第4章ー㉘
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「くっ!」
底の見えない穴に落とされ、受験者達の悲鳴があちこちから木霊する。どこまでも続く深い穴を見て、初めてリーフさんの正気を疑ってしまった。どれだけ深いかわからないが、このまま落下すれば死ぬ可能性大だぞ? 受験者を皆殺しにする気か?
「うわっ?!」
「きゃっ!?」
「ッ?!」
そんなことを考えていると、いつの間にか人の数が減っている事に気が付いた。落下速度が速くなった? いや、そんな感じは全くしない。だとするなら、皆は一体どこに行ったというのだ?
「サダメッ!?」
「ッ?! ミオォッ!!」
考えるのも束の間、近くに居たミオが何かに飲みこまれる瞬間を目撃。なんだこれは? 土のようなものが人一人入るサイズの筒状になっており、下から次々と湧き出てきて、受験者達を一人一人飲みこんでいった。魔物か? それとも誰かの魔法か? どうする? まず先に飲みこまれたミオを助け出すべき…
「ッ!?」
かと悩みながらも、彼女が居た方向に魔法を放とうと右手を翳そうとしていたが、気が付けば自分の真下からも同様のなにかが自分を飲み込もうとしていた。しまった、油断した。これじゃあ間に合わない。
「…クッソォッ!」
エイシャの時のように回避する余裕もなく、皆と同じく謎の物体に飲みこまれてしまった。
物体の中はトンネル型のウォータースライダーが如く暗いトンネルの中うねうねしながら滑り落ちていくように落下していく。人一人入れるサイズな為、無理に体勢を変える事が出来ず、うっかりしたことに自分は今万歳状態で下に向かって魔法が撃てない姿勢になっていた。あの時ミオの方に向かって魔法を撃とうとしたのが良くない方向に転んでしまった。
どうする? 業火剣でなんとかこの物体を斬るか? だが、外の状況が飲み込めない以上、脱出は寧ろ危険か?
「…」
そもそもの話、これははたして試験なのだろうか? ふと、冷静になって考える。落下を止める事を考えるより、学園側の意図を読んだ方が良さそうな気がした。
『会場の準備を済ませてからだね』
リーフさんの言っていた事を思い出す。会場の準備? ここが試験会場じゃないのか? それとも、会場場所に着いただけで、会場自体はまだ出来てないということか。
「…ってことは…」
つまり、この下に本当の会場があるということ。そう結論づけた自分は、謎の物体の行く先を見届ける覚悟を決めた。




