第7章ー56
「なっ!? マジで言ってんすか?!」
私の発言を聞いてコールスタッシュ先生は目を丸くする。当然のリアクションだと思うが、他人の事に無関心な彼でさえも驚いているのは少々意外だったな。
「何を考えてるんですか理事長!? 試験とはいえ、今回ばかりは危険すぎます! 即刻中断させるべきです!!」
ライラック先生に至っては私の意見に猛反対。鬼気迫った顔で詰め寄り、私に抗議してきた。彼も気が気ではない様子。
「…君達の言いたいことは分かる。だが、試験は続けさせてくれ。何かあったら責任は私が取る」
「ッ!?」
それでも私は意見を曲げる気はなかった。二人の気持ちはよく理解している。だからこそ先程まで悩んでいたのだから。
だが、彼にとってこれは超えるべき壁。魔王を殺すつ事を目的としている彼には、自分よりも格上の猛者と戦う日が必ずやってくるだろう。
十死怪はその最たる例。奴等は魔物の中でも無類の強さを誇る怪物達だ。勇者はそんな連中を相手にしつつ魔王を討ち取らなければならない。そうなれば死地に直面するのは必須。ならば今ここでそれを体験させるのもいい教訓になるだろう。残虐非道な魔物達に比べればまだマシな方ではあるだろうし。彼女だって半殺しにしても人殺しをするような非人道的な人間ではない。まあ、こればっかりは彼女を信じるしかないが。
それに、彼は優秀すぎるのだ。時折魔法授業を見学しに行くが、はっきり言ってこれ以上彼に教えられることがない。それだけ他の生徒よりも卓越してしまっているのだ。彼もそれを理解しているのだろう。
唯一彼の成長させる方法があるとすれば、実践による経験。つまり魔物との戦闘。結局のところ、それが一番手っ取り早い方法なのである。
そうさせてやりたい気持ちも山々だが、外の世界は危険と想定外の事が山ほど起こり得る。特にここ最近は。流石にそんな状況で彼一人魔物討伐させるのは不安でしかない。
とはいえ、学園の授業程度では彼は満足していないだろう。それでは折角の才能も腐ってしまいかねない。
だからこそ、これは彼にとっては持ってこいの状況。危険と隣り合わせの模擬戦を経験することで多少なりとも彼の成長する余地も見えてくるだろう。
正直、今の彼の実力では彼女を殺す事は出来ないだろう。たとえ『あの目』を使ったとしても。それだけの実力差はあると私は踏んでいる。これを機会に彼にそれを学ばせ…
「お、おい。あいつ、何しようとしてんだ?」
「ん?」
てあげようと思っていた矢先の事だった。生徒達が試合の様子を見てざわつき出していた。私達が話し合いをしている間に何か動きがあったようなのだが。
「ッ!? あれは…」
それは私も少々想定を超えた事態になっていた。




