第10章ー5
『うぅ……十六にもなって漏らしちゃうとは思わなかったよー。滅茶苦茶ハズい……』
「ま、まあ、あんな目に遭ったんだから仕方ないよ」
「そうそう。恥じることじゃないよ」
自分とギリスケが結界の外側を向いて座っていると、背後から女子たちの会話と衣擦れの音が聞こえてくる。どうやら着替えが本格的に始まったらしい。
本来なら監視に集中すべきなのだが、外側は今のところ変化なし。ギリスケも妙に大人しく、余計な動きをする気配もない。結果として、どうしても背後の声が耳に入ってしまう。
やましい気持ちは……たぶんない。
……ないはずだ。
それでも、まるで盗み聞きしているようで若干の罪悪感が湧く。耳を塞いでも会話はわりと鮮明に届いてしまうし、うっかり反応したり振り向いたりしないよう、必死に自制する。
「……ソンジさん、上は履いてなかったんですか?」
「ん? ああ。研究室で着替えようとしてたらどっか行っちゃってね。探す時間もなかったし、別にいっかなって。Aカップだからあんま気にしてないし」
「いや、気にしないとダメですよ!?」
……待て。
今、結構とんでもない会話が聞こえた気がするんだが?
しかしどうしたものか。
緊張が解けてきたのか、女子たちはわいわいと談笑しながら着替えを進めている。それ自体は別にいい。だが、内容が男子の存在を完全に忘れているレベルで自由すぎる。
というか、あの人……本当に着けてなかったんだな。
マジで冗談かと思ってた。
「であれば、拙者の晒、使うでござるか?」
「お? いいねー! 実はちょっと興味あったんだよねー!」
『あっ。なら私もやってみようかな? マヒロちゃん、巻き方教えてくれる?』
「おー! 二人が興味持ってくれて感無量の極み! フィー殿、拙者に任せよ!」
『やったー。ねー、せっかくだしミオもやってみない?』
「ええ? 私も?」
「こんな機会も滅多にないし、いいんじゃないかい? 皆でやろーよ!」
「じゃ、じゃあ今日だけなら……」
『いえーい! サラシガールズ結成ー!』
……いや、何が結成されてるんだよ。
背後から聞こえる楽しげな声。
衣擦れ。
はしゃぐ笑い声。
それらが全部、こちらの精神力を試す罠のように感じられる。
ぶっちゃけ、気にならないと言えば嘘になる。
だからこそ困る。
ここで少しでも意識を向けた時点で、男として負けな気がする。
しかも、この会話をギリスケが黙って聞き流せるとは思えない。
いつ暴走してもおかしくない。
――と思い、ふと隣を見る。
「……ん?」
ギリスケは微動だにしていなかった。
外側を見つめたままピクリとも動かない。
寝ているのかと一瞬思った。
だが、すぐに異変に気づく。




