第9章ー76
「ぐっ!?」
魔妖によって飛ばされた自分の身体はやつのところまで一直線に突き進んでいく。しかし、あまりの速さで空気抵抗が激しく、息をするのも困難。顔も皮が剥げるんじゃないかと思うほどに激しく揺れている。ぶっちゃけ涙が出そうなほど苦しい。
「うおっ!?」
―――――!?
だがそれも束の間、気が付けばやつの頭上まで飛ばされていた。そこでちょうど上昇は止まっていた。本当にギリギリだったな。いきなり自分が上にきて銀鏡の翼龍も驚いている様子。
――――――――――!!
「ッ!?」
驚くのも束の間、銀鏡の翼龍はすぐに状況を理解し、自分を迎撃すべく自分に向かって威圧の咆哮を放った。こんな至近距離で叫ばれたら鼓膜が破れそうになる。
「くっそ!」
しかし、臆している暇など自分にはない。止まったということはすぐに落下が始まる。その前になんとかやつに一撃を与えなければ。
――――――――――!!!
そうこうしているうちにやつを足止めしていたロープが千切れていた。マズい。やつの身が自由になってしまった。
落ちつけ。やつと自分の距離は十メートル弱。ここからの落下速度を考えれば、やつに一撃を与える猶予はまだ残ってる。
問題があるとすればどの一撃を放つかだ。この距離で最大火力の火球は危険すぎる。しかもあのとき撃ったときの感覚を踏まえると、自分の最大火力でもやつを地上に叩き落とせるかどうか。
やつを落とすならやはり一番火力の出る火球・炎衝拳になってくる。
だが、さっきも言ったが、あの技は地上での踏ん張りもあって高火力が出る地上戦向きの近距離攻撃魔法。この空中ではいつも通りの威力が出せるとは思えない。
仮にやつの上に乗って足場を確保したとしよう。だが、この不安定な足場ではうまく踏ん張れる気がしない。
そもそも、これだけ頑丈な肉体を誇る相手にこの一発だけでダメージが通るかどうかも分から…
「…そうか」
ないなどと考えていると、ふと自分の発言に気づかされる。なんでこんな単純なことに気づかなかったのだろうか。完全にその発想が抜け落ちていた。
一発だけ。なぜ自分は一発だけと決めつけた。威力が大きいから? 威力の調整が難しいから? あれだけ練習をしたんだ。調整するだけならほぼ完璧にできるといっても過言ではない。今の自分なら出来るはずだ。
「一発でだめなら、二発打ちゃあいいだろ!」
ここに来て自分は新たな可能性を見出していた。今まで片方で打っていた火球・炎衝拳を、両方で打つ。それも同じ威力を同時に。




