第9章ー58
『私、勝手に諦めて皆の気持ちも考えずにあんなこと言っちゃった。本当にごめんなさい。うん。そうだね。皆で協力すればなんとかなるよね? わかった。私も最後まで諦めずに頑張るよ!』
「…フィーちゃん!!」
しかし、その発言は違った意味であった。断ったわけではなく、皆への謝罪の言葉だった。
フィーは袖で涙を拭い、決意を新たに立ち上がった。その行動に真っ先に感動を受け、彼女に抱き着くミオ。気づけばミオの方も涙でぐしょぐしょになっていた。よほど今の発言に感動したのだろう。
「よかったね、サダメ君」
「…はい」
二人が抱き合っている姿を横目に自分の頭に手を当て、労いの言葉を送るソンジさん。涙は流していないものの口元に少しだけ笑みを浮かべていた。彼女もホッとしているようだ。
「うむ。よき弁舌であったぞ、サダメ」
「うおっ!?」
そのあと、マヒロも労いの言葉をかけながら自分の背後から抱き着いてくる。ミオに触発されたのだろうか。後頭部がすっぽり彼女の谷間に埋まるが、今はそんなこと気にしている場合じゃない。
「よし。フィーの協力も得られたし、今度こそ奴を倒すぞ! 皆、戦闘準備!!」
マヒロの手をほどき、立ち上がって再び皆に指示を送る自分。まだ戦いは終わっていない。喜ぶのはこの状況を脱してからだ。
自分の指示を聞き、皆の顔はいつにも増して気合いが入っていた。その様子も見ていつも以上に頼りになりそうだと確信する。そりゃあそうだ。今の自分達は更に絆が深まり、周りの氷が解けそうなほど心に熱を帯びていた。今なら魔王にも勝てそうな気がした。
「手筈はさっき言った通りだ。フィー、任せた!」
『うん!』
それぞれ戦闘態勢に入り、フィーに合図を送る。涙で若干顔を腫らしながらも勇ましい顔つきになった。彼女も本気のようだ。
銀色の翼龍はまだこちらに気づいていない。久しぶりに解放された影響か、まだ万全ではない様子。恐らく五感や魔力感知がだいぶ鈍っているのだろう。それでもあれだけの威力の攻撃を放つ輩だ。万全ではないとはいえ気は抜けない。
『集いし者たちに膂力の向上を。【身体強化】』
フィーが強化魔法を唱えると、身体が僅かに軽くなったような気がする。おまけに熱くなったような気さえする。それに関しては気のせいなのかもしれないが、この寒いなかではどちらにしてもありがたい。
皆の気持ちも一つになり、バフがかかったからか、自分達の気分はさっきと打って変わって何倍も高揚していた。
「んじゃ、始めますか。昔話の続きを!」




