第4章ー③
「あとは……あっ、ライトの魔道具も買っておかないとな」
夕飯の買い出しを終え、エリカさんから渡されたメモをもう一度確認する。残っているのは照明用の魔道具だけだ。幸い、魔道具は村の道具屋で簡単に手に入る。自分はそのまま足の向きを変え、道具屋へと向かった。
この世界では、家電の代わりに魔道具が日常生活を支えている。電気の代わりに魔力を特殊な器へ封じ込め、それを消費して機能を発揮する仕組みだ。便利ではあるが、寿命が短いのが難点で、照明用の魔道具もせいぜい一週間ほどで使い物にならなくなる。おそらく、器に蓄えられる魔力量に限界があるのだろう。電池のように簡単に交換できればいいのだが、この世界の文明はまだそこまで発達していない。もっと大きな都市なら事情は違うのかもしれないが。
リーヴ村は、ドレーカ村ほどの辺境ではないにせよ、やはり田舎の部類に入る。人口も面積もそこそこあるが、外部との情報の流通が極端に遅いのが最大の欠点だった。他の村で起きた出来事や、王都での政治の動きなどは、かなり時間が経たなければここまで届かない。
新聞は一応存在する。だが、配達は週に一度だけ。つまり、外の世界を知る機会は週一回しかないということだ。その内容も、魔物の出現情報や冒険者向けの依頼募集が大半を占めており、一般的な社会情勢や国の動きなどはほとんど載っていない。
最近知ったニュースといえば、都会ソワレルで何かの式典が行われたらしい、という曖昧な情報くらいだ。内容までは誰も知らない。エリカさんに尋ねても「さあ……王都関係の行事じゃないかしら?」と首を傾げるだけだった。
大人ですら国の行事を正確に知らない。
――この世界、本当にこのままで大丈夫なのか?
そんな不安が、時折胸をよぎる。
「……ま、とりあえず、さっさと済ませるか」
考えても仕方のないことを頭の隅へ追いやり、照明用の魔道具を買うため、コンビニほどの広さの道具屋へと足を踏み入れる。この村でも一、二を争う規模の店で、生活用品から簡単な魔道具まで幅広く扱っている。
「ありあっとざいやしたー!」
店を出るとき、店員の元気な声が背中に飛んできた。
「よし、これで買い物は全部オッケー。特に寄りたい場所もないし、帰るか」
この店にももう慣れきっており、目当ての商品はすぐに見つかる。店員との会話も最低限で済むため、入店してから五分も経たないうちに外へ出ていた。
無事に用事を終え、帰路につこうとした、そのとき――
「ん?」
村の奥の方から、なにやら騒がしい音が聞こえてきた。




