↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
4章 入学試験編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/820

第4章ー14

 「……は?」


 思わず間の抜けた声が口からこぼれた。隣ではエリカさんが、まるで理解が追いついていないといった様子で口を半開きにし、そのままミオへと視線を向けている。


 無理もない。自分がどれだけ頭を下げ、必死に説得して、ようやく魔法学園の受験を許可してもらったというのに――その直後、まるで便乗するかのようなタイミングで、ミオが「自分も受験したい」と言い出したのだから。


 正直に言って、混乱しかなかった。

 彼女はいったい、この状況をどう捉えて、どうすれば許可が下りると考えたのだろうか。


 「ミ、ミオ? 貴方まで急に何を言っているの?」


 動揺を隠しきれないエリカさんの問いかけに、ミオは一瞬だけ視線を伏せ、それから意を決したように顔を上げた。


 「本気かい? 今の話、ちゃんと聞いていただろう?」


 神父様もまた、困ったように眉を下げながらミオを見つめる。


 「サダメはそれなりに鍛えているし、戦闘経験もある。だからまだ可能性はあるとして……君は、正直に言えば少し厳しい」


 その言葉に、胸がちくりと痛んだ。

 神父様の言うことは間違っていない。


 ミオに魔法の才能がないわけではない。治癒魔法に関して言えば、むしろ天賦の才があると言っていい。だが、それはあくまで支援・回復に特化したもので、戦闘向きとは言い難い。風魔法も扱えるようにはなっているが、せいぜい物を浮かせたり、軽く押し動かしたりする程度だ。


 普段から特別な鍛錬をしている様子もない。

 仮に試験に合格できたとしても、その先の厳しい学園生活を考えると、不安が残るのも当然だった。


 ――それでも。


 「……私も」


 ミオは小さく息を吸い込み、震える声で言葉を紡いだ。


 「もっと魔法の勉強をして、立派な治癒師になりたいの!」


 「……ミオ」


 治癒師。

 前世で言うなら医者に近い職業だろう。高度な医療機器や設備はほとんど使わず、必要なのは知識と魔法、そして資格。それだけで、多くの命を救える存在だ。


 ミオの治癒魔法は確かに優れている。

 勇者からも、その素質を褒められていたほどだ。鍛えれば、誰よりも頼られる治癒師になれる――自分も、そう思っている。


 「もっと強い治癒魔法が使えるようになったら、たくさんの人を助けられる」


 ミオの声は次第に熱を帯びていく。


 「風魔法だって、攻撃できなくてもいい。重い物を運んだり、瓦礫をどかしたり……色んな形で人の役に立てると思うの」


 そして、ぎゅっと拳を握りしめ、涙を滲ませながら続けた。


 「だから、私も学園に行って魔法を勉強したい。……もう、あんな思いはしたくないから」


 言葉が途切れ、部屋に静寂が落ちる。


 ――そうか。


 胸の奥で、何かが腑に落ちた気がした。

 悔しかったのは、自分だけじゃなかったのだ。


 あの時、守られるだけだった自分。

 何もできず、無力さを噛みしめるしかなかったミオ。


 彼女もまた、あの日からずっと考え続けていたのだろう。

 ひょっとしたら、今日この瞬間まで、言い出すタイミングを待っていたのかもしれない。


 「……神父様」


 気がつけば、体が勝手に動いていた。


 「俺からもお願いします。ミオも、一緒に試験を受けさせてもらえませんか」


 「ッ!? サダメ?」


 驚いたようにミオがこちらを見る。

 だが、もう迷いはなかった。


 同じ想いを抱えているなら、置いていくわけにはいかない。

 試験の内容は分からないが、助け合える部分があるなら、全力で支えればいい。少なくとも、魔法学園に筆記試験があるとは思えないし。


 「うーん……」


 神父様は腕を組み、しばらく考え込んだ後、ため息混じりに言った。


 「まあ、サダメも一回きりの特例だ。ミオにも、チャンスくらいは与えてもいいだろう」


 「神父様!?」


 「ッ!?」


 思わず声が重なった。

 予想以上にあっさりとした承認に、今度は自分たちの方が戸惑ってしまう。


 おそらく、自分を許可した以上、ミオだけを完全に突き放すことはできなかったのだろう。

 エリカさんは納得いかない様子で腕を組んでいたが、それ以上反対することはなかった。


 こうして、自分とミオはなんとか魔法学園受験の承諾を得ることができた。


 ――なお、その後この件とは別で、エリカさんからしっかりお叱りを受けたのは、また別の話である。


 ――転生勇者が死ぬまで、残り4144日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。