第5章ー52
三人が辞めてから、事態は良くない方向に進んでいった。翌日、それを知った女子生徒が二人、その日のうちに学園を去り、続くように翌々日に四人、その翌日に一人と、入学してから丁度一週間が経つ頃には三十人居た生徒が二十人にまで減ってしまった。再度言うが、これが入学してから一週間の出来事である。
「…」
そんな一週間が経った翌日、何事もなく魔法学の授業は続いていた。今日も相変わらず走ってばかり。以前よりかは体力が付いた気もするが、ペースをちょっと上げると持たなくなるレベル。このペースでは任務前に次のステップに行くという目標には間に合わない可能性がある。朝練の内容もう少しきつくするか? いや、今のでも充分キツイしなー。
『全員、今日はもう終わりにして俺の所に集合しろ!』
「? なんだ、急に」
「さあ?」
なんて考えていたら、突然コールスタッシュ先生から授業の終了を告げられ、先生の所に集合する言われた。めんどくさがりな先生がいきなり呼び出すなんて妙だなと思いつつ、言われた通り先生の所へと向かって行った。
「ふー。えー、君達が入学してから一週間が過ぎた訳だが、遺憾な事に生徒が三十人から二十人まで減ってしまいました。せんせいはとってもかなしいです」
「…」
生徒を集めてなんの話をするかと思ったら、触れづらい話をぶっこんできた。釘を刺す為にわざわざ全員を呼んだのだろうか。まさか、どんどん生徒が辞めていくのが我慢ならなくて一人一人今吸っているタバコで根性焼きでも始めるつもりじゃないだろうな。この人ならやってもおかしくはなさそうだが。ていうか、最後の一言感情こもってなさすぎでしょ。
「いいか? この学園は厳しい壁をどんどん用意している。この程度でへばってたら卒業なんて出来ねーと思っとけ。テメーらがボイコットみたいに辞めていこうが方針は変わらねーし、甘やかす気はさらさらねー。変えるんならテメーら自身を変えてみせろ! テメーらの初任務まで残り十日。任務が始まるまでには甘ったれた性根は捨てておけ。話は以上だ。解散!」
流石に根性焼きはしなかったが、容赦のない発言は先生らしかった。だが、そのことによって余計に生徒にプレッシャーを掛けている気がするのだが良かったのだろうか。これではまた中退する生徒が増えかねないのではと考えてしまう。
そんな不安を抱きながらも数日が過ぎていく。自分の考えとは裏腹に、思いの外先生の言葉が突き刺さったのか、この間、誰一人欠ける事なく任務当日を迎えるのだった。
―転生勇者が死ぬまで、残り4082日




