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4話 星屑

<サトウ>

「今日は湖と魔石の所に行くんだったね」


<シリウス>

「あと学校もね!サトウさんの職場も見てみたいし」


<サトウ>

「ちょっと恥ずかしいな。今日は午後から授業をするつもりだから一緒にやろうか」


<シリウス>

「うん!」


ドン

深く腹に響く爆発音。


<サトウ>

「ゲートの方だ。何があった?」


ウ―――――――――――

サイレンの音が街中に響き渡る。


<見張りのモリタミ戦士>

「敵襲!敵襲!連盟軍がゲートから侵入!兵士は急ぎ応戦を、戦えない者は別ゲートから避難して下さい!繰り返す!連盟ぐ………」


<連盟軍13番隊 隊長 パレ・リブッカー>

廻炎かいえん


<モリタミ戦士>

「うわああああああああああ」


拡声器越しに叫び声が街に響き渡る。


<サトウ>

「見張り塔が炎の渦に………逃げるよ!」


<シリウス>

「うん!……そういえば、ゲートには裕平さんがいませんでした?!」


<サトウ>

「軍がここに来てるって事は………考えたくはない。でもあいつはだだじゃ死なない。今は逃げることだけ考えて!」



逃げようと振り返る直前、遠くに見えたのは銃や剣を持った軍服の軍団。

その中で、一人刀を持った女に目がいった。


その女、パレ・リブッカーが刀に魔力を込める。数秒の静けさが彼女の周囲を包む。


<パレ・リブッカー>

火乱面断からんめんた


女が魔術を唱える。


<サトウ>

「危ないっ!」


サトウに思いっきり路地の方へと突き飛ばされた。


<シリウス>

「痛ったたた。どうしたのサトウさ…………」


道があった。

そこにはかつて大通りがあり、市場があり、人々の活気であふれていた。

確かに今も存在する。


但し、炎の道として。


大通りは炎に包まれ、大勢の人が横たわっていた。そしてそれはサトウも例外ではない。


<シリウス>

「あ、ああ、あああああああああああ、サトウさん!サトウさん!血が…………塞がなきゃ…………起きてサトウ、サトウ!起きろ、起きろ!」


叫び声は炎の中に虚しく響く。彼は、サトウは目を覚まさない。

自分の衣服をちぎり、サトウに巻き付ける。


<シリウス>

「止まれ、止まれ、血…………止まってくれ!」


<連盟軍兵士>

「見つけたぞ、モリタミだ!」


後ろから兵士の声が聞こえる。

だめだ、ここで逃げればサトウが死んでしまう。

迫る足音。焦燥感と緊張が全身を伝う。

心臓の音が鳴り止まない!


<連盟軍兵士1>

「ガキだ。どうする?」


<連盟軍兵士2>

「ここにいる奴らは皆殺しだってよ」


それじゃあ、といって剣を振り上げる。


<シリウス>

「ああああああああああああああああ」


<エミー>

「あたしの友達に、手っ出すな!」


<連盟軍兵士1>

「なんだこの女!ぐあっ」


<連盟軍兵士2>

「よくも!ってあぎゃっ」


兵士を殴り、すぐさまサトウとシリウスを担ぎ走るエミー。


<シリウス>

「兵士を拳で……」


<エミー>

「言ったでしょ、戦士だって。よかった、無事で!」


<シリウス>

「でもサトウが!」


<エミー>

「このままじゃサトウがまずいのは分かってる。連盟軍も来てる。一刻も早く私の病院に!」


<シリウス>

「あの兵士は何なんですか!?」


<エミー>

「あれが私たちが戦ってる敵、レヴィリオンの連盟軍!ここはまだ安全だと思ってたのにどうして奴らがここに?………って考えてる暇ない!急ぐね!」


<シリウス>

「はい!」




“血盟の儀”が終わり、自らの拠点に戻ってきたアスカ。


<アスカ>

「どういうことだ?街に火が!」


<モリタミ戦士>

「頭領!!!!!」


<アスカ>

「何が起こっている?」


<モリタミ戦士>

「連盟軍の奴らが!」


<アスカ>

「何!?」



応戦するモリタミの戦士達100人に対し、連盟軍の数200人以上

戦況は圧倒的に連盟軍に傾いていた。

数だけではない、軍を指揮するのはランクAの魔術師、パレ・リブッカー。

彼女の戦闘力はもとより、その戦術によって街は包囲されつつあった。


<パレ・リブッカー>

「モリタミとの戦闘は最小限に、まずは街を包囲しろ。位置に着いた者から建物を砲撃、出てきたモリタミを各個撃破せよ!私も出る」


<連盟軍兵士 副隊長>

「打て!」


破壊される住居。


<連盟軍兵士>

「放て!」


<モリタミ戦士>

「そんな銃は当たりやしなっ……がっ、背後からだと…………」


斃れるモリタミ達。



病院にて


<エミー>

「着いた!早く医療室へ!」


ドオン!ガラガロガゴラガラ


爆発音が鳴り、建物が揺れる。


<エミー>

「攻撃されてる!この建物は他のより頑丈だけど、いつ壊されるか分からない!早く治療しないと!」


<シリウス>

「サトウはどう?大丈夫だよね?」


<エミー>

「治癒魔術はかけてるけど、やっぱり私だと効き目が薄い。ここもいつ崩れるか分からない。モリタミの本部に行かないと!」


<シリウス>

「モリタミの本部?どうやって!?」


<エミー>

「大きな魔石の裏に外へのゲートがある。そこからすぐの場所に本部に繋がる道があるからそこまで行くよ!」


エミーが周囲の人々に声をかける。


<エミー>

「今から怪我人をモリタミの本部まで連れて行く、怪我人を運ぶ人、守る人に分かれて外に出るよ!」


病院にいる人々に号令をかけるエミーさん。


<モリタミ戦士>

「ぐわあっ」


外で断末魔が聞こえる。


<シリウス>

「また外でやられた!早くしないと!」


<エミー>

「うん、みんな行くよ!」


張り詰めた空気が周囲を包む。


<エミー>

「3、2」


足に力が入る。いつでも飛び出す準備は出来ている。


<エミー>

「1」


<連盟軍兵士>

「放て!」



一瞬何が起きたか分からなかった。

外を出た瞬間、急に爆発が起きて

後ろを振り向く。

瓦礫の山。そこに人影は見えない。


<シリウス>

「み、みんな………エミーさん、サトウ………みんな、どこ行ったの、ねえ、返事してよ、ねえ!ねえってば!」


カツ、カツと遠くから足音が聞こえる。

振り返るシリウス。

刀を持った女が一人、こちらに歩いてくる。


<パレ・リブッカー>

「ん」


目線が合ってしまった。

やばい!見つかった!


<パレ・リブッカー>

「子供か、こういうのは得意では無いが、モリタミである以上斬らなければならない」


カツ、カツと足音が聞こえる。

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!

体が竦む。身動きが取れない!


カツ カツ カツ カツ カツ カツ カツ カツ

足音が頭で反響する。


<パレ・リブッカー>

「――――」


女が目の前にいる。その顔には何の表情も見られない。

振り上げられる刀。

声が出ない。身を縮めることしか出来なかった。


<シリウス>

「………………」


「ハッ!」


交わる剣戟


<裕平>

「ハァ、俺を……ハァ、ハァ、忘れてただろ!」


シリウスを抱え、パレ・リブッカーに立ち塞がる男。

ワタナベ裕平がそこにはいた。


<パレ・リブッカー>

「門番の奴か。生きていたとは。だがすでに瀕死……っ!」


爆発。

剣戟の直後、仕込んでいた手持ち爆弾が作動する。


<裕平>

「足下よく見とけってな!…ハァ」


<シリウス>

「裕平さん!」


急に態勢を崩し、膝を付ける裕平。

彼を見ると、全身に傷の跡。そこから血が垂れている。


<裕平>

「お前は逃げろ!出来るだけ遠くに、だ!俺はここでお前を逃すと決めたのさ!」


<シリウス>

「でも………………」


<裕平>

「行け!!」


<シリウス>

「………………ありがとう」


漢を背に向けひたすら走る。

もっとたくさん話したかった。もっと一緒にいたかった。

言いたかった言葉を呑みこみ、唇を噛みしめ、今は走らなきゃ、走らなきゃ。彼のためにも僕は絶対に逃げないと。


<裕平>

「じゃあーな。お前は生きる。なぜならここに俺がいるからだ」


<パレ・リブッカー>

「……小癪な手を。だがこれが効くとは思わないことだ」


<裕平>

「さすが隊長、やはりバケモンだなあ。ハァ、ハァ」


<パレ・リブッカー>

「お前に次は無い」


<裕平>

「おっ、前より話してくれるっ…じゃねーか。でもなあ……次が無いのは…お互い様だろうがああああああ!」


<パレ・リブッカー>

「来るか」


自分の最高速で突撃する。剣を高く振り上げ斬りかかる。


<パレ・リブッカー>

「先ほどより早い。だが、羽々はばねり


裕平を×字に切るパレ・リブッカー。


<パレ・リブッカー>

「私の速さに追いつけはしな………………なに!」


奴の腕を掴む。


<裕平>

「揺 流!」


剣を振り上げ、攻撃するブラフを張り、防御に回る所までは上手くいった。

でも、剣は折れたし、体は斬られた。


意識はまだ、ある。


俺に魔力は無い。でも頭領の技をずっと側で見てきた。ここで俺の全てを使う!


<裕平>

「脳・震・衝!!!!!!!!!!!!!!」


なんの変哲もないただの殴り。

魔力など込められてやしない。

だがその殴りが“バケモン”を遠くへと突き飛ばした。


<裕平>

「ハァ、ハァ、ハァ、さすがに、いった、だろ………」


膝から崩れ落ちる。体は限界を超えていた。




<………>

「………………中々良い攻撃だった。殴りも悪くない、回復なんて久々に使ったぞ」


瓦礫と土煙の中から現れるパレ・リブッカー。

殴られたはずの頬の傷はすでに回復魔術で治癒されていた。


<裕平>

「マジ………………かよ………………」


<パレ・リブッカー>

「お前はモリタミの中でも骨のある奴だったよ」


奴が攻撃の体制を取る。

自分の攻撃は奴には何も効かなかったけど。

でもあいつを逃がせた。逃げる時間を稼げた。

自分はここで良い。

後はお頭、やっちまってください。



死ぬ姿くらいは格好つけておかねえとなあ。



<パレ・リブッカー>

「自ら立って私の攻撃を受けるか!名は!」


立ち上がる。自分は確かにここにいたのだと証明するように。


「ワタナベ裕平!」


<パレ・リブッカー>

「羽々はばねり



「………………来いや」



      ―――――――――

        4話 星屑

      ―――――――――



<アスカ>

「私たちの街が…………」


目の前に広がる火の海、斃れる民達。

原型を留めない家屋。


後悔と悔恨、それを押し流すほどこみ上げる激しい怒り。

アスカの拳からは血が滲む。

瞳孔を開き、眼前の炎を強く睨む。


<連盟軍兵士>

「いたぞ!敵だ!」


<アスカ>

「お前達があああああ!」


一瞬のうちに襲いかかった兵士を殴り飛ばす。

拳に付いた血を払う。

なぜ連盟軍がここにいる?どうやって侵入した?

疑問は残る。だが今は。


<アスカ>

「モリタミ全兵士に告げる!連盟軍と距離を取り、生き残ってる民を逃がせ!連盟軍は私が引きつける!」



逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!

ひたすらに魔石の方へ走る。そこに行けば逃げ切れる!


<連盟軍兵士>

「子供が走ってる!追え!」


後ろから兵士数人が追いかけてくる声が聞こえる。

振り向く余裕なんてない、ただひたすらに走る。


<シリウス>

「あれは!」


前からアスカさんが走ってくるのが見える!


<シリウス>

「アスカさん!!!!!」


<アスカ>

「シリウスか!良かった無事だったんだな。他のみんなは?」


<シリウス>

「はい!みんなは…………もう…………」


<アスカ>

「そうか……ここから君を逃す。私のそばを離れるな。」


彼女の目には涙の痕が付いていた。

はい、と彼女に返事をする。


<アスカ>

「行くぞ、揺流― ん?」


<シリウス>

「どうしたんですか?」


<アスカ>

「後ろの方で大きな気配が……」


湖の向こう、魔石の方を見やる。

ドス、ドスと何かが来る音がした。


<……>

「……やっとでられた~あで?ここちがう、またまよっちゃったかなあ?」


<アスカ>

「あれは!魔王軍の!」


現れたのは魔王軍、デボン・キャトルズ。


<魔王十七将 デボン・キャトルズ>

「ん、なんかつよそうなやついっぱいいるな。おでもまーぜーてーーーー!」

☆いっしょに!なになに~☆


ワタナベ裕平

横断歩道を渡った後に転生。

転生後、強靭な体を持て余し暴れていたが、アスカに倒されモリタミに入る。

その後力をつけ、街の戦士の中で体術専門の教官となる

目が良い。


エミー

イギリス人と日本人のハーフ。

趣味の山登り後に転生。

遠征から帰ってきた傷だらけの裕平を治していくうちに仲良くなる。

サトウとはエミーが特別授業でエミーが来た時をきっかけに、お互いに相談しあう仲。

拳が強い。


サトウ

包丁で刺された後に転生。

なぜ刺されたかは本人は覚えていない。

裕平とは最初そりが合わず、お互いに嫌いあっていたが、遠征で一緒になった時、隠密行動においてサトウが実力を見せ、お互いに認め合う仲となる。

耳が良い。

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