幕間 モリタミ達との生活(2)
④見舞い
モリタミ総本部 総合病院
<香流・治流 テトラ>
「サトウ氏の容体ですが、芳しいものではありません。手術後回復ポットに入れてはいますが、背中の裂傷が酷く、ここに来るまでに時間もかかっていたのもあり回復の兆しがまだ見えません」
<シリウス>
「そうですか…………」
<エミー>
「先生、サトウは大丈夫ですよね……戻ってきますよね、ねえ!」
<テトラ>
「最大限手は尽くしています。あとは彼の回復力に期待するしかありません」
全身を管に繋がれ、人口の呼吸音を聞きながら回復ポットをガラス越しにただ見つめる事しかできない。
<エミー>
「ぐすっ、サトウ………死んじゃったらどうしよう」
<シリウス>
「エミーさん……」
彼女が泣きながら僕の手を掴んでいる。それを見て自分も自然と涙が出てきてしまった。泣き崩れる二人を見たテトラさんは僕達の頭を優しく撫でてきた。
香流・治流 テトラ
「こうなってしまえば私達に出来ることはあまりにも少ない。ですが彼が帰還した時、元気で再会できるよう生き続ける事こそが私達にできる最大限できる事だと思っています」
<……>
「そうだ。美味いもんでも食べてゆっくり待とう。そうタコスとかナ!」
<シリウス>
「その声は!ハクチさん」
<ハクチ>
「シリウス、エミーちょっと来てくれ。あの街の生き残りは他にもいるんだぜ」
そうしてハクチさんの後に着いていくと、広間に数人のモリタミの人が待っていた。サトウと行った宝石屋の人やチョコレートの店主、住人が集まっていた。
近くのテーブルに座りみんなでハクチさんのタコスを食べながら今まであった事を話した。
<シリウス>
「アヴィーチェはいい所だったよ。海岸線の方は未来って感じがしたけど海の上の方は趣があって、今思えばみんなのいた所となんか似ていたと思う」
<エミー>
「そうなんだ、一度行ってみたいな。本部も栄えてて良いけど、あそこは私達がみんなでがんばって作った街だったからなあ。一から区画作って家建てて市場もやって……」
アスカさんの拠点とアヴィーチェが似ていたのは街の人の手で作り続けた意思が宿っている感じがしたからだったのだろう。
どうしても会話が途切れ途切れになってしまう。かつての自分達の居場所を懐かしいなと思うのと同時にもうそれが無い事実が心の奥底に打ち付けられる。
<シリウス>
「……そういえばこれからみなさんはここに住むんですか?」
<ハクチ>
「当面はそうなるだろう。だけど」
<……>
「今口説き中なんだよ俺ん所に来ないかって」
<ハクチ>
「ラック!」
<岩流 ラック>
「ハクチ元気か?」
ハクチさんが立ち上がると二人で軽く抱擁を交わした。
<シリウス>
「口説きってどういう事ですか?」
<ラック>
「前も言ったがハクチは俺の兄弟子だ。できれば助けになってやりたくてな。希望者は俺の管轄で預かる事にしたんだ」
<ハクチ>
「だけど当面は断るつもりだ、サトウの事もあるし、それに我らが頭領が復活の折に誰か仕える奴がいないとダメだろ」
<ラック>
「まだそれも分かんねえけどな。あの嬢ちゃんは確かに唯一のネクロマンサーだが、蘇生なんて唯の一度も成功してねえからな」
<ハクチ>
「それでも我々は希望を持って待つさ。皆が我らが頭領の帰還を待ち望んでいる。サトウと同じだ」
<ラック>
「なるほどな。これはこっ酷く振られたな。全く振られるのはユムだけにして欲しいぜ」
<巫女 ユム>
「私に何か?」
<ラック>
「何でいんの!」
周りのみんなが笑っている中、僕はサトウやアスカさんに想いを馳せる。二人が戻ってきた時、二人に強くなったって誇れる自分でいられるように修行頑張んないとな。
⑤農園
僕は今モリタミ本部の街外れにある大農園にいた。
ここでは総本部の食糧全てを生産しており、生産量の四割を各拠点に流通させている。だがそれでも全体では足りないらしい。
今は収穫後で何も無く、次栽培する食糧に向けて土を耕すべくその手伝いに来たのだが……
<登流 ゴフセン>
「登流—圧砕登!」
ゴフセン(愛称:ダディ)さんが空中で拳を振ると、地面に巨大なクレーターができた。
<ダディ>
「お!来たねシリウス君!」
<シリウス>
「これは一体」
<ダディ>
「うちの農園はデカすぎてね、耕すのにも魔術じゃ手間がかかる。だからこうやって技をみんなで出して土を耕してるのさ」
周りを見ると、モリタミの戦士達が各々技を放って地面を抉っていた。
<ダディ>
「ほら君も変身してやってみよう!」
<シリウス>
「じゃあ……Mind On!」
<ダディ>
「僕はまだ手を付けてないところ行ってくる!好きに地面抉っていいからね〜!」
手近な地面に技を放ち地面を抉る。Red Customに変身してからというもの、魔弾を前より遠くに飛ばせるようになってきた。ホプキソン・クラッシュを放つ意識がどうやら魔弾を放つイメージの助けになっていた。
連続で遠くの土に向かってパイル・バスターを放つと、複数の魔弾がちゃんと思った地点へと飛んでいき爆散した。まだ速度は遅いけれども。
<シリウス・バレル>
「調子が上がってきた。Identiφ!」
Red Customに変身し、ホプキソン・クラッシュを放つ。地面は深く抉れ、土煙が舞っていた。前は装填五で放ったが、どれくらいまで装填できるかも試してみるか?
<ダディ>
「うんうん、良き良き。あ、シリウス君!」
<シリウス・バレルRed Custom>
「なんだよ!良いところだってのに」
<ダディ>
「抉った土はちゃんと自分で均してね」
<シリウス・バレルRed Custom>
「え」
均し終えた後
<ダディ>
「お疲れ様。大変だったでしょ」
<シリウス>
「こんな事毎回やってるんですね……疲れた」
<ダディ>
「まあね、こんなに広いんだけど去年はあんまり収穫量が落ちてね。みんな気合い入ってるんだ」
<シリウス>
「自然の神の庇護下なのに?」
<ダディ>
「自然の神の庇護下だからだよ。自然の神だからって全て僕達の思い通りにはならない。自然はあるがまま、そこにあるのが自然だからね」
<シリウス>
「でもそれと収穫量となんの関係が?」
<ダディ>
「ここの天候は外の世界と共鳴してるんだ。去年は外の世界が暑かったからここも暑い時期が続いてね。中々作物が育たなかったんだ」
<シリウス>
「それで……」
<ダディ>
「年々気温は上がってる。収穫量もちょっとキツくなってきちゃって。流石に限界はあるから神様もなんとかしてくれるかもだけど、それまでは僕達がちゃんと頑張んないとね」
<シリウス>
「自然と共生するって大変なんですね」
<ダディ>
「そうだね、でも僕達を生み出したのも自然である事を忘れちゃいけない。僕達がこうして出会ったのも自然があって、生命が今まで命を流転し続けたかだと思うんだ。生かされてる事にちゃんと感謝しなきゃね」
モリタミ達の心情の一端を垣間見た気がする。
自然と共に生きる、それは命に感謝する事なんだと何となくそう思った。
<ダディ>
「そうだ、お腹すいただろう?向こうでおにぎり作ってるんだ。一緒に行こう!」
炊き出しをしている列に並び、スープとおにぎりをもらった。
僕にとっては当たり前だけど、それでもその意味を噛み締めて。大地に立つ自分は感謝を込めてこう言った。
<シリウス>
「それじゃあ、いただきます」
ご覧頂きありがとうございます!再び休載を取る旨となりました。
次回は4/1更新です!




