第6章ー㊳
「う゛っ?! う゛おぇ゛っ!!」
銀色の籠手からはみ出た人の肉とポタポタ滴り落ちる赤い血を見て、自分は膝から崩れ落ちるながら戻してしまった。
「あーあーあー。キタねーなーおい」
「はあ…はあ…はあ…」
嘔吐する自分を見て若干不機嫌そうになるホープ。こいつ、イカレてやがる。籠手で直接触れていないとはいえ、殺した相手の一部をあんな堂々と拾うか普通。
「はあ…はあ…、あんた、その人を、殺したのか?」
「んん? さっき言ったろ? 全員消したって」
「…つまり、殺したってことか?!」
「まあ、そうなるかな。本当は男だけ殺して女は遊び用に残しておくつもりだったんだけどな。相手があの騎士団様ともなれば俺も手加減出来なくってよー。だからうっかりー」
「…」
不機嫌そうにしていた奴だったが、自分が問い詰めるとヘラヘラと面白げに答えていた。答えの内容も大概イカれてる。やっぱ駄目だ。こいつのクズのような会話を聞かされると、どうも苛立ちが堪えきれなくなってしまう。
「…お前は、なんでそんなにヘラヘラ出来るんだ?!」
「あ゛っ?」
苛立ちが抑えきれなくなりそうな自分はなんとか立ち上がり、ホープを更に強めの口調で問い詰めていた。それに対して彼も苛立ちの表情を浮かべている。
「人の命を、なんだと思ってんだ!?」
だが、それよりも先に自分の怒りケージがマックスに到達し、気が付けば隠していた迅雷を振りかぶってホープに向かい突撃しようとしていた。どういう手を使ったのかは知らないが、騎士団の人が居ない以上、こいつらを止めれるのは自分達しかいない。これ以上被害が出る前に止めてやる。
「…【吸引】」
迅雷を振り下ろし、ホープの胸に電流を流す直前、彼の口からなにか一言発せられた。今のは無詠唱の魔法? 一体何を…
「なっ?!」
するつもりなのかと思った矢先、前に振り下ろそうとしていた右手がなにかに引っ張られるかのように右に持っていかれ、攻撃の軌道をずらされた。
「おらっ!」
「がっ!?」
軌道をずらされたせいで体勢が崩れ、ホープの蹴りを腹に喰らい後ろに吹き飛ばされる。今何が起こったんだ。吸われるかのように右手を引っ張られた事だけは分かるが。あれが奴の魔法? 風系統の魔法なのか? もしくは重力系か?
「…あのよー、俺等みたいな連中は綺麗事言う馬鹿は死ぬほど嫌いなんだよなー。そういうこと言う奴みたらさー…」
奴の魔法について分析しようとしていると、懐からナイフを取り出したホープが自分の真上に立ってぶつくさなにかを言い始めた。それからナイフを振りかぶり…
「イジメたくなんだよなー!!」
自分の右太股に深くナイフを突き刺した。




