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25話 自然の神

2025年 1月6日


テヲカーリ 円卓の間


再び召集された頭領達。

今後の方針について話し合っているようだ。

その中で僕と女もなぜか呼ばれてここにいる。


<巫女 ユム>

「今回の侵攻で結界を破壊する手段を連盟軍が有していると見ていいでしょう。今後は更なる結界の強化が求められます」


<頭首 フナク>

「そこはファリア殿と話し合ってね、リーツァと一緒に強度補強の術式を構築済みだ。ナナカあとで術式の詳細送るから量産頼めるかい?」


<毒流 ナナカ>

「分かりました」


<翠流 チャリクエ>

「結界を破壊された場合、新たな避難場所が必要になりそうですね」


<流流 トルトラ>

「こちらで改めて拠点にできる所を洗い出ておこう」


<緋流 リーツァ>

「”迷宮”のある砂漠地帯は?」


<岩流 ラック>

「あそこはな〜ちょっとめんどくさいんだわ」


<霊流 ヨルト>

「”砂漠の神”の領域なんだけど、前行った時、こっちにめっちゃ砂かけてきて」


<岩流 ラック>

「ヨルト、お前さん砂で埋められてたんだよな〜助けるの大変だったぜ。やっこさんは厄介な神でよ。来るもの拒み、去るものを地の果てまで追い回すっていう」


<宙流 オオケン>

「それに少しずつ砂漠の範囲を広げてるんだよ。僕が植えた木もちょっとしたら砂漠に呑まれちゃって」


<緋流 リーツァ>

「そうなんだ、拠点にするには難しそうね」


<異流 シュッテン>

「避難場所もそうじゃが戦力増強も急務ではないかの。アスカも若いとはいえ一端の頭領、やられたとなると軍の兵力、侮れぬものじゃぞ」


<璃流 ウェンウェン>

「また全体訓練やった方がいいかな」


<豹流 ペト>

「訓練もそうだか、集団戦闘だけでなく頭領以外で指揮系統ができる奴を増やした方がいいかもしれん。今回はアスカ不在に加え、魔王軍の奇襲と立て続けにイレギュラーがあった。不測の事態の時に最善の方法を取れるよう鍛えておく必要がありそうだ。」


<香流・治流 テトラ>

「医療班の増員もしたいわね。戦士が増えれば傷つく者も増えるだろうし。医療キット多めに回しておくからトルトラ運ぶのお願いね」


<流流 トルトラ>

「承知した」


<頭首 フナク>

「戦士の戦力増強並びに増兵はペトを中心にウェンウェン、チャリクエも共同で行ってもらおう。トルトラは拠点の確保を検討しておいてくれ、コア、トルトラのサポート頼めるかい?」


<尾流 コア>

「御意にて」


<頭首 フナク>

「移住者達の状況は」


<磁流 アルテカ>

「わずがな数だが原種達の保護にも先月成功しました」


<緋流 リーツァ>

「移住者も先月よりも増加傾向にあります。ダディ、食糧大丈夫そう?」


<登流 ゴフセン>

「ここのプラントを増設を進めておかないとまずいかもね。各拠点で余ってる所あったら情報を僕に頂戴」


<翠流 チャリクエ>

「移住者増加に伴って戦士志願者も増えています」


<煙流 トラティカ>

「じゃあ武器も新しく作んないとな。マクイル資材の在庫余ってるか?」


<減多流 マクイル>

「アスカの場所を取られたのが地味に響いている。このまま行くと今ある魔石だけじゃなくて、ここの木に引っ付いてる奴を使わないといけなくなりそうだ」


<頭首 フナク>

「今あるもので何とかなるならそうして欲しい。みんなも再利用出来るのもがあれば進んでやっていってくれ。コア、連盟軍の諜報は引き続き頼む」


<尾流 コア>

「委細承知」


<頭首 フナク>

「協議したい事は他にもあるけど、今日の所はこれくらいにしようか。さて、元々頭領が集まったのはアスカへ神具の譲渡する、”神盟の儀”を行う為だったんだよ、シリウス君」


<シリウス>

「はい!……………そもそも神盟の儀って何ですか?」


<頭首 フナク>

「神盟の儀は我らが神から”神具”を賜る儀式でね。神具を賜る頭領の血肉を神に捧げる”血盟の儀”、そしてこの後行う”継承の儀”、この二つを以て神盟の儀と言うんだ」


<巫女 ユム>

「神具は頭領が捧げた血肉を基に、我らが神が作る武器のようなものです」


<頭首 フナク>

「ここにいるみんなは全員持っていてね、アスカだけは街の統治に忙しくてまだ持っていなかったんだ。だけどアスカに限っては行うタイミングが悪かった。血盟の儀の後は著しく体力を消耗するから」


アスカさんが行ったのは血盟の儀だったのか。

血肉を神に捧げる――文字通り自らの体を捧げていたなら。

あの時、満身創痍の中でも僕をかばって…………………


<頭首 フナク>

「血盟の儀は終わっている。あとは神具をどうするかなんだけど」


<シリウス>

「僕がアスカさんの代わりになります」


アスカさん、裕平さん、サトウ見ていて下さい。

僕があなたたちの意志を受け継ぎます。


<頭首 フナク>

「そう言って貰えるのはありがたいんだけど、まだ分からない。こればかりは我らが神の意思だからね」


席を立つフナクさんが柏手を一回打つ。

部屋に乾いた音が響くと、円卓の後ろに巨大な祭壇が現れた。


<頭首 フナク>

「じゃあ呼ぶとしようか。皆も用意を」


頭領達が皆円卓から席を立ち、膝をつき伏していた。

僕も頭を伏し神が現れるのを待つ。

女は立ったままだったが。


<頭首 フナク>

「――自然の神よ、御身の威光で我らが民をお導き下さいませ」


祭壇の中央が眩しく光る。

その光は部屋の扉が開いたかのように段々と横に広がっていく。


かつていた世界で神という概念はあった。

人間の上位存在。

時に恐れられ敬われる存在。

時に信仰の対象とされ、願いを捧げる存在。

概念は知っていても実際にこの目で神を見たことはない。

だがこの世界には神は実在するという。


一体どのような姿をしているのだろう。

ヒトの形をしているのか、はたまた動物か、又は形も無いものなのか。


やがて光が消えその姿が顕わになる。

ソレは凡そヒトの骨格をしていなかった。

形はあった。姿も見える。

だが、今まで見たこないない形状の存在。


天球儀のようなものに木の根がまとわりついている。

その上に巨大な蒼い宝石とそこから手が八本生え、宝石の上には剣山のように岩がそびえ立っている。

周囲には機械的な羽と天使の羽のような物が交互に六つ浮いており、頭頂部で七色に光る稲妻があちこちに発していた。


そしてとてつもなく巨大。

木の根の先っぽが既に僕の身長の十倍以上もある。

その全貌を捉えることが出来なかった。


<頭首 フナク>

「さあ、シリウス君こちらへ」


フナクさんに呼ばれ、僕は祭壇の目の前に立った。

自然の神の頂上が光ると、木の根から枝が伸びてきた。

枝は僕の頭をちょんと触り撫で始めた。


もう片方の木の根から枝が伸び、枝を割くように扇が現れた。


<シリウス>

「あれが、神具…………………」


神具の扇を持った枝は僕を通り過ぎ、ヨルトさんの目の前に置かれた。


<霊流 ヨルト>

「アタシに……………」


そしてヨルトさんが首にかけていたアスカさんのペンダントに神の枝が触れる。

するとペンダントは赤く輝き、光は萎んで消えた。


枝が自然の神の下へ戻ると、白い光に包まれて神は姿を消した。


<シリウス>

「…………何をされたのでしょうか?」


頭を撫でられただけで、特に何も起きてない気がする。

それに神具はヨルトさんの方に行ってしまった。


<シリウス>

「僕は…………継承者じゃなかった……………」


<岩流 ラック>

「そう落ち込むな。武器が貰えなくとも意思は継げる。お前はそのままでいいんだ」


<シリウス>

「ありがとうございます」


<霊流 ヨルト>

「頭首、アタシは既に神具を持っています。どういう事でしょう……………」


<頭首 フナク>

「もしかしたらアスカ復活の為に何かされたのかもしれない。とりあえず預かって置いてくれ。どうするかは君に任せる。」


<霊流 ヨルト>

「分かりました。えっとシリウスって言ったっけ」


<シリウス>

「どうしました?」


<霊流 ヨルト>

「神具も、アスカ姉のペンダントも私が預かっておく。蘇生の為に試したいことがいろいろあるから。いい?」


<シリウス>

「大丈夫です。アスカさんのことよろしくお願いします。その代わり、復活できたらあなたの所へ行ってもいいですか?」


<霊流 ヨルト>

「……………いいけど、今は教えられない。私の霊墓は特別よ。正確な場所を知ってるのは頭首だけだから」


<シリウス>

「そうですか…………………」


ヨルトさんが杖を僕の胸に当てると紫の光が胸の中に吸い込まれていった。


<霊流 ヨルト>

「今貴方の魂に私の情報を刻んだ。魔導具を通して行き先を念じれば座標が現れるからそれを辿って来て。」


心でヨルトさんの事を念じるとソウルウオッチャーが光り、目の前のヨルトさんへと伸びた。

要領はペンダントの時と一緒かな。


<霊流 ヨルト>

「無実が分かったとはいえ私はあなたを認めていない。だから自力でアタシの所に来て」


<シリウス>

「はい、ありがとうございます」


<霊流 ヨルト>

「認めてはないけど……………期待はしてるわ」


それから頭領達と歓談して、ヨルトさんの拠点に向かう為に一回元の場所に戻る事となった。


<ファリア>

「そろそろ戻ろうかの」


<シリウス>

「そんな事言うなんて珍しい。ここの生活気に入ってたんじゃないの?」


<ファリア>

「本当はここに居たいのじゃが、毎夜毎夜何処からか嫌がらせのように”出て行け出て行け”って囁きおって。聴覚遮断しても頭に訴えて来て耐えられぬわ」


図太い性格の女だがよほど心に来たらしい。


<ファリア>

「被検体も新しい力を得た事じゃし、また被検体で実験でもしようかの」


<シリウス>

「実験という名の殺人耐久レースはやめてくれ」


本部には各拠点に行くためのワープ装置があるらしく、それを使って戻る事となった。


本当は他の頭領の拠点も行ってみたかったけど、

自分達の事を認めてくれたとはいえ、まだ自分の拠点に入れる事は憚られるとの事だった。

ヨルトさんの拠点に行った後、通行用のペンダントを貸し与える運びとなるらしい。



<翠流 ウェンウェン>

「じゃあね〜またね〜!」


<岩流 ラック>

「きっちり鍛えたからな、頑張れよ!」


<シリウス>

「はい!」


<登流 ゴフセン>

「またいっしょにご飯食べようね~!」


<シリウス>

「本当にありがとうございました!頑張ります!」


頭領達に挨拶をしてワープ装置を起動する。

自分の戻りたい場所を想像すると、緑色のカーテンのようなものが現れた。


足を一歩踏み出すと、カーテンの中にに吸い込まれていく。


<シリウス>

「外に出た!……………って」


僕達は家を置いていた場所に戻っていた。

家を置く場所はいつも森の中で、人が立ち入らなそうな場所を選んでいた。


だというのにそこには軍服を着た兵士達が幾人も何かを探すように歩いている。

その中には見覚えある”刀を持った女”がいて――


<刀を持った女>

「周囲を探せ!この街の周辺にいるのは確かだ!ん?」


<シリウス>

「お前は!!!!」


その姿を忘れてたことは無い。

裕平さんをアスカさんを葬り、あの街を焼却した張本人。

連盟軍の刀の女!!!


    ―― 連盟軍 13番隊隊長 ―― 

       パレ・リブッカー 


<パレ・リブッカー>

「見つけたぞ、白髪の子供」

ご覧頂きありがとうございました!

次回から中編に入っていきます。前編パートの再編集、今後のクオリティ向上と投稿頻度を上げる為、26話は11/1になります!(制作状況により早まる可能性があります)

今後とも「魔法使いといっしょに!」をよろしくお願いします!


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