表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
10章 迷宮~血戦編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

545/554

第10章ー2

 銀鏡の翼龍を打ち倒してから、どれほどの時間が経っただろう。

 肌に張り付いていた死の緊張が、ようやく少しずつ溶けていく。


 やつを討伐した直後、自分とマヒロは深い洞穴の底に取り残されていた。全身はまともに動かず、指一本すら思うように力が入らない。もしこのまま放置されていたら、戦いに勝った意味すらなくなるところだった。


 だが、上から差し出された一本のロープが、再び生への道を繋いだ。

 ソンジさんたちが協力して、慎重に、慎重に自分たちを引き上げてくれる。


 ――その間ずっと、頭の中は不安で埋め尽くされていた。


 ロープが切れたらどうなる?

 上まで持ち上げる途中で、誰かの体力が尽きたら?


 考えれば考えるほど、胸の奥が締め付けられる。

 戦闘中には感じなかった、別種の恐怖。


 「動けない」という事実が、これほどまでに心を弱らせるとは思わなかった。


 そういえば――と、ふと前世の記憶がよぎる。

 遊園地の絶叫マシンは大の苦手だった。

 安全だとわかっていても、身体を預けきる感覚がどうしても怖かった。


 今の状況は、それとは比べものにならない。

 安全保証などどこにもない、命を賭けた“委ねる恐怖”。


 それでも、ロープは切れなかった。


 ようやく地面に降ろされた瞬間、膝から力が抜けて座り込む。

 生きている。

 ただそれだけの事実が、涙が出そうになるほどありがたかった。


 ――それはさておき。


 救出が終わった後、自分たちはその場で休息を取ることになった。

 全員、限界だった。

 筋肉は悲鳴を上げ、魔力は枯渇し、精神は擦り切れている。


 この状態で無理に脱出を試みれば、次は本当に命を落とす。

 だからまず必要なのは、戦うことではなく“回復”だった。


 幸いにも、周囲に漂っていた魔力を帯びた冷気は消え去っていた。

 先ほどまで吐く息を凍らせていた寒さは和らぎ、肌に触れる空気は少しずつ人の世界の温度へと戻っていく。


 ――あの冷気は、銀鏡の翼龍が放っていたものだったのだろう。


 そう考えると、あの魔物は生きているだけで、この迷宮の環境すら支配していたことになる。

 改めて、自分たちが倒した存在の異常さに背筋が震えた。


 やつが消えたことで、迷宮を覆っていた氷も、やがて溶け始めるはずだ。

 壁に張り付いた氷柱はいつか崩れ、床の凍結もゆっくりと水へ変わる。


 それは、希望でもあり――

 同時に、新たな危険の兆しでもあった。


 氷が溶ければ、地形は変わる。

 通路は崩れ、落盤が起き、今まで安全だった場所が一転して死地になる可能性もある。


 だからこそ。


 その前に、ここを出なければならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ