第9章ー59
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銀鏡の翼龍は低空で空中停止しながら自分達を探している。視界もまだ復活していなくて小さい自分達を捉えきれていないのだろう。これは好機。
「抜刀! 【赤鬼】!」
先手を打ったのはマヒロ。今にも崩れそうな足場をものともせず、それどころか上手く足場を利用して銀鏡の翼龍のところまで一っ飛び。空中で魔妖を抜くと、それと同時に髪が赤色に変化する。
「はあっ!!」
魔妖を抜いた彼女は銀鏡の翼龍の首元に一撃。
――――――――――!?
すると、喉をやられ絶叫する。
マヒロが使った赤鬼は腕力を何倍にも強化するものらしく、それで振るった刀は殺傷力はなくなるものの、金棒のような破壊力を有するそうだ。文字通り鬼に金棒といったところか。にしても相当痛そうだ。
グググググ
流石のやつも動揺を隠せず、苦痛の声を上げていた。赤鬼とフィーの魔法で超強化された一撃だ。それなりにダメージは入って…
グルルルルル
「むっ!?」
「ッ!? 危ない、マヒロ!?」
いると思っていた直後、銀鏡の翼龍は自分達と反対方向に着地したマヒロの方に顔を向ける。あの一撃を食らってすぐに反撃しようとしているのか? つまりさっきの攻撃はあまり食らっていない、のか?
――――――――――!!!
慌ててマヒロに気を付けるよう促すが、さっきの攻撃がきたらマヒロでも避けきれない。現にやつは大きく深呼吸している。間違いなくさっきの攻撃を撃つ気だ。マズい。ここは自分がヘイトを買って止めさせないと。
「爆ぜる焔よ、火の球として聚合し、眼前に現れし標的に猛る一投を撃ちかけん」
自分は右手に回り、脱兎跳躍を駆使しながら右側の足場に飛び乗りつつ、詠唱を始める。あのまま攻撃したら後ろに居るミオ達にまで危険が及ぶ。ならば別の場所から援護するほかあるまい。
「【火球】!!」
着地した直後、すぐに右手を銀鏡の翼龍の顔面に向け、火球を放つ。威力は七割程度に抑える。あくまでこの攻撃は向こうの攻撃を阻止するため。
それと、この威力でどの程度ダメージが入るか確認する意味もある。これでノーダメだったら全力の火球でも倒すのは厳しい。
――――――――――!!!!!
自分の放った火球は見事に直撃。爆風でやつの顔も吹き飛びそうな勢いだ。
ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛
「ッ!? これでもダメか」
しかし、やつの顔には傷一つつかず。依然として綺麗な姿を保っていた。クソ。自分の火球ではダメージは入れられないか。
――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!
「ぐっ!?」
だが、やつの怒りを買うには充分だったようで、天高く放つ銀鏡の翼龍の咆哮は迷宮に響き渡った。




