第10章ー6
「ふー…ふー…」「?」なぜか鼻息を荒くして、目が血走っているギリスケ。
だが、後ろを向こうとする素振りはまるでない。
もしかしてこいつ、会話だけで妄想してるのか?
……それがありえそうなのが、こいつの本当に怖いところだ。
まあ、直接覗くよりは幾分マシだとは思うが……
「…ん?」そう考えていた矢先、さらに異変に気付く。
よく見ると、ギリスケの視線が右下を限界まで向けている。
つられてそちらを見ると、そこにはただ凍った地面があるだけ。
自分たちの姿がぼんやり反射しているだけで、特に興奮するような光景は——
「あっ」
……いや、ある。
反射した氷面に映っているのは、まさに今後ろで着替えている彼女たちの姿だった。この男、氷の鏡越しに彼女たちの着替えをガン見しているのだ。
いや、言葉で説明すると変に聞こえるかもしれないが、こいつがここまで興奮している理由がそれ以外に考えられない。確かに、視線をギリギリまで動かせば後ろの光景も“なんとか”見える範囲ではある。
とはいえ、彼女たちの姿が“ギリ”見えるかどうかといった微妙なラインでしかない。それでも興奮している。
執念が深い。そこまでして見たいのか、こいつ。
「油断も隙もねぇな、こいつ!!」
「うおっ!? 何すんだよ!?」
直接ではないとはいえ、覗きに変わりはない。
そう思った俺は、ギリスケの視界を手で覆った。
すると案の定、振りほどこうと激しく抵抗してくる。本当に隙がない。
「やめろ! 俺の楽しみを奪うな!」
「そんなことに神経使ってる暇あったら寝てろって…うおっ!?」
ギリスケの抵抗が一気に強くなり、俺は後ろに倒れ込む。
こんなところで無駄に体力を使わされるとは思わなかった。
とりあえずこのまま押さえ込めば——
「……あ」
その瞬間、後ろから殺気のようなものを感じた。
そこでようやく自分の状況を理解する。
後ろに倒れたということは、すなわち。
『あ、あぁ……』
「おろ?」
「おやおやぁ?」
「……」
視線を上に向けると、そこには全裸の彼女たちが様々な反応でこちらを見下ろしていた。
顔を真っ赤にして胸元と股間を隠すフィー、ぽかんと晒を持ったまま棒立ちのマヒロ、ニヤニヤしながら前のめりでこっちを覗き込むソンジさん。そして、無言で表情が読み取れないミオ。でも分かる。
あれは相当怒っている。いつもなら恥ずかしがって隠そうとするが、全く隠そうという気すらない。
長く一緒にいるからこそ分かる。この後どうなるかも。
「……あの、ミオさん? これは違くて、ギリスケが暴れてたから抑えようとしただけで——」
一応の弁明を試みる。
だが、彼女にはまるで届いていない様子。
しかもすでに右手を高く掲げ、風魔法を溜め始めている。
あ、やっぱり今回も駄目でしたか。ですよね。
「死ねー! 変態!!」
「ぐほっ!?」 「ぶほおっ!?」
案の定、溜めていた風魔法が俺とギリスケの腹に直撃。
内臓が飛び出そうな威力に、男二人は揃って撃沈した。
なんで毎回こんな目に遭うんだろうか……。




