第9章ー44
「うーん。ここも駄目そうですね」
「凍らされて道が塞がってる、っていう可能性も感じてたんだけど、やっぱないか」
それから十数分。自分・ミオ・ソンジさんで壁伝いに抜け穴などないか一周回ってみるが、特に大した成果は得られず。ソンジさんの「凍って穴が塞がっている」という説も限りなくゼロになった。ひょっとしたら氷の壁が穴が見えなくなるぐらい分厚くなったという可能性も捨てきれないが、そうなると何十メートル何百メートルも掘らないといけないレベルになるし、現実的に考えてその可能性は薄そうなので諦めることに。
『マヒロちゃん。随分深くまで剣刺したんだね』
「それは水龍で突き刺した跡でござるな。水龍は長さも自在に操れるうえ、岩をもスパッと切れるほどの切れ味を持っているんでござるよ。そのおかげでギリスケ殿も無事救えたでござる」
「あんときはマジかっこよすぎて思わずときめいちまったよ。俺の心はもう、マヒロちゃんのものだよ」
『へー。キモ』
「…」
一方、マヒロ・フィー・ギリスケの三人には地面の方を確認してもらっていたのだけど、なんか傍から見るとワカサギ釣りで楽しんでいる子供にしか見えない。さっきの切れ目の話でキャッキャッと盛り上がっているようだけれども、あいつら本当に状況わかってんのかな。
「どうします? 流石にこれ以上は…」
「んー…」
そんな三人をよそにミオとソンジさんは最終手段を取るか否かを決めかねていた。これ以上模索しても他の脱出方法は見つからなそうだし、長居するのもそろそろ危険だ。
ミオの魔法がかかってるとはいえ、完璧に寒さを防げているわけではない。それゆえ、自分達の体力もじわじわと減っていく。ただでさえここに来るまでの間に体力を消耗しているというのに、寒さで必要以上に奪われているのはかなりマズい。
「仮にここから脱出できたとして、上は今頃魔障で生まれた魔物達がうじゃうじゃしてる。となると、強行突破しか手段がなくなるわけだが、そうなったら余計にミオ君への負担が大きくなるどころか皆も戦わないといけなくなるわけだし、それをいちいちさばいてたらキリないし、迷宮を出るまでに皆の体力が持たない可能性が高い。なにか他にいい手立ては…」
しかし、それでもソンジさんは今後のことを考えこんでいるせいで決断を渋っている。彼女の考えうることも分からなくはない。ここから脱出したとしても、更に上は地獄と化しているのはあの時の光景を見た自分達からすれば想像に難くない。マヒロ達と合流して一緒に別ルートからの脱出を試みる予定が、まさか逆戻りする羽目になるとは。
そうこうしている間にも着々と自分達を蝕んでいく魔障。はたして、皆でこの場所から、この迷宮から脱出することができるのだろうか。




