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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
3章 逆襲編

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第3章ー15

 「がっ――!?」


 「サダメッ!?」


 ダークボルトの一撃が腹を貫いた瞬間、視界が白く弾けた。次の瞬間、自分の身体は宙を舞い、地面へと叩きつけられる。背にしがみついていたミオも巻き添えとなり、共に転がった。


 「ヒュー……ヒュー……ヒュー……」


 息を吸うたび、喉の奥から空気が漏れるような音がする。

 腹の内側が焼け爛れているように熱い。いや、熱いというより、灼かれている感覚だ。酸素が肺に届いているのかすら分からない。


 恐る恐る腹部へと視線を向ける。

 そこには、裂けたような穴が穿たれていた。

 溢れ出す血が草を濡らし、土に黒く染み込んでいく。


 ――これは、致命傷だ。


 「ほおぉぉ? 胸を穿ったつもりだったが、後ろへ跳んで即死だけは避けたか」


 ダークボルトが悠然と歩み寄る。まるで勝利を確信した捕食者のような足取りだった。


 まずい。

 このままでは、ミオまで殺される。


 「俺の紅天画撃こうてんかげきを躱そうとした根性は褒めてやる。だが、その傷は人間には致命だ。つくづく脆い生き物だな」


 「ぐっ……ごはっ……!」


 わずかに身じろぎしただけで血が喉を逆流し、地面へと吐き出される。声すらまともに出ない。


 ――ミオだけでも、逃がさなければ。


 「サダメ、しっかりして! 今、治すから!」


 ミオが必死に立ち上がり、両手を自分へとかざす。震える声で詠唱を紡いだ。


 「聖なる風の精よ、癒しの力を――【小さき癒しの温風リトルヒート】!」


 淡い光が舞い、温かな風が傷口へと触れる。だが、それは致命の裂傷を塞ぐにはあまりにも弱い。


 「ミ……オ……」


 無駄だ。

 今のミオの魔力では、この傷は癒せない。

 それどころか、魔力を使い切れば、彼女自身が次の獲物になる。


 ――逃げろ。生きろ。


 そう言いたいのに、言葉にならない。


 「私だって、サダメが生きてる限り、絶対に諦めないから!!」


 その必死な叫びに、視界が滲む。

 自分も、同じ言葉を胸に誓ったばかりだったというのに。


 「ほう……小娘、治癒魔法が使えるのか」


 ダークボルトの瞳が、獲物を見つけた獣のように細く鋭くなる。


 ――まずい。


 「いいぜ。治せるもんなら治してみろ。だがその前に――」


 赤い槍が、ミオの額へと向けられる。寸分の迷いもない殺意。


 「俺の紅天画撃が、てめぇの脳をぶち撒けるかもしれねぇがな」


 「や……め……」


 止められない。

 届かない。

 考える時間すらない。


 ――頼む。誰でもいい。

 神でも、悪魔でも、死神でも。

 どうか、ミオを――。


 その瞬間。


 世界が、止まった。


 ほんの一瞬の瞬き。

 しかし、その刹那の間に、目の前の光景は塗り替えられていた。


 「なっ……!?」


 そこにいたはずのダークボルト。

 だが今、彼の眼前に立つのは――見知らぬ男の背中。


 紅天画撃を、一本の剣で受け止めている。

 火花が散り、衝撃が大地を震わせる。


 ボロボロのマントが風に揺れ、顔は影に隠れて見えない。


 だが、その声だけははっきりと届いた。


 「遅くなってすまない」


 若い男の声。

 不思議と胸の奥に、安堵が満ちていく。


 「もう大丈夫だ。俺が必ず――君たちを助ける!」

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