第9章ーおまけ7
「なるほど。あの転移装置を通せばすぐ下に移動できるというわけか」
自身の居場所を把握し、皮肉にも彼女のやり方に関心してしまっていた。転移装置を利用すればわざわざ下の階を階段を使わずして通り抜けられるということ。タイムパフォーマンスとしては悪くない発想ではある。
「けど、せめて誰かに一言言ってくれればこんなことにならなかったというのに」
関心する一方、このことを教師に話していないであろうことに呆れてため息が零れる。教師に話していれば共有されているはずだが、恐らく彼女以外知り得ない情報であろう。
――コン コン
「ッ!? そうだ。今はこの音の正体を調べないと」
そんなことを考えていると、またもや奇妙な音が聞こえ、我に返る。今は彼女に対する不満を零すよりも音の正体を探らなければならない。気持ちを切り替えた彼は意を決して歩き出した。
「ん?」
壁端から歩き出して数歩歩いていると、足元に何かが引っかかる感触があった。何か布生地のようなものが落ちていた模様。それに触れた彼は、一度しゃがんでそれを拾い上げる。
「…これは?」
すると、歪な形をした布を拾う。水玉柄なのはいいとして、形状が丸型二つが細長に布で繋がっていた。一瞬なにかと考えるが、すぐに答えが出る。
「…もしかしてこれ、下着か? 彼女のもの、だよな。なんでこんなところに」
それは女性用の下着、ブラジャーであった。細長い箇所の先端にはちゃんとホックが付いているし、形状もそれで間違いなかった。ここは彼女しか出入りしていないことを考え得るに、十中八九彼女のものであると推測。
しかし、なぜ保管庫にそんなものが放置されているのかが疑問に残る。わざわざ保管庫で管理する必要があるとは思えない。
「んー。ここを更衣室として利用していたのか? いや、彼女のことだからわざわざ場所を移すような性格には見えないが。まあ、それはそれで問題だが」
ブラジャーを観察しながら色々思考を巡らせる。更衣室として利用している可能性も浮上したが、彼女は研究室だと白衣の下は基本的に下着である事が多い。それを何度も注意したことはあるが、いまだ改善されず。彼女にはどうも羞恥心というものが足りていないと度々問題視されている部分もある。
そんな彼女がここを更衣室にしているとは思えなかった。となると、
「…着替えしている最中に適当に着替えを放り投げたら偶々ここに落ちた、とか? うん、その方が想像つくな」
彼女の性格を鑑みるに考えられる可能性は、『着替え中に適当に投げた下着が偶々転移装置の上に乗って保管室に落ちてしまった』というもの。
彼女は天才である反面、色々雑な所も度々見受けられた。それゆえ、その可能性が容易に想像できてしまった。
「ったく。彼女の生活習慣にも口を出さないといけないとは。私は母親ではないんだが」
そんな彼女を想像して、今日だけで何度目かのため息が出る。説教する理由が一つ増えつつ、後々困るだろと思った彼は、彼女のブラジャーを回収するのであった。




