがら骸の跡は無し」


詠唱を行い魔力を高める。

そして敵の眼前に刃を突き立てる。


<パレ・リブッカー>

喰戦百景しょくせんひゃっけい 十火嵐とおからし


一瞬にして十分割されるデボン。

直後、轟音と共に灼熱の風が絶え間なくデボンを焼いた。


<デボン・キャトルズ>

「アギャアアアアアアアアアギャアアアアアギャアアアアア!!!!!」


断末魔を上げるデボン。


<デボン・キャトルズ>

「まお うさ ま………みん なもゴミ をポイし てなかまふや そうねええええええええええええええ!」


シューンシューンと音が鳴る。


<パレ・リブッカー>

(この反応、爆縮か!)

「皆シールドを奴に張れ!」


大爆発。

紫の火柱がごうごうと立ち上る。

敵の周囲展開した防御魔術すら破り、衝撃波が当たり一面を襲う。


       ――――――――

         6話 炎

       ――――――――




<パレ・リブッカー>

「皆大丈夫か?」


<連盟軍兵士>

「ええ、何とか」


一部の兵士が立ち上がる。


<パレ・リブッカー>

(死をトリガーとした爆破か、しかし多重防御でも防ぎきれないこの威力、今後の対応に手を焼きそうだ)


<パレ・リブッカー>

「動ける者をかき集めろ、医療班、悪いがこちらにも人を寄越してくれ。ダッカイ、エニカ、お前達も悪いがこちらに来て部隊の立て直しを手伝ってくれ」


<連盟軍兵士 ダッカイ、エニカ>

「「承知!」」


<パレ・リブッカー>

「さっきの男は?」


<連盟軍兵士>

「捕縛済みです。子供の姿に戻っています」


<パレ・リブッカー>

「ほう、あの姿は一時的なものというわけか。またあの姿になって暴れるかも知れん、警戒を怠るなよ」


<連盟軍兵士>

「はい!」


<パレ・リブッカー>

「………ってさっきの子供はどうした!?」


パレ・リブッカーが後ろを振り返ると子供の姿がない。


<………>

「全く、子供の頃教わらなかったのかのう。人の“もの”を取ってはいけないと」


声がする方を向くと、ボロ布を被った老婆が立っていた。


<………>

「最近の人間は横暴で困ったものじゃ」


老婆はシリウスを抱えていた。


<連盟軍兵士>

「おい、婆さんそいつを返して貰おうか」


兵士の一人が老婆に声をかける。


<老婆>

「ほう………妾の何処が、婆さんだというんじゃ?」


老婆が語り出すと同時に、覆い被さっていたボロ布が立ち上る。

地面を引きずるほど長いスカートは黒のパンツに。

キラキラ光る耳飾り、髪はツヤを取り戻し、整ったミディアムヘアに。

丸い眼鏡をかけ、ヒールをコツンと鳴らす。シリウスを抱え、仁王立ちする美女がいた。


<パレ・リブッカー>

「貴様は何者だ!?」


<美女>

「さて、言ってもよいが、なにせ久々に外の世界に出る、妾の名を知っているものはいないやも知れん。しかし………世界が変わってなければこの“称号”ならばきっと皆知っておろうよ」


<美女>

「者共よ、戦慄(わなな)け、戦慄(おのの)け、戦慄せんりつせえ。妾の名はファリア。“魔法使い”じゃ」


☆いっしょに!なになに~☆


魔王十七将 デボン・キャトルズ


魔王軍の精鋭部隊、魔王十七将の一人。

魔王軍化学班によって様々な種族を合成、改造を施された上位魔族。

デボン・キャトルズは半魚人マーマン族を元にその他の魔族やゴミや汚染の概念を融合させ誕生した。


改造の副作用によって単純な思考しか出来なくなっており、本来海の汚染が命題だったが、高い山への好奇心からカカミトの山に入り迷いの結界から抜け出せずにいた。


ダンクレオステウス

巨大な魚の骨を射出し攻撃する。


ドレパナスピス

中型の骨の魚の蒸れを射出し攻撃する。


アンモナイト騎士

アンモナイトの顔をした兵士を生み出す。槍や貝で攻撃する。


MOT-D

魔王十七将に内蔵されている薬物。

細胞を活性化する事で巨大化が可能となる。

MOT-Dの名を呼ぶことで発動する。

絶大な力を得るが、一度使用すると二度と元の姿には戻れない。


プラスチックガーベージ

口から死んだ魚や魚の骨、ゴミなどを射出する。

防御魔術を貫通し、着弾した箇所をドロドロに溶かしてしまう。


ガーベージサイクロン

魔力と圧縮し放つ破壊光線。

射線上にあるあらゆる物を溶かし、周囲のものを汚染する。

今回の戦いでは不発に終わった。


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