第9章ー56
「ッ!? フィー、ちゃん?」
思いもよらない発言に全員が驚愕。フィーの方に視線を向けると、怯えた表情でへたり込んでいた。そんな彼女の周りにいつの間にか小さな水溜まりが出来ている。恐怖と絶望で力が抜け漏らしてしまった模様。本人はそれにすら気づいていない。それだけ恐ろしいのだろう。まあ、彼女の気持ちはわからんでもない。
『相手は国を滅ぼした伝説の龍なんだよ? 私達だけでなんとかできるわけないよ。このままじゃ絶対氷漬けにされて殺されちゃうよ。うぅ、もう終わりだよぉ!?』
「…フィーちゃん」
「…」
涙を流しながら地面に突っ伏すフィー。自分の小便が服に付くことも気にせず、下を向いて弱音を吐露する彼女を見て、皆の顔が下に向き始める。さっきまでの前向きな雰囲気が一変、徐々に雰囲気が悪くなっていく。
そのときに自分は思い出す。あのときの自分を。きっとあのときの皆もこんな気持ちだったのだろうと今になってラエルの怒りを理解してしまった。あいつが怒るのもよく分かる。絶望のなかでこんな後ろめいたことを言ってしまえば皆の雰囲気が一気に変わってしまう。本当にあのときの自分はなんて馬鹿なんだろうと考えさせられる。
それはさておき、この雰囲気をどうするべきか。こうなってしまった以上、誰かが何か言わなければ本当にこのまま絶望したまま全滅してしまう。こういうときこそ自分がなんとかしなければ。あのとき犯してしまった自分だからこそ言わねば。
だが、彼女の精神状態を鑑みるに、ラエルのように怒鳴りつけるのは得策ではない気がする。余計追い打ちを掛けてしまいそうだ。
適当な励ましの言葉も返って不信感を与えてしまうかもしれない。とはいえ、現実的な話ばかりしても状況はよくならない。
余計な励ましはせず、かつ彼女が前向きになるような言葉を。振り絞れ、サダメ・レールステン!
「…ッ!?」
必死に言葉を探していると、ふとあのときの光景を思い出す。そうだ。あのときだって全滅するかもしれない絶望的な状況だった。
けど、皆で協力したおかげであの状況から抜け出せた。そのあとにあんなことになるとは思わなかったけど。
でも、今度は大丈夫。なぜなら…
「…フィーちゃん。あのね…」
「フィー」
「ッ!? サダメ?」
覚悟を決めた自分はミオの話を遮ってフィーの右肩を掴み、話しかける。その様子にミオはびっくりしていた。悪いミオ。俺が責任持って彼女を勇気づけてみせるから。自分の心の中でそう誓い、自分は口を開く。




