学校終わり
「うーん」
初めての学校からの帰り道。
トボトボ路面を見ながら一人呻く。
(あれ、何かミスったかな?)
LoLという同じマイナーなゲームをプレイしていることを知って、積極的に話しかけてくれた村瀬といろ。
しかしある瞬間、突然表情を変え、避けるように教室から出ていった。
それは俺のゲーム内での名前を伝えた瞬間だった。
あの時村瀬さんが見せた嫌悪するような顔。
ま、まさかやっぱり…
「"トランプマン" ってIDがダサ過ぎたか…?」
そうかもなぁ。
どうせTFしか使わないし、面白いかなぁと思ってかなり昔につけた名前だったけど、どう考えてもダサいよなぁ。
トランプマンて...
如何にもオタクが使ってそうな名前じゃないか。
でも実際オタクだしななぁ...。
彼女が俺のIDを知った瞬間に顔色を変えた理由、どれだけ考えても他には見当たらないしそうなのだろう。
沸々と湧き出る後悔の念。
ああ、俺は一体何があってこんなにダサいIDにしてしまったんだろう...
せっかくあんな美少女と仲良くなれるチャンスだったかもしれないのに...
それから、帰り道の間はずっとそんな事を考えていた。
しばらく歩き続けると、自分の家に到着。
制服を脱いで、手を洗ったりなどする。
リビングの椅子に座りながら、少しリラックス。
そしてまたさっきのことを考える。
色々悩んではいるが、まだ高校生活も1日目が終わっただけだ。
休日を挟むので、彼女とまた会うことになるのは三日後か。
今日で何となく拒絶されてしまった気がするけど、まあまた3日後に会えば違った感じで話せるかもしれない。
そもそも全部俺の気のせいか、考えすぎなことだってあり得る。
もともとああやって話の途中でスタスタどどっかへ行ってしまうタイプの子なのかもしれない!
それはそれで嫌だけど...
今度、隙があったら俺の方から声を掛けて確かめてみよう...。
まだ始まったばかりの高校生活、挽回するチャンスはこれからいくらでもあるだろう。
なんたって彼女はすぐ後ろの席。
とにかくいつまでもくよくよしていても仕方ない。
「はぁ...」
ため息をつくのもこれで最後に決めて、俺は心を入れ替えた。
一旦LoLでもやるか。
俺は自分の部屋に戻った。
すると窓から入ってきた太陽の熱がこもり、部屋の中が心地よさげに暖かくなっているのを感じた。
ゲームをやりたい気持ちがありながらも、俺はここで朝から寝不足だったことを思い出す。
まずは少し、布団の上に横になるか...。