第9章ー55
「な、なあ? これってひょっとしてかなりヤバイ状況なんじゃあ…」
――――――――――!!
「ひいっ!?」
しばらく銀色の翼龍の美しさと威圧感で動けずにいると、一番に我に返るギリスケ。今の状況の危険さを皆に伝えようとするなか、銀色の翼龍の咆哮で威嚇される。
「はっ!? そうだ。こんなことしてる場合じゃなかった」
しかし、そのおかげもあってか自分も我に返る。そうだ。ギリスケの言う通りボーッとしてる場合なんかじゃない。
目の前にいるのは魔物。さっきの攻撃といい、明らかにこちらに敵意も向けていた。逃げるか戦うか、どちらにしても早く手を打たなければ。
「ミオ! もう一回皆を飛ばせるか?」
とりあえず先にミオにもう一度風魔法で上に行けるかどうかを確認した。逃げるなら彼女の魔法なしでは無理だ。決断するのはそれ次第になってくる。
「う、うん。出来なくはない…と思うけど、上が…」
「ッ!?」
自分の問いかけに対して小さく頷きはしたものの、上の空洞の様子を見て、弱気な答えが返ってきた。つられるように空洞の方を見ると、さっきの攻撃で今にも崩れ落ちそうなほどの落石がバンバン降ってきていた。たしかにこの状態で再び昇ったとしても、途中で大きな落石なんてきたら一巻の終わり。マヒロがいるとはいえ、全ての落石を被害なく防ぎきるのは至難の業。またあいつの攻撃が来ないとも限らないし、脱出は絶望的か。
「…仕方ない。皆、戦闘準備だ!」
「ッ!? サダメ君、まさか…」
「逃げられない以上やるしかないでしょ!? マヒロ、イケるか?!」
「うむ。問題ござらん」
「ま、マジかよ」
ならば戦うしかないと思い、皆に戦闘準備をするよう促す。ソンジさんから正気を疑うような眼差しを向けられるが、こうする他あるまい。逃げ道は実質ないに等しいのだから。
マヒロの方は準備万端のようで、待ってましたと言わんばかりに魔妖をすぐさま構える。戦うことに関しては一番積極的で助かった。
戦闘は自分とマヒロを先頭にして戦うことに。足場は限られているが、マヒロは水龍とかでなんとかなるだろうし、自分は遠距離攻撃と脱兎跳躍を使えば一応は戦える。隙があれば接近戦に持ち込んでなるべく周囲の被害を抑えられれば儲け物ぐらいに考えてる。
ミオは今後のために温存させておくとして、あとはソンジさんの魔道具とフィーの支援魔法を駆使しながら相手に攻撃の隙を与えないようにすれば、ワンチャン可能性は見えてくる。
「フィー。悪いけど先に俺とマヒロに強化の魔法を…」
とりあえず戦う前にフィーに強化魔法を掛けてもらおうと彼女に指示を出す。バフがあれば多少はマシになるかもしれないし、一秒でも早く奴を倒したい。
そう思っていたのだが、
『…無理だよ。こんなの』
彼女から涙混じりの声でそう返ってきた。




