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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
3章 逆襲編

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第3章ー23

 「うらあぁぁぁぁっ!!」


 「はぁぁぁっ!!」


 大型倉庫ほどの広さを持つ結界の内部。

 そこでは、もはや人の限界を超えた速度と力のぶつかり合いが続いていた。


 剣と槍が交差するたび、火花と雷光が散り、床が抉れ、空気が震える。

 時に魔法が炸裂し、炎と黒雷が空間を引き裂く。

 だが――互いの力量があまりに拮抗しているがゆえ、決定打は生まれない。


 時間だけが削られ、体力だけが磨耗していく。


 ――もう、三十分は経っている。


 どちらが先に崩れてもおかしくない。

 息をするだけで胸が痛み、腕は重く、脚は震え始めていた。


 「はあ……はあ……」


 「ふうぅぅ……」


 互いに距離を取り、呼吸を整える。

 汗が頬を伝い、蒸気となって消えていく。


 沈黙。

 張りつめた空気だけが、結界の内側を支配する。


 「んんん……本当はもっと殴り合いてぇがよぉ」


 ダークボルトが首を鳴らし、笑った。


 「ちまちま削り合う地味な戦いは性に合わねぇ。だから――」


 その瞬間。


 黒雷のオーラが、今まで以上に激しく噴き上がった。

 大気が唸り、床の石が浮き上がる。


 「ッ……まさか……」


 嫌な予感が、背筋を凍らせる。

 体力は消耗している。だが、魔力は――まだ底を見せていない。


 ならば、奴が選ぶ手段は一つ。


 「お互い、全力の一撃で終わらせようぜ!!」


 その言葉に、結界の中の温度が一段下がった気がした。


 魔法による一撃決戦。

 建前は“互いの誇りある決着”。

 だが本音は違う。


 ――黒雷天を、もう一度放ちたい。

 それが、ダークボルトの狙い。


 あの魔法を真正面から受けるなど、ほとんど自殺行為だ。


 「……いいだろう」


 「ッ!?」


 思わず息を呑む。

 勇者は――受けた。


 「……へっ!」


 ダークボルトが、不敵に笑う。

 罠に獲物が自ら踏み込んできたとでも言うように。


 まずい。

 この勝負、理屈で考えれば圧倒的に不利だ。


 奴は“全力”と言った。

 つまり、さきほどの黒雷天すら、本気ではなかった可能性がある。


 「俺も伊達に勇者を名乗ってるわけじゃねぇ」


 勇者が一歩踏み出す。


 「数えきれねぇ修羅場を越えて、ここまで生き残ってきた。来いよ。お前の全力――俺の魔法でまとめてぶち破ってやる」


 その声には、一片の迷いもない。

 死を覚悟した者の静けさではなく、勝利を疑わぬ者の確信。


 「はっ、面白れぇ!」


 ダークボルトの笑みが、狂気へと変わる。


 「■■■、●●、▲▲▲▲……」


 人の耳では理解できない魔族の言語。

 だが、その詠唱が危険であることだけは、肌で分かった。


 紅天画撃の周囲に、黒雷が渦を巻く。

 空気が焦げ、結界の壁が軋む。


 一方、勇者も詠唱を開始する。


 「紅き焔よ。炎天に轟く一振りとなり、界雷を吹き飛ばせ――」


 剣を下段に構える。

 刃から噴き出す炎は、もはや“火”の域を超えていた。


 床が赤く溶け、湯気が立ちのぼる。

 熱が肺を焼き、息をするだけで痛い。


 ――これが、勇者の全力魔法。


 「【黒雷天】ッ!!」


 「【昇炎天下クライム・ヘヴン】ッ!!」

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