第7章ー㉖
「ぐっ! うぬぬぬ…」
近くの建物に必死に手を伸ばし掴もうとするが、紙一重で掴めず。マズい。恐らく最後の好機であろうこの瞬間を逃したくはない。
「抜刀! 水龍!」
せめてこれ以上の落下を阻止する為、水龍を発動し、建物に向かって魔妖を突き刺した。水龍は鉄の刃から水の刃に変化させる魔法。この魔法の強みは刃が折れても元に戻せる事と水圧で通常の刃より切れ味を増加させる能力を有している。しかし、液状の刃故少々刃が脆く、扱うのが魔妖の中でも上位に入るぐらい難しい。
だが、扱えるようになれば壁に刃を突き刺す事も容易い事。切れ味が増したおかげで例え鉄であろうとも宝石であろうとも刃を突き立てる事が可能になる。
「ふぅ」
水龍の刃で建物の壁に突き刺し、なんとか落下を阻止。刃を横に向ける事でこれ以上誤って下がってしまう事もなさそうでござるし、とりあえず一安心。
「…よし。本番はここからでござるな」
しかし、戦いはまだ終わってはおらぬ。上空を見上げると、大鷹はまだ降下し続けている。まだ意識は戻っておらぬ様子。いつ戻るか分からぬ以上、急がなくては。
「うんっ、しょっと!」
魔妖を足場にしてなんとか建物の最上階に到達。魔妖もなんとか回収し、準備完了。大鷹との距離まで五百もない。落ちる速度も大分速いし、さっきの通りに飛べば届かぬ距離ではなさそうでござるな。
「…いざ、参る!」
三度目の正直。一度深呼吸した後、再び足に力を込める。今度こそ決めきれなければ恐らく拙者の勝機はない。ここで絶対に決めてみせるでござる。
「はあああっ!!」
力一杯脱兎跳躍で空を飛ぶ。力み過ぎるあまり先程居た建物も上から崩れて行く。使える建物は近くにはござらぬし、もう後戻りは出来ぬ。ならば、これが正真正銘最後の好機。
「抜刀! 鎌鼬ぃ!!!」
脱兎跳躍である程度距離を稼いだ後、鎌鼬の斬撃の風圧で更に飛躍。あやつとの距離は目前。今度こそ、イケる。
「…ピ…」
「ッ!?」
そう確信していた矢先、大鷹がようやく意識を取り戻した。このままではまた逃げられてしまう。あともう少しなのだ。いけ! 振れ! 斬れ! マヒロ・トーエン!
「はあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
「ッ!?」
拙者は全力で刀を振るった。あやつは意識を取り戻した瞬間、状況をすぐに理解し、今度は横へと逃げようとしていた。
「ピェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ?!」
しかし、拙者の全身全霊を掛けた一振りがあやつの片翼を切り落とした。




