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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
4章 入学試験編
110/495

第4章ー㉔

 「さて、話の続きに戻ろうか」


 「こいつの言う通り、お前に拒否権はない。俺達の遊び相手になってもらうぜ。一晩たっぷりな。ぶへへー!」


 「ちょっ、ふざけないで!」


 貴族の男二人は、自分との話を勝手に切り上げ、再びミオに迫っていく。さっきとは違い、強引にでも連れて行きそうな勢いだ。それを悟ったのか、ミオの怒りゲージが頂点に立とうとしている。このままでは彼女から先に手を出しかねない。こいつらの行動はそれぐらいされてもいいぐらい限度を超えているが、ここで手を出せばこの二人が何をしだすか分からない。最悪、本気で訴えてくる可能性もある。向こうに比があるとはいえ、色々と面倒な事になりそうだ。試験にも響く可能性もあるし、ここは暴力に訴える以外の方法で場を収めねば。


 「あ、あのー…」


 「「あ゛っ?!」」


 とりあえず、彼女が無理やり連行される前にこちらに注意を引かねばと、また作り笑顔を浮かべて二人に声を掛ける。当然、二人の反応は良くはない。自分の存在がよっぽど気に入らないのだけはよく理解した。


 「なんだお前? さっきの話聞いてなかったのか? それとも、教養がなさすぎて人間の言葉も理解出来ないのか?」


 「とっとと失せろって。マジで死罪にすっぞ?」


 「…」


 二人は容赦なく自分に罵声を浴びせる。しかし、こいつらの台詞はどことなく中学のヤンキー臭さを感じ、威圧感を出されてもそこまで怖さを感じなかった。魔物の時と比べれば大したことない。


 「出来るならやってみろよ?」


 「…はっ?」


 さっきまで作り笑顔を浮かべていた自分は、真顔で二人を挑発。急に態度が変わった事からか、二人は面を食らっていた。


 「幾ら貴族様とはいえ、一般人が肩に触れただけで死罪に出来る権利なんてあるわけないだろ?」


 「なんだと貴様ぁ?!」


 自分が反論すると、やせ細った方が顔を真っ赤にして激怒した。太っている方も穏やかな表情ではない。


 たしかに、この世界の情勢に詳しい程の教養は行き届いていない。だから細かい事まで知っているわけではないが、少なくともこの国は貴族が絶対的な権力を有しているような貴族政の社会でないことは生きていてなんとなく理解出来ている。ましてや私怨で生殺与奪の権を奪えるような事は出来まい。


 自分達が入った店は昼間でも薄暗い程建物が並んだ裏路地にあり、人気はほとんどと言っていい程ない。そんな場所に高貴な人間が通るのは少々不自然に感じた。恐らくこいつらは、自分達の立場を脅しに利用して、ここら辺に入った女性をとっ捕まえようとしていたのだろう。貴族がこんなこすいやり口で女遊びしようだなんて、拍子抜けもいい所だ。


 「本当に死罪出来るっていうなら、人通りのある所でさっきの台詞聞かせてみろよ!」


 「くっ!?」


 こいつらの言っている事がはたして本当なのかどうか確かめる為、自分は表通りの方を指した。表通りにはそれなりに人が居る。そこでさっきの発言をすれば街の人達の反応が見れる。反応を見れば嘘かどうかはっきりするだろう。


 しかし、奴等は苦虫を嚙み潰したような表情に変わっていた。やはり、そんな理不尽なルールなんてあるわけなかったと確信を得た。


 「どうした? 貴族様なら無礼者に死罪にするぐらい、人目も気にせず出来るんじゃないのか?」


 「こ、こいつぅ!?」


 確信を得た自分は、逆に二人を一歩一歩追い詰めていく。近づいていくと、二人の顔から冷や汗が出ているのが分かる。この様子を見るに、あと一押しでいける。


 「ほら? やれよ?」


 「ッ!? クソ、覚えとけよ! ゴミの分際めが!!」


 最後の一言が効いたのか、二人は慌ててその場から逃げるように去って行った。ご丁寧に罵声を吐き捨てて。


 「…ふぅ。やっと追い払えた」


 「…」


 奴らが逃げていく様を見て一安心する。無事平和的解決、とは言い難いが、追い払う事には成功した。逆恨みはされるだろうが、まあ奴等と会う事は多分ないだろう。多分。


 「大丈夫か、ミオ?」


 「…」


 追い払えた事を確認し、ミオに声を掛ける。彼女が手を出す前になんとか出来て良かった。いかなる理由があれど、暴行までいったらこっちが不利になりかねない。自分は一発貰ったけど。


 「サダメェッ!!」


 「うおっ!?」


 きっと彼女もそれを理解したうえで必死に怒りを抑えていたのかと思いきや、涙を流しながら自分に抱き着いて来た。意外な反応に自分は思わず驚愕していた。


 「うぅ、怖かった。怖かったよぉぉ!」


 「…ミオ…」


 自分は思い違いをしていた。少々暴力的な一面があるとはいえ、彼女も年頃の女の子だ。男二人にあんなに迫られたら怖いに決まっている。怖い思いをさせてしまった事に罪悪感を感じ始めている。


 「…今日はもう帰るか」


 「…うん…」


 自分の胸で泣いている彼女の頭をそっと撫でながらなるべく優しい口調で帰宅しようと促すと、目を擦りながら彼女は首を縦に振った。


 その後、詫びも兼ねて彼女の手を離さないようにしっかりと握り、帰る道中に美味しいそうなケーキを持ち帰りして帰路に着いた。


 ―転生勇者が死ぬまで、残り4113日

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