第9章ー53
これは、一つの昔話である。なお、この物語は一部抜粋したものである。
とある北の国では年中雪が降り積もるほどの雪大国であった。普通の人なら海に数秒入るだけで凍え死んでしまうような極寒の地ではあるものの、美味なる海の幸やその地でしか生息していない動物達の高級毛皮、一部高値で取引される希少な鉱石、そしてなにより、世界の約五分の一を占める広大な土地などの理由もあり、いくつかの民族が協力し合って暮らしていた。
そんな雪国にある日、災いが訪れる。
雪山から突如、巨大な怪鳥が現れる。銀色の翼に白銀の鱗。鋭い牙に凶悪な顔つきは鳥というにはあまりにも歪であった。
怪鳥は空を飛ぶと、真っ白な息を吐き辺り一面を凍らせてしまう。土地を。人を。海でさえも。全てを凍らせた怪鳥は何食わぬ顔で飛び去り、国を後にした。なにかを得るわけでもなく、ただ人類を葬り去るためだけに凍らせ、そして次の土地へ向かう姿はまさに死神が降臨したかのよう。
しかし、羽ばたく姿は何物にも代えがたいほど大層な美しさだったそうな。
そんな怪鳥は次の土地へと上陸する。その土地は緑豊かで、濃い魔力が漂っており怪鳥は大層気に入った様子。
そこで怪鳥は雪国のときと同様に全てを凍らせ、自らの住処にしようとしていた。
白い息を吐くと辺りが白く凍っていく。そこにいた生物達全てを巻き込んで。このまま順調に侵略されるかに思えた。
だが、ここで怪鳥に立ちはだかる者達が現れる。
この土地の者は魔力を我が物とし、それを使って怪鳥に攻撃を入れる。初めての反撃に怪鳥は苦戦を強いられた。
しかし、怪鳥の鱗は頑丈で傷一つ付かず。そこで確信したのか、怪鳥は強引にその者達を凍らせようと大きく深呼吸する。最大量の息で一気にケリをつける気のようだ。
だが、そこで怪鳥を止めたのは一人の男。その男は炎を操り、怪鳥の開いた口に向かって巨大な炎の球をぶつけた。
怪鳥は口に大やけどを負い、窮地に陥る。そこに畳みかけるかのように他の者達が追い打ちを掛ける。
瀕死にまで追い詰められた怪鳥は巨大な洞穴へと逃げ込むが、傷が痛むと一瞬意識が飛びかけ、更に深い場所へと落ちていく。
深く、深く、更に深く。それでも彼等は追いかけてくる。
気づけば最下層。いよいよ逃げ場を失った怪鳥は最後の抵抗を試みる。それは自分ごと洞穴を凍らせる道連れの策。
洞穴のなかが凍り付いていく様を見てか、追いかけていた者達が慌てて退散していく。流石に怪鳥と道連れになるのは嫌った模様。
怪鳥の道連れは虚しく失敗し、何百、何キロメートルも深いところまで凍ったところで停止。怪鳥が既に凍り付いてしまったがゆえに止まってしまったのだろう。
こうして怪鳥は自らの手で永遠の眠りにつくのであった。




