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選び取った選択肢②

2025年!

明けましておめでとうございます(*´▽`*)

 カイルが応接室に戻ってから一時間ほど経って、話があるとメイド経由で声をかけられたララスティが応接室に戻ると、三人掛けソファーに寄り添って座るカイルとエミリアが待っていた。

 その状況にララスティは内心で笑いつつ、戸惑った表情を浮かべ二人の正面に座る。

 そんなララスティを見てエミリアは見せつけるようにカイルに身を寄せ、カイルはそんなエミリアの頭を優しく撫でた。


「ララスティ嬢、僕はエミリア嬢を好きになってしまったんだ。約束通り婚約解消に向けて協力してくれるかい?」


 優し気な笑みをエミリアに向けた後、ララスティに向かってそうきっぱり言うカイルの目には迷いはない。

 だが、ララスティから見て本当にエミリアを愛しているのかは疑問に思えてしまう。


(前回、エミリアのことを選んだカイル殿下の瞳は、もっと輝いていましたのに)


 探るようにカイルの目をじっと見るララスティに気づいたようで、エミリアがララスティを睨みつける。


「お姉さま、そんな風にカイル殿下を見ちゃって、もしかして未練ですか? 王太子妃の座が惜しくなったんですか?」

「そのようなものに興味はございませんわ」


 ララスティが心の底から言うと、流石にエミリアにも伝わったのか、それ以上何も言わなくなった。

 ただ、見せつけるようにカイルに身を寄せる行動は変わらない。


「カイル殿下がそのようにお決めになったのなら、わたくしはお約束通りご協力いたします。問題は、王命で決まったこの婚約をどのように解消するかですわね」

「うん」


 ララスティとカイルがどうしたものか、と悩んでいると、エミリアが「簡単じゃないですか」と笑う。


「エミリア嬢、何か案があるのかな?」

「あたしとカイル殿下が愛し合ったので、婚約者を変えようって言えばいいんですよ! あたしはお姉さまと同じランバルト公爵家の娘なんですから、王様だってすぐに変えてくれます!」


 エミリアの言葉に、ララスティはそれは絶対にないと心の中で笑ってしまう。

 ララスティが選ばれたのは、ラインバルト公爵家の娘だからではなく、オーギュストの孫だからだ。


「エミリア嬢、同じ家の令嬢とはいえ、王命は簡単に変えることはできないんだ。たとえ、僕とララスティ嬢が解消を望んでいても、貴族の勢力図や個人の能力、他国との関係、実績なんかも関係してくるからね」


 カイルの言葉に思わず吹き出しそうになってしまい、ララスティは困ったように眉を寄せつつ咄嗟に口元を隠す。


(カイル殿下、それは遠回しにエミリアさんがわたくしに何ひとつ勝る部分がないとおっしゃっているようなものでしてよ)


 吹き出さないように口元を隠しつつ、表面上はカイルの言葉に困ったように見せたまま、こくりと頷いた。


「エミリアさん、わたくしがカイル殿下の婚約者となってから、多くの方が動いていらっしゃいます。婚約者を交代するとなれば、各種スケジュールの見直しだけではなく、教育内容や公務内容、果ては王太子の婚約者への品格維持予算の調整も必要になりますのよ」

「なんですか、それ。面倒ですね」


 エミリアはあからさまに眉を顰める。


「っていうか、その品格なんちゃらの調整ってなんですか? お姉さまとあたしで予算が変わるってことですか?」

「それは変わるよ、エミリア嬢」


 エミリアの問いかけに答えたのはララスティではなくカイルだった。


「ララスティ嬢に割り当てられている品格維持予算は、アインバッハ公爵家より補助予算が出ているんだ。婚約者でなくなるとなれば、初期維持費の中から使用してララスティ嬢に贈った品物のうち、どれを返却するのか決めなくちゃいけない。現在余剰になっている予算の内、どれほどアインバッハ公爵家に返却するかも話し合わないといけないね」

「はあ!? なにそれ、ずるくないですか!?」


 エミリアがララスティを睨みつけるが、その態度にカイルがため息を吐く。


「本来なら、実家であるラインバルト公爵家が補助予算を出すべきなんだ。でも、ララスティ嬢の後見人はアインバッハ公爵家だからね。それに、アインバッハ公爵家が補助予算を出しているのは、ララスティ嬢の手持ちのドレスやアクセサリー、化粧品などが著しく少ないからだよ」

「え~? 公爵令嬢なのになんですかそれ。親戚のお家の後見とかされてるのに、役に立ってないじゃないですか」


 笑って言うエミリアに、カイルが一瞬だけ冷たい視線を向けるが、エミリアがカイルを見る時には困ったような優しい色を目に浮かべていた。


「ララスティ嬢はアインバッハ公爵家の後見を受けているとはいえ、元々持っていた品物がほとんどなかったからね。一から揃えるような状態だったし、その過程で王太子の婚約者として予算を補助して、ふさわしいものを揃えるという流れだったんだよ」


 もちろんララスティの個人的所持品が少ない原因はエミリアだ。

 アインバッハ公爵家が後見につき公爵令嬢としての体裁は整えているが、そもそもララスティの所有物を奪っていったのはエミリアだ。

 カイルもララスティもあえてそのことに触れない。


「とにかく、ララスティ嬢が婚約者でなくなれば諸々の調整が必要になるんだ」

「はあ……面倒くさいですね」


 いやそうにするエミリアにララスティは苦笑しながら「でも」と声をかける。


「そんな大変な手続きを覚悟してでも、カイル殿下はエミリアさんを選びましたのよ」


 事実ではあるが、エミリアを持ち上げるためだけの言葉をあえて口にする。

 案の定エミリアはすぐさま機嫌を直し、誇らしげにカイルの腕に自分の腕を絡めた。


「嬉しいです! カイル殿下! あたし、やっぱりカイル殿下にして(・・・)正解でした!」

「うん」


 そんなエミリアを離すことはせず、カイルは改めてララスティを見る。


「僕とララスティ嬢の婚約破棄に関して、父上に話をする前にアインバッハ公爵と……叔父上に話を通しておきたいんだ」

「伯父様はともかく、ルドルフ様にですの?」


 ララスティが首をかしげるとカイルは「うん」と頷く。


「君の後見はアインバッハ公爵家だから。養女の話もある以上、今後はランバルト公爵家ではなく、そちらをメインに動くべきだよね。叔父上には、君とのことでいろいろ気にかけてもらったし、先に話すのが筋だと思うんだ」

「なるほど」


 ララスティはルドルフも絡むとなれば、カイルとエミリアを誘導しやすいとすぐさま賛成するがエミリアは首をかしげる。


「カイル殿下の叔父さんですか?」


 カイルの叔父がルドルフだと理解していないようで、カイルがルドルフが誰なのかをいえば、エミリアがあからさまに嫌な顔をする。


「あの人、あたしにお説教してきたし……、きっとあたしのことをよく思ってないんですよ。カイル殿下とのことを相談して、協力してくれないかも」


 そもそもエミリアをよく思っている貴族の方が少数派なのだが、とララスティは思ってしまうが、顔には出さず困ったように微笑むのみ。


「大丈夫だよ。叔父上は話せばわかってくれると思う。エミリア嬢にお説教をしたのだって、君を思っての事だから」

「そうなんですか?」

「多分ね」


 カイルはその後、日程を調整するので予定を教えて欲しいとララスティとエミリアに言う。


「あたしはいつだって大丈夫ですよ。カイル殿下とあたしの将来のことなんだし、他のことなんてどうだっていいです!」


 エミリアがすぐさまそう言うが、ララスティは少し考えてから五日後であれば一日予定が空いていると伝えた。

 そのことにエミリアは遅いと文句を言ったが、カイルもその日ならちょうど空いているから都合がいいとエミリアを宥めた。


「場所はどちらにしましょうか? こちらでも大丈夫ですが……」

「いや、出来れば叔父上のところがいいかな。王宮は避けたいし、ここに叔父上と僕が同日来たとなれば、ランバルト公爵が落ち着かないだろうからね」

「わたくしたちが示し合わせてシングウッド公爵家に行くとなると、それもまた注目を集めてしまうのではないでしょうか?」

「となると、どこがいいかな?」


 カイルがララスティの言葉に一理あると首をかしげる。

 その横でエミリアは面倒くさそうな顔をしつつも、特に何も考えていないようで早く決めてくれとばかりにララスティを睨みつけた。


「…………アインバッハ公爵家はいかがでしょうか?」

「え?」

「あちらでしたら、わたくしが滞在してもおかしくはありません。カイル殿下は現在わたくしの婚約者ですし、わたくしの様子を見に訪問したと言う事にすれば、世間の目は誤魔化せると思いますの」

「ふむ」


 ララスティは続けて、仕事の関係でルドルフも訪れることがあると伝え、予定を合わせてもらえば集まれると提案する。


「待ってください! それってあたしがのけ者になるじゃないですか!」


 エミリアがそう叫ぶと、ララスティは少し考えるふりをして口を開く。


「伯父様のところに滞在中、わたくしが体調を崩したことにするのはどうでしょう? そうすればカイル殿下が訪問する理由にもなりますわ。もちろんエミリアさんも」

「ああ、なるほど」


 ララスティの言葉にカイルはすぐさま頷くか、エミリアは意味が分からないと言うように首をかしげる。

 それを見てカイルが、「お見舞いという理由になるだろう」というが、エミリアはキョトンとしてしまう。


「お見舞いなんてする必要あります?」


 エミリアの言葉にカイルは言葉を失いかけるが、「建前の理由は必要なんだよ」と気を取り直すよう言う。


「そうなんですか? 別にお姉様が倒れたとしてもお見舞いなんて必要あります? まあ、今回はその建前とかいうことだから、我慢してあげますけど」


 不満気なエミリアに苦笑しつつも、ララスティはルドルフと話を合わせる必要があると考え、カイルと落ち合うより先に会うことを心に決めた。


連載再開ですよ~(*´ω`*)

カイルの本音が語られるのはもう少し先ですかね?

それともすぐですかね?

次話をお待ちくださいマシマシ♡


続きが気になるかたはブクマや評価をどうぞよろしくお願いいたします。★★★★★

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