第5章ー㉟
気が付けば、終業のチャイムが鳴り、校内の閉門時間が迫って来ており、自分はソンジさんさんと一緒に帰宅する途中だった。
「それにしても、帰りは普通に制服着るんですね?」
その道中、制服姿の彼女に問いかける。話が終わった後、何食わぬ顔で白衣から制服に着替えていたから思わず聞いてしまった。
「君は私をなんだと思っているんだい? 公共の場を下着姿で出歩く程アホな女じゃないさ。それはそうと、私の下着姿を見た男は君が初めてだ。こりゃあ責任取って貰わないとな」
「え゛っ?!」
自分の問いかけに若干ムスっとした表情で返す彼女だったが、借りてるとはいえ、教室内を下着姿で過ごしているいるのもどうかと思うけど。
それから彼女は悪い笑みを浮かべて下着姿を見られた事に対して責任を取れと無茶苦茶な事を言いだしてきた。向こうから見せて来た気がするのだが、まさか本気じゃないよね?
「ははは、冗談だよ冗談。そこまで私は鬼じゃないさ」
「で、ですよね」
当然、今のは冗談らしくて一安心。流石に本気だったら一晩話し合う必要がありそうだったからな。まあ、冗談なのは分ってたことだけど。
「あ、そうだ。折角同郷の好に出会えた記念だ。君にこれをあげよう」
「? これって…」
校門を出ると、彼女から何かを渡された。長方形のガラスフィルム。横にボタンのようなものが付いてある。なんだか懐かしい触り心地。これはもしかして…
「スマホさ。今は通話とメッセージ機能しか入ってないけどね」
「ッ!? これ、貰っていいんですか?!」
「ああ。それは私と君が出会った記念の証さ。私の連絡先が入ってるから、デートしたくなったらいつでも連絡しな」
スマートフォン。異世界でこれを目にする日が来ようとは。帰る前に色々やっていて待たされていたが、彼女はこれを渡す為に自分を待たせていたのだろうか。今、彼女の余計な一言が気にならなくなるぐらい感動している。恐らく貴重な物だろうに、それをわざわざ自分にくれるとは。感謝の言葉しか出てこない。
「試しに電源点けてみな」
「はい。ここですか?」
久しぶりのスマホを手にしてテンションが上がっている自分は彼女の言われる通りにスマホの電源を入れた。電源を入れると、数秒して起動画面が最初に映る。ちゃんとそこまで再現しているのは凄い…
「…ん?」
なと感心していると、起動から更に数秒が経ってホーム画面が出てくるのだが、ホーム画面の背景を見て目を疑ってしまった。
「ははははは、それを私だと思って大切に大切にしてくれよ、サダメ君♡」
「…は、はい…」
ホーム画面の背景画像がソンジさんの別の下着姿になっていた。一応確認したが、画像は今の所変更出来ないようになっているそうだ。
―転生勇者が死ぬまで、残り4097日




