31話 異世界人事務所本部1/3
展望台から降りた僕達は遂に第一層の街への入り口を抜ける。
<パレ・リブッカー>
「ここが第一層、ガーリウェストだ」
見上げると、十五階建相当の真四角の建造物が道に沿って均等にどこまでも立ち並んでいる。
ある種の気持ち悪さすら覚える程に一切の澱みなく高さが揃えられていて、四階、八階、十二階辺りからひっきりなしに貨物を積んだ車が忙しなく動いているのが見えた。第一層の入り口付近だけあって道を歩いている人も多く、賑わっていた。
<シリウス>
「これがシャトレさんが言ってた所……」
<パレ・リブッカー>
「後で行く。あまり側を離れるなよ、コケるから」
倉庫群がある道を逸れ、地下?への階段を下り、地下鉄に乗って目的地へと向かった。詳細は割愛するが、電車に乗るまで一切待ってない。歩いていたらいつの間に車内で座っていた。
ウェズカーク 第1951-10-4 地区異世界人事務所本部
区画から建物の外観まで清廉された街並みに突如として雲を突き抜け立つ超高層塔ビル……というよりスカイツリーのような鉄塔だった。
<パレ・リブッカー>
「ここが各都市にある異世界人事務所の総本部だ」
<シリウス>
「そもそもここってどういう場所?」
<パレ・リブッカー>
「異世界人達は基本的に各都市に設置してある異世界人事務所支部の中で転生が行われる。その後様々な手続きを行い、晴れてレヴィリオンの一員となるんだ」
モリタミのみんなから聞いた話だと建物の中で転生したなんて話聞いた事無かったけど………
<パレ・リブッカー>
「ここはその事務所の総本部。世界中にある支部を取りまとめ、異世界人達により良い人生を送ってもらう為の施設さ」
この鉄塔が施設のようには全く思えなかったが、
中はショッピングモールのような吹き抜けの構造で、何階あるか分からないほど高い。
店舗のような所には受付と待合席が置かれ、大勢の人が座って待機していた。
中央には施設のインフォメーションとレヴィリオンの紹介動画が映し出されていた。
僕達が中央の映像付近に行くと、目の前に奴と同じ軍服を着た一人の男の人が待っていた。
<男の人>
「お待ちしておりましたリブッカー殿」
魔術連盟 異世界人事務所本部 本部長
オースノン・アナトラ
<パレ・リブッカー>
「こちらこそ急な訪問で申し訳ない」
<オースノン本部長>
「本日のご用件は?」
奴はA4サイズのホログラムを本部長の人に見せる。
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グレイト事務所本部 本部長殿
グレイト転生見学許可証
以下の者をアイシール第1層ウェズカーク第1951地区10-4番地グレイト事務所本部において,異世界移民転生室並びに本部見学を全面許可する。
又,見学において以下の者が定めた同行者一人に対し,以下の者と同等の権利を与えるものとする。
連盟軍 第十三番隊隊長 パレ・リブッカー
2025年5月5日 魔術連盟 事務総長
ユキユキシカ・ホロノア
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<オースノン本部長>
「分かりました、この方が同行者で?」
<パレ・リブッカー>
「ああ、よろしく頼む」
<オースノン本部長>
「準備いたします、一階の待合室でお待ちください」
待合室で座って辺りを見回すと多くの人があちらこちらと行き交っている。エレベーターもエスカレターも人が途切れる事なく動いている。
<シリウス>
「思っていたより人がいるんだな」
<パレ・リブッカー>
「彼らにとってここは未知の世界だからな。ここで色々支援してるのさ。翻訳薬の投与やレヴィリオンの説明、移住先の斡旋や仕事や学校の紹介、iDeasの貸与、魔術の指導などなど様々だ」
<オースノン本部長>
「各方準備できましたのでご案内します」
本部長さんに連れられ、エレベーターで降りていく。シースルーで外の様子がよく見えた。透明な壁に覆われたグラウンドで何人かが魔術を出し合ったり、戦いの訓練をしてるのが見えた。
<オースノン本部長>
「しかし我らが王、それにホロノア様直々のご下命とは。失礼を承知で聞きますが、この方に何かあるのですか?」
<パレ・リブッカー>
「こいつが逸れの異世界人という以外は聞かされていない。だかこの世界を知る上でここを知っておくべきというのが我らが王のご考えらしい」
逸れの異世界人って僕みたいに山とかそういう所で転生した人だろうか。
エレベーターが止まり、扉が開く。洞窟のような広々とした空間に四角い部屋が等間隔に並べられている。辺りが静か過ぎて足音が空間いっぱいに反響していた。
<オースノン本部長>
「このフロアは大体三千部屋程保有しています。更に下にもありますが、本日は転生が行われる様子を間近で見て頂きたい」
異世界人転生室 404号
部屋は外から見えるよう窓が付いていて、中に
ベットが一つ、その周りに様々な機器が置かれていてさながら手術室のよう。壁も機械的で中に一人の女性が入っている。
<オースノン本部長>
「間も無くこちらに新しく転生される方がやってきます」
<アナウンス>
———異世界人反応増大 転生開始———
ベットの中心に白く光る点が現れる。
点は次第に膨張し、サッカーボール程の大きさになると球から白い糸ようなものが何本も生えてきた。白い糸は人の形を成すように纏まり、成人男性くらいの大きさになった。
<アナウンス>
———前世情報 出身 日本———
白い体が段々と色づき、ボロボロの服をきた男性の姿になった。
<男性>
「はっ!」
男が目覚めると彼の眼前には機器からモニターが映し出されている。
<画面>
———言葉は伝わりますか?伝わるなら相槌を一回して下さい———
驚きながらも男性は頷いた。
<画面>
———隣の女性から水を受け取って飲んで下さい———
ようやく女性に気づき、またしてもびっくりしながら差し出された水を飲む。
<女性>
「こちらの言葉は分かりますか?」
<男性>
「はい、大丈夫です………俺、海で溺れてたんじゃ!」
<女性>
「簡潔に申し上げます。あなたは転生を果たしました」
<男性>
「転生?!」
<シリウス>
「あの人、もしかして前世の記憶が!」
<パレ・リブッカー>
「転生人の全員が記憶が無い訳じゃないからな。連盟軍にも記憶持ちの奴はまあまあいる」
<オースノン本部長>
「前世の記憶を持っている方は、水難事故、地震や津波、土砂崩れなど自然災害で亡くなられた方、自殺や戦争で亡くなった方が多い印象があります。転生した事で再び前世のトラウマを呼び起してしまわれる方もいます」
前世のトラウマ………たまに夢に見る。銃声が脳にこびり付いて、耳を塞いでも、いくら叫んでも離れない、そんな夢を。
<オースノン本部長>
「せっかく死んで楽になったのにまた生きなければならないのか、と生きる事に消極的な方もいます。そういった心の傷と向き合っていくのも我々の努めなのです」
<シリウス>
「立派な仕事なんですね」
<オースノン本部長>
「ありがとうございます。褒めて頂いて」
<シリウス>
「転生してから記憶を取り戻した人っているんですか?」
<オースノン本部長>
「見てきた限りほんのわずかですね。それも偶然に、ふとした時にという事が多いそうで、ほとんどの方は思い出せず一生を終えます」
ラックさんは希望を持てと言ってたけど、僕ももしかしたら一生記憶が戻らないのかもしれない。
<オースノン本部長>
「前世の記憶を持っていたとしても良い側面もあれば悪い側面もあります。大切なのは新しく生まれ変わってどう今を生きていくか。過去は大切なものですが、あまり過去に囚われすぎないように。あなたも転生者、それも精神年齢は大人のそれに近いようですから」
<シリウス>
「そういうの分かるんですか?」
<オースノン本部長>
「長年いろんな方を見ていれば分かりますよ」
<パレ・リブッカー>
「そうだったのか。思慮深い子供だと思ってなんか気持ち悪いなと思っていたんだが、もしかして中身はおじさんか?」
<シリウス>
「気持ち悪いっておい」
「ははは、外見と精神年齢のアンマッチは我々にもよくある事でしょう」
ミスガイやアヴィーチェさんがそうだったように。僕はあんまり気にして無かったけど前世の記憶があやふやだからだろうか。本部長さんの所感は僕は大人だったみたいだけど。
彼はどうなんだろう……
<シリウス>
「今この人と喋ってみてもいいですか?」
<オースノン本部長>
「すみません。彼はこれから説明や手続きがありますので、終わったら声をかけてみればいいかと」
<パレ・リブッカー>
「そしたら私の用事に少し付き合って貰おうか。とりあえず上に向かうぞ」
エレベーターの方へと向かう奴を追いかける前に僕は反転する。
<シリウス>
「またね〜!」
中の男に手を振ると、男はポカンという顔をして振りかえした。
次回は12/14になります!




