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代表作 エッセイ

説明が長いほうがわかりやすくて面白い小説になるのか

 前に『説明と描写』というエッセイを投稿させていただきました。


 その時に、「説明と描写は同じものだろう」「描写は説明に含まれる」みたいな反論があり、そうなのかな? そうなのかも? と、しばらく考えていたのですが、やはり両者は別のものだという結論に個人的に至りました。


『まったく別のもの』ではなく、確かに描写が説明に含まれる場合も多いですが、『何も説明してない描写』というものもあると思いました。




 説明のために、山村暮鳥さんの詩『風景 純銀もざいく』を引用させていただきます。

 著作権は切れているので大丈夫です。大丈夫なはずです。(ドキドキ)


====


 『風景 純銀もざいく』 山村暮鳥



いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

かすかなるむぎぶえ

いちめんのなのはな


いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

ひばりのおしやべり

いちめんのなのはな


いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

いちめんのなのはな

やめるはひるのつき

いちめんのなのはな



====


 これは説明でしょうか? 描写でしょうか?

 私は『描写だ』と断言します。

 説明だとするならあまりにも情報が少ない。

 そのくせ浮かぶ情景は、詳しく説明されるよりも遥かに広く、生々しく、頭の中に浮かぶ。そんなように思います。


 そして何より、作者さんの言いたいことを、正確に理解する必要がない。

 ただ風景を眺めるように、自由に読んでいいんです。

 最後の『病めるは昼の月』で人それぞれに味わい方が違って、書かれている文字以上の情報が溢れ出してきます。




『説明』とは言葉を尽くして説明し、正確に理解させるためのもの。

『描写』とは何かを感じさせ、読者の中に、人それぞれの説明を自由に浮かび上がらせるもの。


 そう定義してみました。


 つまり『説明』とは論文や、あるいは文字通り説明書の文章です。

 それに対して『描写』とは、絵画や音楽のような文章といえるのではないでしょうか。


 上の山村暮鳥の詩を説明するとめっちゃ短い一文で済むような気がします。


 逆に三好達治さんの『雪』なんかを説明すると、本文よりも長くなるかも?



====


 『雪』 三好達治



太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。



====



 これも『描写』だと思います。

 情景を説明してはいますが、説明というにはあまりに言葉が足りず、理解を求めていません。


 この詩を説明にしてみましょう。



====


 『雪』 作:三好達治 説明:しいな ここみ



 太郎は5歳。なかなか寝つかず、お母さんを困らせていた。外では雪が降りはじめた。屋根に雪が降り積もる静けさと、お母さんが側にいる安心感とで、太郎はようやくすやすやと眠った。

 時代は昭和である。太郎といえば長男、次男といえば『次郎』という名前が定番だったようである。

 太郎の次に、作品には次郎が登場する。しかし二人は別の家に暮らしている。それぞれの家の屋根に雪は降り積もっているのだ。ゆえに二人は兄弟ではない。

 次郎も同じく屋根に降り積もる雪と、彼の母親の子守唄にすやすやと眠る。このような光景、読者諸氏は『良き!』とは思わないだろうか?



====



 これが『説明』だと思います。

 作品の解説としてはアリだと思いますが……

 これがもし『雪』という詩だとしたらぶち壊しだと思います。

 なぜなら味わい方を指定されているからです。風景を楽しむように味わうことができないからです。




『説明』は理解するもの、『描写』は理解できなくてもいいから味わうものなのだと思います。




 なろうに投稿されている小説を読んで、私がたまによく感じていることは、『説明が大部分の作品、結構多いな』というものです。


 味わう隙間もなく『世界観の説明』『登場人物の境遇の説明』『登場人物の心境の説明』『この作品はこういう価値観で書かれているという説明』──そんなもので埋め尽くされている小説を結構見ます。


 好きに感じさせてよ……と、思ってしまいます。


 共感するひとは多いらしく、そういう方々には『うんうん』『なるほど』『作者さんが言うとおり、このキャラひどいよね!』となっていいみたいですが、


 私、宇宙人なんです。


 共感が苦手なんです。


 自由に読めるように書いてある山村暮鳥さんの詩を『これはこういうことなんだよ。こう読んでね。こう思わないとダメだよ』と言われてるようで、窮屈に感じてしまいます。


 わがままでしょうか……。





 説明で書かれた小説のいいところは、何よりわかりやすいことでしょう。


『太郎の屋根に雪〜』とか言われても「……で?」となるところ、説明されれば「ああ、そういうこと?」とわかります。

 でも、それだと読者は好きに読めない。

 誤読さえできない。




 作者の存在のあり方みたいなのも、『説明』と『描写』の違いだと思います。


『説明』はとにかく作者が出しゃばって解説をします。

『描写』は作者が消えて、風景がただ広がります。





 私は『描写』で書かれた小説のほうが好きです。もちろん説明もしてもらわないとわかりにくいですが、基本的には好きにその世界を読ませてほしいほうです。


 でも、なろうではなんとなく、説明で書かれた小説のほうが持て囃されてるような気がします。

 わかりやすいから?



 詩ジャンルの作品でも、『これはこうこうでこうだから私はこうだ』みたいな説明の詩が多いように思っています。


 わかりやすいほうが面白いの?






異論、反論、説教、★1、なんでも受けつけます。カモン!(๑•̀ㅂ•́)و✧


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― 新着の感想 ―
説明と描写に関してはこの通りだよね? 同じだと思ってる人はまず辞書を引いてみよう。 小説については………ワタシも説明系になりがちかな? 詩なら 描写 > 説明 でいいと思うんだ。それをどう捉えてくれ…
[一言] なろうでの言ってるなら受けなくなる。 何故なら”答え”を求めてないから。 ここに集まるのは”作者の気持ちを考えなさい”の設問が嫌いな人たちがメイン。 自分の好き勝手に受け取ることが重要な人種…
[一言] 感覚的には結構違うんだけどなかなか。 なろう底辺なんかはマニュアル風小説って揶揄されることもありますね。
2023/12/24 10:26 通りすがり
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