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変わる者、変わらない者③

体調を崩したり、リアルでバタバタしたりで更新が遅くなって申し訳ございません(汗

今後も不定期になりそうです(´;ω;`)

「お姉さま!」


 パーティーの途中だというのに、カイルに慰められているようなララスティを見て、エミリアは思わず大声を出す。

 ただでさえ注目を浴びていいたエミリアたちはさらに注目されることになり、呼ばれたララスティは驚いたように(・・・)目を大きくしたあと、慌ててカイルから離れエミリアを見た。

 その目には怯えの色が浮かんでいるように感じた人もいるだろう。

 エミリアはララスティの元に足音を立てて近づくと、腕を引いてカイルから強引に引き離す。


「勝手にあたしから離れるなんて、ひどいじゃないですか!」

「ごめんなさい、エミリアさん……」


 ララスティは傷ついたような顔をして謝罪の言葉を口にすると、カイルにも頭を下げた後にエミリアの手を自分の腕から離し、顔を伏せてその場から離れていく。


「カイル殿下! どうしてお姉様と一緒なんですか! あたしは一人にされてすごい不安だったのに!」

「すまない、ララスティ嬢が落ち込んでいたから少し励ましていたんだ」


 それは婚約者として当然の行動なのにもかかわらず、エミリアはカイルの言葉を聞いて怒りに顔を赤くする。


「お姉さまのことなんかより、あたしの傍にいて下さいよ!」

「……ああ、わかった。パーティーの残りの時間はエミリア嬢の傍にいるよ」


 カイルの言葉に周囲の者は驚くが、エミリアは満足したように頷き、カイルの腕を引いて先ほどまでの場所に戻る。

 エミリアは元の位置に戻ると、まるで自分がカイルの婚約者であるというように、当たり前のようにカイルの隣に立つ。

 その状況に誰もが咄嗟にララスティの姿を探すと、ルドルフの傍で客人と会話をしている姿を確認できた。

 だが、その姿はどこか儚げで今にも倒れてしまいそうであり、時折ルドルフが支えるようにララスティの背中に手を当てている。


「あの、エミリア様……」

「はい、なんですか?」


 エミリアはニコニコと笑みを浮かべて返事をしたが、声をかけた貴族夫人の表情はなんともいえないものになってしまう。


「ララスティ様はどこか具合が悪いのでしょうか? お顔の色がすぐれないように見えます」

「えー? そうですか? ふーん……」


 エミリアは少し考えると、うんうんと納得したように頷く。


「貴族って大変ですよね。具合が悪くても無理してこういうパーティーに出ないといけないんですもん」

「え? ええ、場合によっては……」

「でも! それって駄目だと思います!」

「え!?」


 エミリアの反応に尋ねた貴族夫人が驚いたように声を漏らしてしまう。


「あたし、お姉さまに無理をしないで部屋で休むように言ってきます!」

「あのっ!」


 いきなりララスティのいる方向に走り出した(・・・・・)エミリアを止めることが出来ず、周囲に居た者は茫然としてしまう。

 残された者は一緒に残っているカイルに視線を向けたが、カイルは困ったように微笑んでエミリアのあとをゆっくりと歩いてついて行った。


 エミリアがララスティのところに駆け寄ったさい、さりげなくルドルフがララスティを庇うような行動をしたが、エミリアはそれに気づかず「お姉さま!」と声をかけた。

 ララスティはその声に怯えたように体を震わせた後、僅かに間をおいてから「なんでしょう?」と静かにエミリアに問いかけた。


「お姉さま、顔色が悪いですよ! 無理しないで部屋で休んでください」

「いえ、大丈夫ですわ」

「何言ってるんですか! 貴族だから体裁とかいうのが大事かもしれないですけど、こんな(・・・)パーティーでまで気にすることないですよ。後のことはあたしに任せてお姉さまは休んでください」


 エミリアは心の底からそう思っているようで、いつものような作為的なものは感じられない。

 だが、自分たちが招待され参加しているパーティーを「こんな」と言われて、気分のいいものはほぼいない。

 エミリアの声は大きく、注目を浴びていたこともありほとんどの参加者がその言葉を耳にした。


このぐらい(・・・・・)なら、お姉さまがいなくてもあたしとカイル殿下だけで十分ですよ」

「……エミリアさん、このパーティーはわたくしたちの訪問を歓迎してくださってのものですわ。そのようにおっしゃるなんて、皆様に失礼でしてよ」

「何言ってるんですか?」


 ララスティの言っている意味がわからないというようにエミリアが聞き返す。


「わたくしたちのために動いてくださった方が大勢いらっしゃるわ。その方々の努力を気安く無駄にするようなことをしてはいけませんのよ。それに、わたくしでしたら大丈夫ですわ」


 にっこりと微笑んだララスティに、エミリアはムッとした表情を浮かべる。


「どうしてそんな風に意地を張るんですか? 貴族だから? そんなのおかしいじゃないですか! 無理をして倒れてからじゃ遅いんですよ! それに、倒れたらそれこそ迷惑(・・)じゃないですか」


 ある意味正論だが、この場で口にすべきことでもない。

 ララスティは自分で評価を落としてくエミリアに内心で笑いながら、表では困ったように眉を寄せ、「倒れるほどではありませんわ」と口にした。


「それって本人は自覚ないだけなんじゃないですか? 無理をするなんて体に良くないですよ。今だって、なんか具合が悪そうじゃないですか」


 エミリアの言葉に、周囲の者はエミリアの言葉と行動がララスティに心労をかけていると察するが、当の本人は本気で(・・・)ララスティを心配している。

 エミリアのなかでは病人が無理して何かをするということは、非常識な行動なのだ。

 だから、エミリアは具合が悪そうなララスティが無茶をするという事実が理解できない。


「こっちにはまだまだ滞在するんですよ? 最初から具合が悪くてどうするんですか。まったく、お姉さまってば体調管理もできないなんて……」


 エミリアは大きくため息をつくと、ララスティの腕を掴もうと腕を伸ばしたが、さりげなくルドルフがララスティを庇ったことで、腕を掴めなくなってしまう。

 自分としてはララスティを会場から連れ出して休ませようと、善意(・・)でしようとした行動なのに、ルドルフに邪魔をされてしまったとエミリアは眉を寄せる。


「エミリア嬢、ララスティのことは私が見ているから、君はこちらを気にせずにパーティーを楽しみたまえ」


 些か冷たく言うルドルフの言葉に、エミリアは僅かにひるみながらも、機嫌を悪くしたまま何かを言いたそうにその場を動かない。


「あたしはお姉さまの家族です! だから気にするのは当たり前(・・・・)じゃないですか。むしろ、家族でも何でもないのにお姉さまの傍についてるのっておかしくないですか?」


 ララスティにも世間体があるのだから、と言うエミリアに、周囲の者は呆れてしまう。

 家族でもなければ婚約者でもないカイルを傍に置いていたのに、どの口が言うのかと誰もが思う。


「私とララスティは遠戚関係にある。それに、こちらに来ている間はわたしがコール兄上にかわってララスティの保護者だ。十分に傍についている理由になると思うが?」

「それは……でも…………」


 反論の言葉が出てこないエミリアの肩に、カイルが手を置いた。


「エミリア嬢、叔父上の言う通りだよ。こちらに滞在している間、僕とララスティ嬢の保護者は叔父上だ。それに、ララスティ嬢の体調だって、本人が言うように倒れるほどではないし、この場で騒ぎを大きくした方が彼女の体調に影響を与えてしまうよ」

「でも!」


 エミリアはカイルに反論しようとしたが、なにも思いつかず悔しそうに唇を噛む。


「あ、あたしは本当にお姉さまを心配して言ってるのに、どうしてわかってくれないんですか……」

「うん、エミリア嬢が心からそう(・・・・・)考えている(・・・・・)のはわかるけど、この場は叔父上に任せるべきじゃないかな」

「でも……」


 なおも何か言いたそうにカイルを見るエミリアに、カイルは優しく微笑みかける。


「エミリア嬢がララスティ嬢のことを気にかける気持ちもわかるけど、折角のパーティーなのだから、楽しんだ方がいいよ。だから、ララスティ嬢のことは叔父上に任せよう」

「…………わかりました」


 納得はしていないようだが、エミリアはカイルの言葉に頷く。


「お姉さま、どうか無理はしないでくださいね」

「ええ、ありがとう。エミリアさん」


 そう言ってエミリアが離れ、カイルに誘導されるままに離れた場所で食事を始めたのを確認し、ララスティは軽く握りしめた手を胸の上にもっていき深く息を吐きだした。


「大丈夫かい、ララスティ」

「はい、ルドルフ様。お気遣いありがとうございます」


 ララスティはそう言って笑みを浮かべると、自分に視線を向けている招待客にも笑みを向け、「お騒がせしました」と頭を下げた。


エミリアは「一般的な判断もできる子」ではあります。

まあ、その場の状況にあっているかどうかは別とします!


皆様の応援が身に染みる昨今…どうかブクマや評価を、どうか、どうかどうかどうかお願いします!

(くどいのは仕様です)

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