第9章ー47
「ッ!? そういえば妙だな」
「? どういうことでござる?」
フィーの発言を聞き深刻な顔を浮かべるソンジさん。あの時の光景を知らないマヒロとギリスケは訳が分からなさそうな表情。そこでマヒロがソンジさんに発言の意味を聞き出そうとしていた。
「上は今、魔障の冷気が漂ってて、その影響で魔物が増殖してるんだ。けど、その発生源であるここには魔物どころか私達以外の生物を確認できてない。明らかにおかしいんだよ。魔障は魔物にとって最高の環境であるはず。なのに一体もいないなんて。よく考えてみたらこれは異常事態だ。なんでだ?」
ソンジさんは困惑したままマヒロ達に説明をする。だが、後半は自分自身に問いかけるように唇に手を当て考え込むソンジさん。彼女からしても今、異常なことが起こっていると認識してるらしい。それを聞いていつの間にか脱出のことなど忘れるかのように皆も考え出していた。
「うーん。魔物も生まれないぐらいここが寒すぎるとか?」
「それはないね。魔物は生まれた環境に適応できる。そもそもこの迷宮自体寒さに耐性があるものしか生まれないはずだし、地上で生まれた野生の魔物が迷い込んで来ることはないにしても、出現すらしないのは変だよ。この環境なら、かなり強力な個体が生まれても不思議じゃないんだけどな」
ギリスケがそれっぽい理由を述べるが、即座にソンジさんに否定された。しかし、その理由にも納得がいく。たしかに僅かな魔障の冷気であれだけの数の魔物が出現したんだ。その理屈でいえば発生源で生まれる魔物はかなり強力な個体が生まれるはず。なのに何故発生源には魔物の「ま」の字もないんだ?
「変といえば他にもある。騎士団が何故この場所を隠したかだ。魔物がいないのにロクに調査もせず、記載もせずに隠蔽した。なんでこの場所を隠したんだ?」
「ッ!? たしかに」
そして驚くべきことに騎士団がこの場所を地図に記載しなかったことだ。隠すならまだしも、一切記載していないというのが引っかかる。というか、魔物もいないのになんで隠してしまったのだろうか。ソンジさんの話を聞いていて自分もそこに引っかかった。深いだけなら騎士団の人達もわざわざ隠したりせず、地図に注意事項として乗っけておけばいいだけの話。調査するだけならそこまで難しいとも思えんしな。
「…」
色々きな臭い。そう思っているのは自分だけではなかった。偶然とはいえ、とんでもない真実を目の当たりにしているような気分だ。いや、実際に目の当たりにしているのか。
だが、隠匿した意図が理解できない。本来危険区域であるはずの迷宮に一体なにを隠すのだろうか。お宝? 魔道具? 人の死体? うーん。なんかどれもしっくりこないな。そこまでリスクを冒して隠すようなものなんてあるだろうか。
いや。そもそも隠しているのは疚しいものなのか? 例えば超危険で封印せざるを得ない『なにか』、とか?
「…うん。あり得るかもしれない」




