第9章ー33
「ぷはあっ!! いぎがえる゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」
「それはよかった。サダメ君。様子は?」
「今のところは大丈夫だと思います」
「あまり長居もできないし、あと十分くらいしたら出発するから。それまでよろしく、ミオ君」
「はい。ほら、足出して」
「いや~、すいませんねー」
『さっきまで死にそうな顔してた人とは大違いだね』
「生き返ったよかったでござるな、ギリスケ殿」
数分後。近くにちょうど物陰にできそうな岩場を見つけ、そこで一時休憩を取ることに。気配消しのおかげで肉眼で捉えられることはないようだが、ソンジさん曰く、魔物の中には魔力の感知に特化した個体もいるらしく、堂々と魔法を使っていると気づかれるそうだ。今、ギリスケの足の疲れを少しでも和らげようとミオが治癒魔法を使用している。
それゆえ、バレる可能性を少しでも減らすべくわざわざ隠れながら魔法を使用しているのだ。ちなみに自分は岩の上に座って視覚と魔力感知を使って魔物の気配を探っていた。以前よりかは察知範囲は広げられたもののまだまだ未熟な部分も多い。だから近場は肉眼で確認することにした。どうせ普通に座ってる分には気づかれないし大丈夫だろう。にしてもギリスケの奴、女子に囲まれて色々やって貰ってて、まさに至れり尽くせりだな。まあ、普段こんな扱いされることもないだろうし、たまには良い思いしてもバチは当たらんか。
「んー」
「? どうかしましたソンジさん?」
ギリスケが癒されている中、ソンジさんは地図とにらめっこしていた。何か懸念でもあるのだろうか。
「いや、今のギリスケ君の体力を考え得るに、ここから普通に進むとなると単純計算であと三回ぐらいは休憩が必要になってくるからさ、もう少し時短で進めそうなルートを模索してる最中なんだけど、中々良さそうな道がなくてね」
どうやら彼女はギリスケの負担を考え、最短で行けそうなルートを探してくれていたようだ。しかし、思いのほか早く行ける道がなく困り果てている模様。たしかにそれは深刻な問題だ。一回十分の休憩を三回挟むとなると、三十分も時間をロスすることになる。いつ危険な魔物が出てくるかもわからない迷宮でこの時間ロスが中々リスクが高い。
「なら、俺がおぶって行きましょうか?」
「うーん。そうだね。最悪の場合はお願いするよ」
「了解」
それならばと自分はギリスケを途中から背負って行くと提案。まだ体力には余裕はあるし、魔物に遭遇してもマントがあれば問題ない。感知だって両手塞がっててもできるし、その方が早く攻略できそうだと判断した。まあ、問題があるとすれば奴が自分の背中でごねだしたりしないかだな。流石にキレてぶん投げたくなるやもしれん。こっちとしてもそれだけは勘弁して欲しいところだけども。
「うおわぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
「「ッ!?」」
なんて内心ふざけたことを考えていると、唐突にギリスケの叫び声が聞こえた。




