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 屋敷はお約束。鬱蒼とした森を背負い、夏草による無法地帯の中に埋もれている。年代を感じさせる褪せた煉瓦の壁一面にびっしりと蔦、隙間が覗いたと思ったなら、みっしりと苔。お約束お約束。真夏だというのに、森は近いというのに、蝉の声は遠い。


 世界そのものに遠巻きにされてしまっているようなそんな不気味の真ん中に立ち、声を張り上げる奴ならバカでなければなんだろう。


「さぁ行くわよーっ、汐崎。れぇッつゴー!」

このヒトのことですが。


「へぇへ」


「あんたね、いつまでもそんな返事しかしてないとこの先うっかり○兵衛とかって呼ぶよ、私は」

「それ伏せ字にする意味ってナニ」

「名称明記を避けてんのよ。訴えられたら面倒でしょ」

「誰も聞いちゃいないこんなトコロでそんなん気にする意味ってナニ」


 答えは言葉では返らずに、凍るような一瞥だった。

 解凍ののち、オレはトホホと言ってみる。聞いてくれちゃいないわけなのよ。トホホ。今やどちら様からも、オレたち、遠く離れ過ぎ。


 さくさくと砂利を踏み歩いていく後ろ姿に、ぶつけるよーに思いっきりの息を吐く。けれど対象は次元がズレていて、ダメージは期待できそうにない。


 太陽サンサン、候は初夏。首都東京から高速かけって三時間ちょい。なんでオレがこんなとこに着いちまっているのか、そもそもの事情を聞いてくれ。

 

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