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悪意のある普遍的な思想

螺旋の呪い

作者: レー・NULL

 首をくくれど飛び降りることは出来ず、手首を斬れど風呂には沈めない。一体どうしてこうまでして縛られなければならないのか、決して安息に眠る事が出来ない。人にとって一番の不幸は、未知と苦痛に対し、恐怖を知ってしまった事だろう。


 失う事を夢見るだけ、もう既に何もかもが失われるものと気づいていても、虚像に縋られ前に進めない。どうして刻々と今は既に無いのに、今を失う事が怖いのか。どうして刻々と過去が積みあがるのに、未来があるのだと信じるのか。


 もう何もかもがめちゃくちゃだ。腐りが怖くて、海も怖くて、月さえ怖い。訳も解らず歩けない。未来が怖くて、痛みも怖くて、心音さえ怖い。いっそこの願望に任せて破滅できるなら、どれほど幸福な事だろうか。


 一体誰が理解してくれるだろう。このどうしようもない虚無感を。いったいどれほどの事をすれば意味は生じるのだろうか、きっとその時は来ないと確信しているのに。全てはただ、そうあるだけなのに、どうしてここまでに意味があってほしいのだろう。


 まるで、手足が腐っていくような感覚だ。所詮は死者の夢と逃避しながら生きている。それでも、脈を感じる度、恐怖はかえって来るだけ。身体の腐る妄想と、左半身の痺れと、明確な痛み。解ってはいるけれど、まだ夢にはならないらしい。


 どうせ意味なんて無い。どれだけ吐き出しても、誰にも理解などされないのだから。どうせ理解されないのならば、口を塞いで、全てを隠してしまえば良い。見えない姿が、いつかは本当に腐る事を願いながら。


 今を生きているのは、納得して死ぬ為だ。恐怖から逃れるために、ただ前進しなければならない。しかし、既に確信もしている筈だ。どれだけ言い訳を連ねようと、未知と苦痛は決して逃さない。


 人にとって一番の不幸は、未知と苦痛に対し、恐怖を知ってしまった事だろう。生きている限り怖いだけ、怖いからこそ生きるだけ。

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