プロローグという名の語り部
『犬も歩けば棒に当たる』
不運、もしくは幸運にであうことの意味で使われる諺だ。
『時は金なり』
時間は大切であり金銭と同価値であるという意味の諺だ。
『一寸の虫にも五分の魂』
小さき者でもそれなりの考えと心を持っている諺である。
『禍福は糾える縄の如し』
幸福と不幸は表裏一体の存在。不幸が幸福に転じれば幸福が不幸に転ずる意味を持つ諺である。
中々に諧謔された言葉たちであろう。
別に諺の勉強会を開こうとしている訳ではない。諺というのはこういうモノだと知ってもらいたかったのだ。
ほら今の諺って日常生活にそれとなく使われて、ふーんそんな意味があるのかとちょっとした発見があるくらい。
私としてはもっと使って欲しいと思うのだが、最近の若人はバズりだの、ぴえんだの、推ししか勝たんだの、エモいだのとぬかしおる。諺の方が様々な成立ちからできた言葉だというのに!
コホン、話が逸れてしまって申し訳ない。
まぁ諺というものはそれはそれは赫々たる偉人が昔にあったその出来事を一句にしたものだ。
そう、昔むかしに本当に起こった事柄を体現した────それが【諺】だ。
その諺が猛威を振るったら果たして人類は何人生き残るだろうか。
まぁ幸いにも諺の事柄が忘れられつつあるので、人類に毛ほども脅威にならないのだが。
でもだ。もしそれを患ってしまったらどうなるかな? ああ、死にはしないよ。でも恐ろしいことが起こるのは確かだけどね。
え? 諺だと分かりにくいから別のにしろだって? 月欠くんが考えてよ。男子ならそういうの得意であろう?
……故事成語? ダサすぎて本当に十五歳の男子高校生なのか疑いたくなるよ。
私? そうだね……【怪奇症】なんてどうだい?
よし。今から諺一万大辞典をその頭に叩き込んでやろう。分かってくれたか。よし、今から怪奇症と呼ぶことだ。君もそうしてくれ。
さて。私は主役を降りて続きは月欠くんに任せるよ。語り部が得意であろう? 何せこの物語の主人公なのだから。
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