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9: 夢と悪夢

レイカは、隣から声を聞いた。素早く振り向くと、そこにはソウルが立っていて、その表情はいつも通り落ち着いていた。


ソル...?


「な、何をしているの?」


「俺は…」ソウルは言いかけたが、レイカが突然痛みでうめき、頭を押さえたため、言葉を止めた。


「ぐっ…」


ソルは近づき、慎重にその様子を観察しながら動いた。「大丈夫か?」


レイカは鋭い痛みが次第に引いていくのを感じ、ゆっくりと目を開けた。「うん、大丈夫—」


彼女の言葉は途切れ、視線が彼の顔に固定された。彼女は固まった。彼の空っぽな目が、じっと彼女を見つめていた。揺るがず、恐ろしいほどに。


「ねえ...!」


驚いたレイカは彼を押しのけ、すぐに立ち上がった。彼女の頬はうっすらと赤く染まり、ソルがどれだけ近くにいたかに気づいた。


近すぎる...!


「うっ、ちょっと! そんなにじっと見ないでくれる? あなたの顔がこんなに近くにあって、ちょっと気持ち悪かったんだけど…」


ソウルは、何も気にすることなく、制服の汚れを払いながら立ち上がった。


「俺の顔、どうかしたか?」


レイカは再び彼をちらっと見たが、まだ残る気まずさを無視しようとした。彼の表情はいつも通り無表情で、感情の兆しは全く見られなかった。


なんだか、その顔、ちょっと気になるな…


レイカはため息をつき、考えを振り払った。「あー、もういいや。」


少し乱れた制服を整えていると、優しい風がその場を吹き抜けた。彼女は無意識に片目を閉じ、髪が風で揺れる中、それを耳の後ろに戻した。


風が静まると、レイカは胸の中に見慣れない温かさが広がっているのを感じた。


ん?


彼女の手は無意識に胸の上に動いた。その温かさはますます濃くなり、体の中心から優しく広がっていったが、不快感はなく—まるで愛する人の優しい抱擁のように、心地よい感覚だけが広がっていた。


この感覚…子供の頃、母親に抱きしめられたときの温かさと同じだ…


気づかないうちに、レイカの目から微かに紫色の光が放たれ始めた。隣でしゃがんでいたソウルは、その不気味な変化に気づいた。


「レイカ、目が…」彼は冷静に言った。


レイカは混乱した表情で彼を見た。「え…?」


彼女が言い終わる前に、周囲の風景が一瞬で変わった。かつて荒れ果てた森が、無数の光る球体で照らされ、まるで蛍のように浮かんでいた。その輝く色合いが暗闇を突き抜けて、大小さまざまな球が浮かんでおり、いくつかは小石のように小さく、またいくつかは提灯のように大きかった。


あれは何だろう?さっきまでここにはなかったのに!


レイカは信じられない思いで辺りを見渡した。視線が近くの、柔らかな青い光を放つ球に引き寄せられた。


好奇心に駆られ、レイカはその球体に近づいた。彼女はその青い球を両手で包み、その光が彼女の輝く目に反射するのを見つめた。


「ソウル、」彼女は不安げな声で呼びかけた。「今、これ見えてる?」


ソウルはじっと彼女を見つめ、彼女の動きに気づきながらも、球体を認識することができなかった。彼にとって、彼女は空の中を掴んでいるように見えた。


「見えないよ。」彼は首を振りながら答えた。「何も見えない。」


ソウルの返事を聞いたにもかかわらず、レイカはそれに注意を払わず、目の前で繰り広げられている奇妙な現象に完全に集中していた。


彼女は青い球体をそっと放し、それが優雅に浮かびながら、遠くの星のように光を静かに瞬かせるのを見つめていた。


周りを見渡すと、さらに魔法のようなことが起こっているのに気づいた。地面の下で緑の光が脈打つように現れ、それが近くの木々の根を通り抜けていった。その光は荒れた幹を上へと進み、枝に達し、葉を幽玄な輝きで照らした。


なんて不思議なんだろう…


彼女はその光景を目にして息を呑んだ。ほんの少し前までは普通に見えたはずの森が、今や生きた傑作のように変わっていた。まるで普通の感覚では見えない世界を発見したかのようだった。


レイカはその場に立ち尽くし、驚きと沈黙の中でその光景を見つめた。彼女にとって、それは命を宿した息を呑むような絵画のようだった—光と色の途切れのない夢であり、心に説明できない安らぎを与えていた。


その光景に魅了されている間、レイカは薄い霧がその場を覆っているのに気づいた。最初はその存在に気づかず、ほんのかすかなものだった。


目を細めてその奇妙な動きを観察すると、その霧は普通の霧のようにただ漂っているのではなかった。それはまるで意図的に動いているようで—彼女の方に向かって流れてきているようだった。


この霧…私の体に近づいてきているのか…?


混乱しながらも、レイカの好奇心は胸の中に感じた微かな感覚に引き寄せられた。彼女は下を見て、初めて自分の中で何が起こっているのかをはっきりと見ることができた。


胸の中心には、白く輝く密集した塊があり、心拍のように静かに脈打っていた。それとともに、小さな光の玉がかすかに散らばり、まるで見えない力に引き寄せられているかのように集まっている。


その過程を見守りながら、レイカは気づき、目を見開いた。そのつながりは否定できないものだった—周囲の薄い霧が徐々に彼女の体に吸収され、中心にこの奇妙で密なエネルギーを形成しているのだった。


まるで私の体が霧を食べて、それを引き寄せて凝縮し、この白い塊にしているみたい…なんて不思議なんだろう…


レイカは信じられない思いで自分の手を見つめ、顔には疑念が浮かんでいた。


待って…どうして私はこれが見えるんだろう?


彼女は思考を落ち着けようとし、ゆっくりと手を上げた。声が震えながら、彼女は言った。


『囚われの鎖!』


瞬時に、紫色の鎖が空気の中から現れ、近くの木に向かって飛んでいった。レイカの目が見開かれ、その鎖が木の幹をしっかりと巻きつけ、微かにエネルギーを脈打っているのを見た。


あれ、本当に…どこからともなく出てきたの?


彼女は目をこすり、これは自分の想像の仕業だと思い込もうとしたが、鎖はしっかりとその場に固定されており、足元の地面と同じくらい現実的だった。


まさか、これは幻覚じゃないのか?


素早く振り向くと、ソウルの視線が目に入った。彼はいつもの冷静で読めない表情でその鎖をじっと見つめていた。


「さ、さっきの見た?」彼女は震える声で尋ねた。


ソウルは黙ってうなずき、まだその輝く鎖を見つめていた。


「はぁ!なんだこれは?!」レイカは驚きで声を上げて叫んだ。


やっぱり!私の体の中のあの白い塊が能力を発動させる触媒だったんだ!そして、私の体があの霧を吸収したことで、サブ能力のもう一つ、「主観的制御」、つまり物理的な領域を超えて見ることができる能力が、自然に発動したんだ!


新たな自信を持って、彼女は再び手を上げた。


『囚われの鎖!』


彼女の体から何本もの紫色の鎖が飛び出し、空を切り裂きながら近くの木々に巻きついた。


「これらの鎖の強さを試してみよう…」


レイカは筋肉を引き締め、力強く引っ張った。鎖は激しく引っ張り返し、木々がまるでおもちゃのように揺れ動いた。樹皮が割れる音が、開けた場所に響き渡った。


ガキッ!!


彼女が召喚した五本の鎖のうち、三本は木々を完全に地面から引き抜き、残りの二本は幹に深い凹みを残した。


レイカはその結果をじっと見つめ、胸が高鳴る興奮を感じた。自然と笑みがこぼれ、深く息を吸い込んで満足げに胸を膨らませた。


レイカはソウルに向き直り、興奮が抑えきれず、彼のところへ駆け寄った。


「見た?今、私、能力を手に入れたの!ハッハー!」


ソウルはただ彼女を見つめていたが、その表情は変わらなかった。しかし、彼女は彼の目を見て、彼が自分の感じている喜びを理解していることがわかった。


「あなたがいない間に、信じられないことがあったの。誰かに会ったんだけど、その人が言うには、力を手に入れる代わりに、私は…」


ソウルは黙って耳を傾けていた。彼の顔は相変わらず無表情だったが、言葉を待つ静かな集中が感じられた。


「…最初はただの脅しだと思ってた。でも、ここで使ってみて、やっぱり本当だったんだって気づいた。この濃い霧が、私の能力を発動させるための欠けていた要素だったんだ!」


レイカは急に話すのを止め、気づいた。自分が止まらずに喋り続けていたことに。


あ、やばい、気づかずに喋りっぱなしだった!


レイカはソウルをちらっと見た。彼はいつもの冷たく、無表情な顔で自分を見つめている。彼が自分の無駄話に気にしていない様子を見て、レイカはほっと息をついた。


ラッキーだな、「壁」と話してるみたいで…


無意識に、レイカは物理的な領域を超えて見る能力を解除した。彼女の目は徐々に元に戻り、奇妙な霧と輝くオーブが視界から消えていった。


空を見上げると、すっかり夜が訪れていることに気づいた。特別な視覚が彼女の認識を曇らせていなかったので、星々が闇のキャンバスの上に散りばめられ、月々がその光を景色に投げかけているのが見えた。


素晴らしい景色を眺めながら、突然レイカの頭に思いが浮かび、彼女はそれを止めることなく口にした。


「ねえ、私たち、平和な時代に生まれて本当に幸運だよね。」彼女は静かな思索を反映した声で話し始めた。「私たちは快適に暮らしていて、冬の寒さや夏の暑さから守られている。友達や大切な人たちと時間を過ごし、誰かが彼らを傷つける恐怖からも解放されている。」


ソウルは静かにレイカの話を聞き、彼女の視線が空に向けられたままだった。


レイカはさらに言葉を続け、今度はもっと自由に話し始めた。「でも、この未知の土地に来て、私は平和の背後にある現実を見た。大切な人を失った人々の目—それが私を悩ませている。その目には死の恐怖、そしてそれが残された者たちにもたらす荒廃が映っている。」


彼女の手は拳を握りしめ、声が硬くなった。「今、私は、三笠レイカとして、夢を持っている。平和な時代に生きてきた者として、他の人が苦しむのを見過ごすわけにはいかない。この力を与えられた私は、この力を使って、この場所をより良いものにする。みんなが少しでも平和で繁栄する場所を作りたい。」


長い話をした後、レイカは緊張した笑いを漏らした。自分の言葉の重さを軽くしようとするかのように。


「ちょっと大それたことを言ったかもしれないけど、私の理想がちょっと現実離れしてるかもしれないけど…」彼女の声が柔らかくなった。「でも、みんなが恐れずに、安心して暮らすことができる世界を想像してみて。危険から解放されて、子供たちが草原で笑いながら遊んでいるのを見る。それが本当に私が望んでいること。」


一瞬、レイカは言葉を考えるように止まった。「私は、私の道が厳しいことを知っている。他の人は私が新しい力に圧倒されているだけだと思うかもしれない。でも、それは関係ない。私はその理想を実現するために、何があってもやり遂げる!」


長い沈黙が続いた。聞こえるのは、木々を揺らす風の音だけだった。


レイカはその静けさを不自然な笑い声で破り、首の後ろを擦った。「ふぅ!あんなに長い話をしてしまったわ。自分で言ってみて、ちょっと恥ずかしい感じがするわね!」レイカは照れくさそうに笑った。


思いつきで言ったことだけど、この心の中に湧き上がる熱い気持ちを無視することはできない。英雄的に聞こえるかもしれないけど、どんなに小さな力でも、誰かを守れない人を守るために使うべきだと思う…


レイカは言葉の重みをかみしめるように少し黙った。みんなを守れる保証はないけれど、それでも何もしないよりは試してみる方がいい。


ため息をついて、レイカは頭を振り、空の景色から視線を外した。


「よし!村に帰る道を探しましょう。今頃はみんな心配してるでしょうね」とレイカは明るい口調で言った。


レイカは周囲を見渡し、さっき通った道を思い出そうとした。


「ここに来る前にどこを通ったっけ...?」


首の後ろに柔らかな風が吹き、レイカは一瞬震えて立ち止まった。


この感じ…!


レイカはその場で動かず、広がる空を見上げた。誰かに見られているような感覚が空気中に漂い、彼女を不安にさせた。


もう一度周りを見回したが、何もおかしなことはないようだった。しかし、その奇妙な、チリチリするような感覚は消えなかった。


「な、何…あれ?」レイカは小さな声で呟いた。


その突然の静けさを見守っていたソウは首をかしげた。「どうした?」


レイカは目を瞬き、首を振って不安な気持ちを払おうとした。「私は…分からない。ただ、誰かに見られている気がしたの。」


ソウは黙って、無表情のまま周囲を見渡した。しかし、近くに誰もいない様子だった。


レイカは目を閉じて少しの間静かにした。再び目を開けると、その瞳が輝き、前方に見えるものに本能的に後ろに一歩下がった。


彼女の上空に、巨大な生物が飛んでおり、その二つの巨大な翼がほぼ彼女の視界を完全に遮っていた。その半透明の体はかすかに光を放ち、胸の中心には白い塊が集まっていた。


その姿…見覚えがある…!


モンスターは口を大きく開け、レイカが反応する前に、周囲の空気を揺るがすほどの轟音を放った。


ガオオオオオオオオオオオオ!!!


レイカは全身に激しい痛みが走り、膝をついて崩れ落ちた。


あの咆哮…私の聴覚には影響しないけど、直接的に魂を攻撃している!


レイカは顔を上げ、目を見開きながら、ようやくそのモンスターを識別した。


「間違いない…これはワイルドファイア・ドラゴンのヴェイリルだ!」


それを自分の目で見たレイカは、茫然としたまま立ち尽くしていた。背景でソウが何かを呟いているのがかすかに聞こえたが、その言葉はその瞬間の衝撃にかき消されていた。


まさか…幻を見ているの…?ドラゴンはもう死んでいたはず!どうしてまだ…


レイカは、先ほど自分が発動させたパッシブ能力を思い出した。それは物理的な世界を超えて見ることができる能力だった。


もしかして…これはワイルドファイア・ドラゴンの肉体ではない?それとも…それはドラゴンの魂そのもの?


レイカの視線はドラゴンに固定された。ドラゴンの頭は彼女に向かってじっと見据えており、その目は復讐の炎で燃えていた。


その体が失われた後、ドラゴンは森を彷徨い、復讐と血に飢えていた!


ドラゴンは彼女を激しい眼差しで見つめ、その瞳は血の渇きと憎しみで満ちていた。レイカはその目線の強さ、そして悪意が圧し掛かるように感じた。


「くっ!」悪意を感じる。あの目線と目を合わせ続けるのは耐えられない…


レイカはソウの方をちらりと見たが、彼はその危険にまったく気づいていない様子だった。


「くそ!もしかして、私だけがこれを見ているのか?」


彼女はゆっくりと深呼吸し、心を落ち着けた。


「どうやら、これを自分でなんとかしないといけないみたいね…」


レイカはドラゴンを慎重に観察した。その警戒心は彼女にほんの少しの間、考える時間を与えた。


そうだ!物理的なものと霊的なものの両方を拘束できるなら、ワイルドファイア・ドラゴンの魂にも「封印の鎖」が効くはず!


レイカは右腕を上げ、ドラゴンに向かって構えた。


まずはその反応を待つべきだ...


ドラゴンはレイカの姿勢に気付き、それを攻撃の兆しと誤解した。凄まじい咆哮を上げ、彼女に向かって突進しようと構えた。


今だ!


『封印の鎖!』


レイカの胸から淡い紫色の輝きを放つ何本もの鎖が現れ、ドラゴンに向かって飛び出し、その体を巻きつけて動きを制限しようとした。


しかし、鎖が接触した瞬間、ドラゴンは激しく震えた。強大な力で、鎖を容易に引き裂き、その力強い体で拘束を振り払った。


レイカはその光景を見て、目を見開いて驚いた。


ちっ!この鎖では奴を抑えきれない!


次の手を考えようと焦るレイカは、ドラゴンの口が再び大きく開くのを見た。


その動き…またやるつもりだ!


反応する前に、ドラゴンは再び耳をつんざくような咆哮を放った。その音は波のように彼女を襲い、魂にまで届くほどの力で、彼女は息を呑み、体が激しく震えるのを感じた。


「ガァァァッ!!」


レイカは膝をつき、ドラゴンの咆哮がまだ頭の中で反響し、魂を引き裂くような衝撃を感じた。残る痛みに震えながら、なんとか冷静さを取り戻そうとした。


「うっ...」


ソウはレイカの苦しみを感じ取り、心配そうな表情を浮かべて近づき始めた。しかし、膝をついたままでいるレイカは、すぐに手を挙げて彼を止めた。


「ダメ!私一人でなんとかできるから。」


彼女は無理に立ち上がり、残るめまいを振り払って周囲を見渡した。表情は真剣そのものだった。


「きっと、他の人たちは今私たちを探しているはずよ。」彼女は強い声で言った。「ここで立ち止まっているより、彼らを探して守ってあげて。森は彼らが一人で歩くには危険すぎる。」


レイカの苦しむ姿を見たソウは躊躇することなく、無言で頷くと、他の人たちを探しに深い森の中へと向かった。


ソウが遠くに消えるのを見届けたレイカは、再びドラゴンに視線を戻した。ドラゴンはゆっくりと空から降下し、その巨大な翼を羽ばたかせてから、重い音を立てて地面に着地した。


長い間、二人は視線を交わしたまま、動くことはなかった。空気に張り詰めた緊張感が漂い、それは夜風のささやきと遠くの動物の鳴き声だけで破られた。


レイカは膝をつき、両手を地面に置いた。


「もっと太い鎖が必要…奴を抑えるには、もっと強力なものを。」彼女は小さな声でつぶやき、決意が心の中で固まっていった。


彼女は目を閉じ、心を落ち着けた。


イメージして…


地面からいくつかの紫色に輝く鎖が地中から現れ始めた。今回は、いつもの力を使うだけではなかった。それらの鎖は違っていた—より太く、強靭で、彼女が持てる力のすべてを使ってワイルファイアドラゴンを束縛するように設計されていた。


これで十分、ドラゴンを押さえ込めるはず!


鎖は素早くドラゴンに向かって飛んでいき、その体をしっかりと巻きつけた。しばらくの間、ドラゴンはその拘束に抵抗したが、鎖はしっかりと耐えた。レイカは短い安堵のため息をついたが、その休憩も長くは続かなかった。


突然、ドラゴンが激しく震え始め、以前よりも遥かに強烈だった。レイカはすぐにその変化を感じ取り、次に来ることに備えて身構えた。


「まずい…」彼女は小声で呟いた。


彼女は別の鎖を召喚しようとしたが、突然、疲労の波が襲ってきた。腕がしびれ、集中力が揺らいだ。一瞬のうちに、最初の鎖は壊れて消え、残ったのはドラゴンの翼を束縛する二つの鎖だけだった。


レイカは胸の中の白い塊が縮んでいるのに気づいた。それをじっと見つめながら、鎖を使うたびにそれがどんどん減っていることを悟った。


その白い塊… 鎖を使うたびに、どんどん減っている!


突然、金属のきしむ音が彼女の耳を引いた。彼女は顔を上げると、ちょうど二つ目の鎖が壊れて消えるのを目撃した。


くそっ!今、もう一つ鎖を召喚したら、他の鎖を維持できなくなって、そいつらも消えてしまう…!

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