ゲームタイム
うぅ…
目が覚めた。
確か、入学式から帰ってきた後すぐ眠りについたんだっけ。
時計を見るともう17時。
学校から帰ってきてもう4時間も寝てしまっていたようだ。
最初はちょっと横になるだけのつもりだったのに、いつの間にかかなりしっかり眠ってしまった。
しかしそのおかげか、寝不足な感じは全くなくなった。学校でいろいろあった気もするが、今はもう気にならない。
スーッと大きく息を吸う。
「よし、ゲームするか...」
布団から起き上がり、家の階段を下りていく。
台所の冷蔵庫の中からコーヒーを取り出して、コップに注ぐ。
それをもってまた階段を上り、もうしばらくは外の世界と関わらないつもりでガチャリと自室のドアを閉めた。
キーボードの適当なキーを押し込みPCのスリープを解除。
ウィーン!と言ってPCのファンが回り始め、モニターが明るくなる。
LoLのクライアントを起動し、流れるように プレイ から ランク(ソロ/デュオ) を選択。
インキューを入れる。
ゲームの時間だ。
◇◇◇
ジャキーン!!
数分するとマッチングが終わった。
画面上に現れた【承諾】のボタンを迷わず押し込む。
まずはバンピック。
ロビーに入った瞬間、ロールを確認し、まずはTFを見せピックする。
俺はTF以外のキャラクターをプレイする気はない。
バンはいつもゼドだ。
あのキャラにはいつもよくわからないままキルされるから苦手だ。
スモルダー... エズリアル... グウェン...
上の人から順にピックが進んでいくのを眺める、TFが他のプレイヤーに取られることは滅多にない。
自分の番が回ってきたら即TFをピック。
ジャキン!と効果音がなる。
対面に合わせてルーンをセットし終わったころ、全員のピックが完了しいよいよ試合が始まる。
ロード画面に入ったのでプレイヤーカードを見ていくと、なんだかエメラルドの人が多い、ダイアは俺だけだ。
そのまま何となくサモナーネームを眺めていると、奴の存在に気がついた。
「うげぇ、じゅっしょく...またこいつかよ」
また十色がいる、しかも今日は味方だ。
いっつもいっつも暴言を吐いて回る悪魔。また今日もこいつの横暴に耐えながらゲームをしなくちゃいけないのかよ。
ミュートするのはなんか嫌なんだよな...。
しかしコイツは態度こそ悪いものの、トロールしたりはしない。
まあ一緒に頑張ろうか...
ヴゥオ〜ンとネクサスの起動し、バンバンバン!と効果音が鳴る。
5人のプレイヤーが操る、5体のチャンピオンが泉に召喚された。
ドランリングとポーションを2つ購入して...と。
泉のバリアが消え、一気にプレイヤー達が一気にサモナーズリフトへと流れ込んでいく!
それぞれが各々の担当するレーンの近くまで走り込んでいく。
俺はまっすぐ進みミッドレーンのタワーに到着した。
俺はいつも、1分30秒になってミニオンウェーブが流れてくるまで、このままマップの真ん中で仁王立ちする。
本当はラプターや青バフ側のジャングルなどに敵がレベル1でインベードしてこないようにジャングルの入り口に立つのが良い。
しかし、俺はそうしない。毎試合毎試合、最初の1分はミッドの真ん中に王者のように立ち尽くす。
なぜかって?
俺がミッドレーナ―だからだ。
tabキーを押して他のプレイヤーが選択したチャンピオンやルーンを達観していく。
こっちの見方はグウェンにマスターイー、エズリアル...。
後半戦にダメージがますチャンピオンだな。
まじで弱そうな構成...。
まあいい。
今回の俺の対面は...
どうやらビクターのようだ。
ツイステッドフェイト対ビクターか。
俺が使うツイステッドフェイトは序盤のレーンがかなり弱いチャンピオン。
最初は耐えて、レベル6から使える特殊なウルトを使って戦うキャラクターだ。
ビクターもそこまで序盤に強いキャラクターではないが、ツイステッドフェイトとは全く異なる特徴を持つ。
ビクターはキルこそ狙いにくいものの1v1だけで言えば最初のレーンフェーズからかなり強いのだ。
俺にとって何より問題なのはその射程距離の差だ。
レベルが上がるまではAAぐらいしかやることのない攻撃射程の小さいTFの場合、ビクター側が上手くやれば全く攻撃の機会がもらえないことにもなりかねない。
だからこれはどう考えてもTFが不利なマッチアップだ。
しかし俺はツイステッドフェイトだけをプレイし続けてきたOTP、そこら辺の奴とは一味違う。
そう簡単に俺は倒せないよ。
「ミニオンが出撃しました」
1分を過ぎた頃、そうアナウンスが響く。
それから20秒ほど経つとミニオンがミッドレーンに流れて来た。
レーニングの開始だ。
相手と自軍のミニオンがぶつかったその瞬間、俺はすかさず出来る限りAAをミニオンへ入れていく。
敵のミニオンの数を減らし、レーンをプッシュした状態を作り出すためだ。
レーンをプッシュする事はレーンで勝つのに最も重要な要素の一つ。
レーンを押した状態を作ることでレベルを少しだけ先行してあげることができるからだ。
ほんの少しの差、しかしその差を俺は誰よりもうまく利用できる。
俺が出来る限り最大効率でAAをミニオンに入れているとビクターが前に踏み込んできた。
奴はQのスキルを俺に撃とうとしているらしい。
俺はミニオンにAAを入れる手を緩め、少しだけ後ろに下がりビクターと距離を開ける。
ビクターが俺にQを使おうとさらに前に出てきた。
体力を減らされたくはないが、どこまでも後ろに下がるわけにはいかない。
俺は甘んじてビクターのQのダメージを受け入れた。
ビシュ!と俺に機械のブーメランが飛んでくる。
「いてて... しかしこのぐらい大丈夫。...うん?」
俺にQを打ったビクターは、その後の強化されるAAを俺に入れようとさらに前に踏み込んできた。
ビクターの強化AAはかなり強いダメージを持っているので絶対に当たってはいけない。俺はさらに下がった。
しかし絶対に当たってはいけないそのスキルを絶対に当てたいというのもまた当然な考えか。
ビクターはさらに俺に向かって前に出てきた。
それは、前に出すぎだぜ!
俺はWスキルを取得して、黄色カードを瞬時に選び出した。
前に出てきたビクターの強化AAを受け入れる代わりに、すきを見計らってそれを投げつける。
前に出ることは当然、自分を危険に曝すことにもなる。
そしてこの場合ならミニオンアグロだ。
いろいろ要因はあるがlolにおいて、敵のミニオンに狙われているときはおとなしく下がるべきだ。
それなのにビクターは強欲に前に出てダメージトレードを持ち掛けてきた。
狙い通り強化AAができてうれしいか?痛い目を見せてやる。
黄色カードによって足が止まったビクターにミニオンがぞろぞろ集まりさらに殴り掛かる。
俺も追加でAAを入れてダメージを補助。
ビクターのヘルスが合計で3程減った。対して俺のヘルスは2割ほどしか減っていない。
よし!
直ちにキルには繋がらないが、少しでも前に出てくることのプレッシャーを感じさせることが出来れば十分。
有利なダメージトレードに加えてこれでビクターは数秒のクールダウンの間Qを使用できない。
いくら射程差があってもスキルが上がっていなければ全くの無意味。
俺はすかさず再び前に出てミニオンを殴りまくる。
相手はミニオンへAAを入れる意味もよく分かっていない。
不利なマッチアップにも関わらずレーンが開始して10秒、この時点で既にレーンの主導権は俺に傾き始めていた。
2ウェーブ目が到着し、最初の前衛ミニオンをクリアする。
相手のビクターより数秒早くレベル2になった。
Eをとってさらに相手のミニオンを削る。
相手のビクターも少し遅れてレベル2になるとEのビームのスキルを取ってハラスをしてきた。
ビーっと俺の足元にレーザーが放たれヘルスが減る。
だが問題はない。
デスレイは避けにくいスキルだが、当たっても大してヘルスは失われない。
だからデスレイの事はあまり気にせずレーニングをして、ジャングルにガンクされたらデスしてしまいそうになったぐらいでリコールすればいい。
なにより今、俺にはレーンの主導権がある。
主導権を利用すればある程度任意のタイミングでウェーブを押し切ることができるので、それでリコールしてTPで戻ってくれば、一切のロストなく、アイテムやポーションを持って、さらに差がついた状態でレーンが続ける事が出来るのだ!
それからしばらくレーンを続け、レベル4になった頃、ヘルスが減ってきたので俺はスキルを全て使ってミニオンをクリアしてリコールした。
ダークシールとブーツ、詰め替えポーションを購入してレーンに戻る。
敵のビクターはヘルスがまだ6割近くあり、TFのダメージの無さを考えればまだ全くキルラインに入っていないのを良い事にリコールをせずレーニングを続けた。
リコールを挟んだことで遥かに余裕のある俺は、そこからさらに楽にレーンを押し続ける事が出来た。
試合時間6分を過ぎたころ、リバーで味方ジャングルのマスターイーがヴォイドマイトをめぐって争っているのがマップに見えた。
レーンの主導権を保持し続けていた俺はビクターより素早くリバーに寄って、フラッシュインから敵のジャングルの顔面にイエローカードを投げた。
【敵を倒しました】
アナウンスが響く...
完璧に作り上げられた戦術の元で、
不利なマッチアップなどものともせず、
レーンを支配し、ゲームの全てをコントロールする...
それが... 俺のLeague of Legendsのスタイルだ!!
「フハハハハ!弱い弱い!エメラルドなど弱すぎる!!基本的な事すら分かっていないじゃないか!!」
勝ったな、この試合も。
これで何連勝だ?たぶん10連勝はしている。
このままチャレンジャーまで行って、あの「村瀬といろ」とかいう女もビビらせてやるか。
【味方が倒されました】
うん?
不穏なアナウンスが響いた。
ミッドの有利から俺がキルを生み出したが、代わりに他の場所で味方が死んでしまったらしい。
まあ全てが上手くことはないのがリーグオブレジェンドだ。
味方とかいう存在に関しては、ミスしかしないものだと思っておくぐらいが丁度いい。
いちいち気にしていても仕方ない。
大丈夫、この試合は俺がキャリーするから...
シュシュシュ!(効果音)
え?
な、なんだ?
誰かがチャットをする音が聞こえた。
十色 (グウェン): なんでトップこねぇんだよ
チャット欄を見てみると、十色が切れていた。
死んだのはグウェンだった様だ。
十色 (グウェン): ダイブ出来ただろ
十色 (グウェン): まっすぐ来いよ
あらあら。
まっすぐ来いって…
でもジャングルのマスターイーは俺と2人で敵のジャングルと戦ってたし、ちゃんと働いていた。
逆ギレな気がするけど、、、。
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
ファーン!ファーン!ファーン!ファーン!とグウェンがマスターイーの上に?ピンを連続で炊きまくった。
おいおいおいおい!
全く本当にうるさいやつだな!
味方を煽ってもいいことなんて一つもないだろ!
いや、負けてる時にイライラしちゃうのはわかるんだけどさ。
と、とりあえず落ち着けって。
大丈夫だから、この試合は俺がキャリーすr、、、
【味方が倒されました】
…あ、あれ?
また味方死んだな。
勘弁してくれよ!ミッドめちゃくちゃ順調なのに!
一体今度は誰が死んだんだ?
そう思って味方のアイコンを見ると今度はマスターイーが灰色になっていた。
どうやら俺と一緒に敵ジャングルを倒した後、ヴォイドマイトを瀕死で触っていたところをグウェンをソロキルしたまま降りてきた敵のトップに襲われてしまったらしい。
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
ファーン!ファーン!ファーン!ファーン!
十色がここぞとばかりに?ピンを大量に炊いてマスターイーを煽り散らかした。
さらにチャットが続く。
十色 (グウェン): このジャングルバカすぎ
十色 (グウェン): こっちはめちゃくちゃ上手くやってたのに
煽りすぎだって!バカは言い過ぎだって!
っていうか、めちゃくちゃ上手くやってたってなんだよ!
めちゃくちゃ上手かったらソロキルされないだろ!
勝手に負けて、勝手にチャットを荒らすなー!
まじで頼むよ、、。
俺、この試合普通に勝ちたいんだけど…
しかし、そうは言っても俺はまだまだ落ち着いている。
十色は見かけるたびにチャットやピンで炊きまくる本当にサイテーな奴だが、それでもトロールしている所だけは見たことがない。
その辺に関しては俺は十色の事を信頼さえしている。
こちとら真面目にやってくれればそれでいいんだ。
まあ、相手のトップがちょっと育ってしまったが、集団戦の時は俺が黄色カードを投げて動きを止めることができる。
大丈夫、この試合はおれが、、、
おい、待てよ…
状況を整理するためにマップを見ていたその時、俺は異変に気がついた。
明らかに変な動きをしている奴がいた。
その異変が起こっているのはグウェンではない、マスターイーだ。
彼はリスポーンするやいなや、トップに向かって走り始めた。
トップのジャングルキャンプは何も残っていない。
ヴォイドマイトももう敵にとられた。
トップサイドにジャングルが向かう理由はもう何もないのだ。
それなのに、彼はトップへ向かって走っていた。
もっと正確に言えば、トップレーンを走っていた。
まっすぐに、まるで自分がトップレーナーであるかのように…
おい。
おいおいおいおい!
マスターイーは、そのままグウェンの元まで走り切ると、まずは挨拶の代わりに、グウェンの目の前のキャノンミニオンにスマイトを使った。
やめろおおお!!
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
十色 (グウェン)は敵を見失いました
なにが起こっているのか本当は分かっていた。
それでも?ピンで抵抗する十色。
しかし勿論、その程度の抵抗でイーが正常に戻ったりはしない。
Qを使い、Eを使い、そのウージュースタイルの真髄によってマスターイーはトップのミニオンを奪い食べ尽くした。
うわあああああ!
負けだ!
終わったこの試合!
俺、、、頑張ってたのに、、。
グウェンの対面にソロキルされた上に、グウェンに煽られたマスターイーが切れて、トロールを始めた。グウェンのものであるはずのトップのミニオンを苛立たせるためわざと奪っている。
もう、、だめだ、、。
5人というただでさえ少ない人数でやるゲームなのに、1人ふざけていたらほぼ確実に負ける。
もし他の場所が一人で全てを破壊できるぐらい育っていたらトロールがいても勝てることはあるが、TFじゃそんなことできないし、残念ながら逆サイド、ボットのエズリアル君も既に1デスをしていて負けているところだ。
(エズリアル): しょうもな
そのエズリアルがマスターイーがトロールを始めたことに気づいて、ポツリとチャットをした。
しょうもないよそりゃあな!
俺だってそう思う!
でもお前だって負けてるだろ!
俺は勝ってた!
ミッドは全てが俺の手のひらの上だったのに!
別にトップとボットが両方負けようが俺はキャリー出来た!!
なんでトロールまでするんだよ!!
(エズリアル): AFKしていい?
エズリアルがまたチャットをした。
なんだコイツ!ムカつくな!
まるで自分はかわいそうかの様に!
他レーン全負けにトロール...。
この最悪なチームに文句を言えるのは俺だけだろ!
ああもういい!チャット制限されようが構わない。
俺だって言いたいこと言ってやる!
こうなったらもうチャットファイトだ!
どうせもう負けるゲーム、タイピングの練習でもしてやるぜ。
我が怒りは、止められん!!
トランプマン(ツイステッド・フェイト): おまえだってレーンまけてるだろ
トランプマン(ツイステッド・フェイト): もんくいっていいのおれだけだろ
俺はエズリアルに向かってチャットした。
怒りのままチャットしているので上手く漢字に変換できない。
だが関係ない!
(エズリアル): お前だって負けてるじゃん
エズリアルが言い返してきた。
は?負けとらんですが!?
俺は最ッッッ初から完璧な戦術の上、レーンをプッシュし続け…
あ、
この時ふとスコアボードを見たら俺とビクターでCS差が10ついていた。
プッシュすることに集中するあまり、ラストヒットが疎かになっていたようだ。
っていうかそもそも俺はミニオンのラストヒットを取るのが苦手だ。
だが、そんなことはあんまり関係ない!
俺はレーンをプッシュし続けてチームの役に立っていたのだ!
ミッドとしてはビクターより全然俺の方が上手くやっていたんだ!
俺はすぐに反論しようと再びチャットを開いた。
でも、よく考えたらそんなこと理解してくれるはずない。
どれだけミッド的にうまくやっていても、傍から見れば俺はただの1アシスト10CS負けの微妙なレーナ―だ...。
くそぅ!!
はぁ、、って言うか何で俺はエズリアルとチャットファイトしてるんだ。
こいつも気に入らないが、実際俺たちはただの被害者。
1番悪いのはトロールを始めた最低なマスターイーだけど、より文句を言いたいのは、性懲りもなく今回も暴言を吐きだして、無駄にチームの輪をかき乱したあいつだ。
トランプマン(ツイステッド・フェイト): じゅっしょくがうるさすぎる
トランプマン(ツイステッド・フェイト): まじでよくバンされないよな
俺はそう十色の事をチャットで殴った。
ここはリーグオブレジェンズ、気に入らない奴は殴りまくりだ。
こいついつもいつも態度が悪すぎる!
ミュートしたこともあるけれど、よくマッチングするからいいたまに気になって外してしまう!
その結果いつも後悔させられるな!
マスターイーもクソだが、こいつが一番悪い!
じゅっしょくは、、、マジで、、、、
(エズリアル): じゅっしょくwwwwwwwwwww
エズリアルが唐突にそうたくさん草をはやした。
え?
なんだこの反応。
うん?
草、生やしすぎだろ。
何が、、おも、、し、ろいんだ?
少し考えてみたけど全く分からない。
(エズリアル): そうだねぇwwwwじゅっしょく君が悪いよねぇ
(エズリアル): じゅっしょくね、じゅっしょく
(エズリアル): TF君はとりあえず、お勉強してこようかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
な、なんだこいつ。
キモ。
確かに俺は勉強しないが、でも何が面白くてこんなに煽ってる感じでチャットしてくるんだ。
この感じ、、、。
もしかして、十色の読み方って”じゅっしょく”じゃない?
そ、そんなことある?
まじか、それは、、ちょっと恥ずかしいかも。
なんだっけ、これの読み方、、、
俺はバックグラウンドでブラウザを開いて、十色と検索をかけてみた。
1番上に【十人十色とは?】と言う辞書サイトのページが出てきたのでとりあえずそれを開く。
その読み方はすぐに出てきた。
十人十色の読み方は”じゅうにんといろ”らしい。
あれ、、じゃあ十色の読み方は、、”といろ”??
そんな... 昔からずっと間違った呼び方してたな...。
いやいや待て待て。
いや別に絶対じゅっしょくって読んでもいいだろ!
確かに俺は十人十色も知らなかったら”じゅうにんじゅっしょく”って読んでただろうけど... でもそれは関係ない!
でも別に「十色」を”といろ”と呼ぼうが”じゅっしょく”と呼ぼうが絶対どっちでもいいだろ!
絶対こんなにバカにされることじゃない!
俺はそう思って、今検索をかけて知ったことをまるで元々知っていたかのような振る舞いで、エズリアルに対しチャットで反論することに決めた。
チャットを開いて打ち込む文字を考える。
「じゅっしょくでもいいだろ別に...」
いかにも冷静な感じで、そうチャットすれば、むしろ草をはやしすぎたエズリアルのほうが恥ずかしくなるだろう。
相手はどうせちょっとことわざに詳しい小学生とかだ。
冷静に冷静に、顔真っ赤に思われないように...。
といろだなんて読めるぐらいでそんな調子に乗るんじゃ...
ふと、頭の中で何かが引っかかった。
といろ?
それはなんだか聞いた事がある響きだった。
チャット欄にタイピングする。
しかしエズリアルにバカにされたままではいられないと文句を言うはずだったのに、俺は何か違うことを入力し始めていた。
“といろ”それは名前だった。
今日入学式の日にあった少女の名前だ。
俺のゲームIDを教えた途端、急に冷たく態度が豹変した美少女の名前。
トランプマン(ツイステッド・フェイト): 村瀬?
俺はただそれだけチャットをした。
チャットファイトの中、突然「村瀬」とか発言するのは誰がどうみても変だ。
エズリアルは勿論意味が分からず言い返してなどこない。
他のプレイヤーたちもそうだ。
誰も意味がわからないのならそれでもよかった。
でももし意味がわかるのなら、、、。
俺はただ確かめたかった。
これで何かしらの反応があるのなら、今日、学校で起こったことの説明ができるから。
試合はそれから暫く続いた。
マスターイーはトップに粘着するのに飽きたのか、明確なトロールでバンされるのが怖いのか、その後は適当に敵のジャングルに入っていって、見つけた敵に斬りかかっては死ぬだけのボットになった。一応試合に半身くらいは参加している具合だ。
マスターイーが20デスする横で、俺とエズリアルは意外といいプレイを最後まで続け、試合を長引かせた。
結局30分にエルダーとバロンのバフを同時にとられ馬鹿な力押しで終わった。
トロールが沸いていた割には意外と善戦したといえる。
ちなみにグウェンは、俺のたった一言のチャット以降、打って変わって借りてきた猫のようにただ一つのピンもチャットもしなくなった。
そして、最後まで真面目そうにプレイしていたわりに、やたらと簡単なミスを連発していた。
数人程度呼んでくれている人が居そうなので予告します。
普通の小説を書いているのでこの作品の更新はとても遅くなります。
速くて1ヶ月後です。
話はまだ先まで考えてあります。
評価やブックマーク?なろうのシステムがよくわかっていませんがそう言うのが一つでも付いたらもう少し頑張ります。
もし楽しんでくれている方がいるのなら是非よろしくお願いします。