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16: 第二主語

終わりのないように感じた歩みの後、ついに彼らはアルギスが言及した場所に到着した。

麗花は周囲を見渡し、興味深そうに辺りの様子を観察した。


「ここが……」


アルギスの背後には急な崖があり、亀裂からいくつかの低木が生えているだけだった。

豊かな木々が彼らを囲み、葉は穏やかな風に揺れていた。


「ここなら大丈夫でしょう、麗花様。」


周囲が安全であると判断した麗花は、アルギスに近づき、正面から彼を見つめた。

彼女の突然の真剣な態度に、アルギスは戸惑いを隠せなかった。


「アルギス様、私は……あなたの魂を、私の助力と引き換えに差し出してほしいのです。」

彼女は率直に告げた。


その言葉の重みが場を包み、沈黙が落ちた。

元王の表情は衝撃で硬直した。


アルギスは彼女を見つめ、不安と疑念をその目に浮かべた。


「麗花様、もしかして……あなたは魔女なのですか?これは邪悪な魔術にしか聞こえませんが……」


麗花はすぐさま両手を振って抗議した。


「な、何を言ってるんですか?わ、私が魔女に見えますかっ!?」


その瞬間、彼女の脳裏に地球のポップカルチャーにおける“魔女”の描写がよぎった。


「……あっ。」





会話が沈黙に変わると、麗花はため息をついた。


レイカ、君ってたまにどれだけバカになれるの?はっきり言いなよ!


「えっと、それが違うのであれば、麗花様、一体どういう意味なのですか?」

アルギスは困惑した様子で尋ねた。


彼のためらいを見て、レイカは深く息を吸い、説明を始めた。


「私には『契約』という能力があります。これは、対象が自らの意志で従うことで、絆を結ぶことができるものです。」


アルギスはさらに質問したかったが、彼女がまだ話を終えていないことに気づき、黙って耳を傾けた。


「私の契約は肉体ではなく、魂——つまりその人の霊的本質に結びつくのです。だからこそ、あなたの魂を自ら差し出してもらう必要があるのです……私たちの間に絆を作るために。」


その概念は彼にとって馴染みのないものだったが、アルギスは大まかな意味を理解した。


「それじゃ……私はあなたの奴隷になるということですか?」


その言葉に麗花の目が見開かれ、慌てて両手を振った。


「ち、違います!たしかに奴隷契約みたいに聞こえるかもしれませんが、アルギス様、でも私はあなたを無茶に傷つけたりはしませんし、関係も今のままです!」


アルギウスは沈黙した。レイカには、彼の目に疑念が残っているのが見えた。


「心配しないでください、アルギウス様。私が本当に求めているのは、この能力のもう一つの機能です。私があなたを契約者にすれば、すぐに理解できるでしょう…」


「もう一つの機能……?」


アルギウスは一瞬躊躇い、彼女の視線を不安げに受け止めた。


人間という種族は、しばしば欲望や権力への渇望で知られているにもかかわらず、彼女は真摯に見えた。彼女の言葉には欺瞞がなく、彼女から悪意を感じることもなかった…


結局、彼はレイカの要求を受け入れることを決めた。


彼女を信じよう。今、レイカさんを疑うことは、未来の同盟者として役に立たないだろう…


アルギウスは立ち上がり、彼女の前で膝をついて、頭を低くして厳粛に認めた。かつてドワーリン王国の支配者であった者が、一般人の前で膝をつくことなどあり得ないことだった。


「私はアルギウス・フェラッド、あなたの要求を受け入れ、この契約に従います、あなたの助けに対して。」


レイカは最初驚いたが、これは単なる彼の形式であることを理解していた。ためらうことなく、彼女は手のひらを彼の頭の上に差し出した。


二人の間に明るい紫色の光が閃き、瞬く間に透明な鎖がアルギウスの首に現れた。


「これは…」


アルギウスは本能的にそれに手を伸ばし、見慣れない束縛を感じ取った。何か無形のものが彼の存在そのものに絡みついたようなわずかな不快感が広がった。


「心配しないで。すぐに消えるから。」


約束通り、アルギウスの首にあった鎖は消え、そこにあった不快感も一緒に消えた。


「これからは、あなたの魂に対する権限を私が持ちます。あなたの生死は私の手の中にあり、従わなければ結果が伴います。」


「例えば... どんな?」


「えっと... あなたの鎖が少しだけきつくなります。」


アルギウスは本能的に首に手を伸ばし、その考えに顔をしかめた。


「心配しないでください、アルギウスさん。私に害を与えるようなことを考えることはないでしょう。あなたが良い人だって知っていますから。」


レイカの言葉に安心し、アルギウスはゆっくりと立ち上がった。


「それで、さっき言っていた『別の機能』って何ですか?」


「おお... 少し待ってくださいね。」


レイカは目を閉じて考え込んだ。


うーん... どの能力を使おうか...?


「アルギウス様、どんな能力でも構いませんので、ランダムに選んでください。」


アルギウスはその奇妙な頼み事に瞬きをしたが、それでも答えた。


「うーん... 表面液化... ですか?」


表面液化は、私が数ヶ月かけて習得したテラン型の能力だ。奇襲や範囲攻撃に最適だ…でも、どうして彼女がそれを聞いたんだろう?


彼がその思いを口にする前に、レイカは突然両手を地面に置いた。


「え、えっ?」


彼らの足元の地面が、厚く粘性のある状態に変わった。アルギウスの目は驚きで見開かれ、レイカはその契約が機能したことに興奮していたが、驚きのあまり、ひとつ重要な点を見落としていた—その能力の効果。


アルギウスがそれに気づき、すぐに反応した。


「レイカさん!地面が…!」


レイカは彼の視線を追い、恐ろしいことに気づいた—彼らが沈み始めていることを。彼女は足を引き抜こうとしたが、あまりに強く動くと、ますます速く沈んでいった。


「レイカさん、これ以上沈む前に解除して!」


慌てて、彼女はすぐにその能力を解除し、地面は再び固まった。しかし、液化がなくなったにもかかわらず、二人はまだ動けずにいた。


「うっ…本当に失敗した!」


アルギウスはレイカに目を向け、彼女が自分よりもずっと深く沈んでいることに気づいた。土壌が彼女の気道を完全に塞ぎ、彼女の体は地下に完全に閉じ込められていた。


「レイカさん…!」


二人は必死に自分たちを解放しようと、さまざまな方法で脱出を試みた。


「むっふっ…!」レイカはうめき、目をアルギウスに向けた。


アルギウスは能力が発動したとき、あまり動かなかったため、腰までしか沈んでいなかった。彼にとっては脱出は時間の問題だった。しかし、レイカはそうではなかった。


反対側で、レイカはもがき続けていたが、周りの土は動かず、全く動じなかった。


「むっふっ…!」


まずい、まずい!


その間に、アルギウスは自分を解放することに成功した。急いでレイカのもとに駆け寄り、状況を確認した。彼女を引き出すことを考えたが、彼女の小さくてか弱い体を見てためらった。もし力を入れすぎれば、彼女を傷つけてしまうかもしれない。


「レイカさん!耐えて!なんとかして君を助ける方法を探すから!」


必死にアルギウスは周囲を見渡し、助けになりそうなものを探した。


私はこれに適した道具も能力もない…どうすればいいんだ…?


アルギウスは立ち止まり、選択肢を天秤にかけた。


手で掘り出すしかないか…?


視線が彼の武器、ゴスティヘマー—彼の信頼するハンマーアックスに移った。


「斧の部分を使えば、彼女の周りの土を掘り出せるかもしれない…!」


レイカを一瞥した瞬間、彼は時間が迫っていることに気づいた。彼女のもがきは弱まっていっている。


「くっ!迷っている時間はない!」


迷うことなく、アルギウスはハンマーアックスのもとへ走り、しっかりとそれを握りしめて空に掲げた。


「レイカさん!目を覚まして!目を閉じちゃだめだ—必ず君を助ける!」


レイカのこもったうめき声は、力を失うにつれて次第に弱まっていった。その時、アルギスが振り下ろそうとしたその瞬間、背後から聞き覚えのある声が響いた。


「何をしている?」


アルギウスは凍りつき、少しだけ頭を振り向けた。そこにはレイカの仲間、ソウルが立っていた。


ソウルはレイカが深く埋まっているのを見て、目が合った瞬間、彼女は彼を認識した。


ソウル…?何が…彼は…


レイカが思考を終える前に、窒息して意識を失った。ソウルは、実際の状況を知らず、ドワーフがそれを偶然ではなく故意にやったのだと思い込んだ。


迷うことなく、彼は手を上げた。前方で、アルギウスは不吉なものを感じ取った。説明しようとしたが、彼は言葉を続けることができなかった。


「ガキ… それはお前が思っているようなことじゃ—」


彼が言い終わる前に、突然、地面の上に現れ、次の瞬間、激しく地面に叩きつけられた。武器は消え、レイカは姿を消していた。


「は…?」


アルギウスはすぐに周囲を見渡し、ソウルが下に立っているのを見つけた。ソウルはただ、彼が落ちるのを見ていた。


重い音が続いて、アルギウスは地面に叩きつけられた。痛みが体中を駆け巡り、彼はうめき声を上げながら体を起こそうとした。


「ううっ…」


レイカはもう地下に閉じ込められていなかった。代わりに、ソウルの後ろの木の上に無意識で座っていた。


なんだ…?どうしてこんなことが…?


「ヴェイリル。彼女を助けてやれ」とソウルは冷静に言った。


突然、ヴェイリルがどこからともなく現れた。


「うっ…わかった…」


ヴェイリルがレイカを蘇生させている間、ソウルはアルギウスに向き直った。


アルギウスは、まだ動揺していて、起こったことを処理する暇もなかった。しかし、次に何かが上から迫ってくるのを感じ取った。


上を見上げると、彼のハンマーアックスが真っ直ぐに自分に向かって落ちてくるのが見えた。


素早い反射神経でそれをキャッチし、武器を空に振り上げた。準備を整えようとしたその瞬間、地面にいくつかの影が広がった。


再び空を見上げると、目を見開いた。何個かの岩が空から降ってきて、石の嵐のように彼に向かって落ちてきていた。


誰が背後にいるかは、すぐに分かった。


あいつがこんなことができるのか?!避けなければ!


時間がない中、アルギウスは一つ一つの岩を正確に避けていった。それらが次々と地面にぶつかり、微かな震動が大地を伝った。


彼はすべての岩を避けるために必死に体を動かした。最後の岩を避けたと思った瞬間、再び一つが上から現れた。今度は空中で、逃げる足場もなかった。


チッ!間に合わない!


歯を食いしばり、アルギウスはハンマーアックスをしっかりと握りしめた。


ならば…!


彼は全力で振り下ろし、落ちてくる岩を粉砕しようとした。


「ひゃあああ—ぐううっ!?」


武器が岩の表面に当たった瞬間、突然の力が彼の横腹にぶつかった。彼の力は一瞬で消え去り、その衝撃で彼は空中を飛ばされていった。


なんだ、これは!?


それを処理する前に、彼の体は崖の側面に激しくぶつかった。


「ぐああっ!!」


痛みが体中に広がり、彼は地面に倒れ込みながら息を切らした。自分に何が起こったのか、全く予想だにしなかった。


何が起きているんだ…?どうしてこんなことに…


「ゲロゲロ!!」


彼は血を吐きながら、胸を押さえた。


うっ…肋骨が数本折れている…


痛みに耐えながら、彼は自分が壊そうとした岩を見上げた。それはまだ無傷で、まったく損傷していなかった。


なんだ…? どうしてこんなことがあり得るんだ?


次に彼の視線が向けられたのは、今や無表情で近づいてきたソルだった。


あの… あのガキに、そんな力があったのか?


「な、なんだ…お前、何をした?」アルギウスは痛みを抑えながら尋ねた。


「貴様人間! 我が王に何をしているつもりだ!?」 鋭い声が空気を切り裂いた。


ソルは振り返り、アーデンとヴォルンが駆け寄ってくるのを見た。


「子供! 何が起きたか知らんが、王族に害を与えるのは反逆行為だ!」ヴォルンが咆哮し、巨大なハンマーを構えた。


「ダメだ! 彼を攻撃しないで—」


アルギウスは警告しようとしたが、その声は彼らの怒りにかき消された。


ヴォルンのハンマーが最初にソルの皮膚に当たった。しかし、次に起こったことは、彼らの予想を超えていた。


瞬時に、アーデンとヴォルンは背中に圧倒的な力を感じた。その衝撃は突然かつ強力で、二人は地面に叩きつけられた。


「ウウウウ…!」


「な、なんだ!? 攻撃が見えなかったぞ!」


彼らは立ち上がろうとしたが、すぐに自分たちの武器が手元にないことに気づいた。驚きながら、周囲を見渡す。


武器が目の前に転がっている。


「俺たちの武器が…!」


必死にそれを取ろうと手を伸ばすが、試みた瞬間、見えない力が彼らの手足を地面にしっかりと固定した。


「さっきは手が動いてたのに!」ヴォルンが驚きながら叫んだ。


「なんでだ!? いつの間にこんなことに!?」アーデンも驚き、同じように叫ぶ。


彼らの混乱は深まる一方で、地面が暗くなり始めた。直感的に、彼らは上を見上げた—巨大な岩が真上から降ってきている。


「な、なんだ!?」二人は声を揃えて叫んだ。


パニックが広がり、彼らは必死に足掻き、いくつかの手足を自由にしようとしたが、時間は迫っていた。岩がますます近づき、その重さで二人を潰す準備が整っていた。


アルギスは恐怖に目を見開き、目の前の若者がどれほど恐ろしい存在であるかをようやく理解した。絶望が彼の声に忍び寄り、部下たちの命を助けてくれと懇願した。


「お願いです、ミスター・ソル…」


彼の言葉は途切れ、ソルの灰色の目と目が合ったその瞬間、ぞっとするような気づきが彼に訪れた。


「人の目は魂の窓である」と言われている。しかし、アルギスがソルの灰色の瞳を見たとき、彼は何も感じなかった。感情も、同情も、ただの空虚だけが広がっていた。


それは、後悔を感じることのない者の目だった。命と死を等しく見なす者。感情のひとつもなく、自分の思うままに行動する存在。


その一瞬の中で、アルギスはただ一つ、否応なく納得せざるを得ない結論に達した。


彼らは間違った相手を挑発してしまったのだ。


彼は頭を垂れ、胸に重くのしかかる後悔に悩んだ。自分の行動、言葉、それらが全てこの帰らぬ場所へと導いてしまったのだ。


絶望が彼を飲み込みそうになったその時、突如として声が響き渡り、緊張を切り裂いた。


「ま、マスター・ソル!一度だけ聞いてくれ!」

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