崩壊之天使
数億年前、この星を含めた単一星団規模を支配・管理する神の私世界内で作られた"この星"の管理を任されているのが天使であり、堕天使は3000年前の堕天使生誕之日時に堕落した天使のことを指す。
堕天使が生まれたということは、この星の管理機構が崩壊寸前であるこを示しており、崩壊が進んでいるとはいえ、そんな管理機構の一端を担っていた元天使の存在が弱いはずがない。
そして、堕天使の中でも強力な六之堕天使の一翼である崩壊之天使が、いま僕の敵として立ちはだかっている。
「一気に決めるしかない……天雷滅殺!」
「崩壊之波」
天雷滅殺は、天空から巨大な雷を召喚し、対象に落とす魔法で、その威力は岩石を砕きクレーターを作るほど。だが、その魔法は崩壊の力によって威力を減衰させられ、〈崩壊之波〉で完全に打ち消される。
「っち、もう一発だ」
「無駄なことが分からないの?」
再びの魔法も崩壊させられるが、気にしない。足場を大きく蹴り上げると、崩壊之天使へと一直線へと迫る。そして、崩壊之天使が反応したその瞬間、今度は転移魔法を使い崩壊之天使の視界から消えるとそのまま背後へと回り込み、そして最大威力の魔法を発動する。
「神殺之雷!」
先ほどとは比べ物にならない赤い稲妻を生み出しながら、ゼロ距離で、無数の稲妻が崩壊之天使を襲う。
「〈次元崩壊之波〉」
だが、神殺之雷も彼女の身体に触れた瞬間消滅してしまう。
「これも、だめか」
「つまらない攻撃だわ」
……さて、どうするか。崩壊に対する耐性がないと〈崩壊之波〉で攻撃は崩壊する。物体化する攻撃が、通用しないとわかった以上、攻撃は無意味だ。なら……。
「ユリア」
僕はそう呼びかけると、彼女の手を取りこう言った。
「君の持つその-能之貿心-で僕のスキルを限界まで削ってくれ。あとは、それで得たスキルポイントで――」
「……わかったわ」
そうして、ユリアは聖遺物-能之貿心-で僕のスキルを削り始める。
「崩壊之天使、お前ら堕天使はまだ力を取り戻しちゃいないだろ?」
「……それがどうかしたというの?」
堕天使は一度、堕天之王率いる堕軍として神之天使長率いる天軍と戦い――天界大戦争に敗れている。その戦争で生き残ったのは、堕天之王の分裂体の2翼と、崩壊之天使を含めた4翼の計6翼の堕天使のみであり、生き残ったそれらの存在も秩序之大天使が生きている限り力を完全に扱うことはできない。
だから、崩壊の力の根源、スキル〈崩壊之憂国〉を完全な状態で使うことはできないはずだ。
「簡単なことだ、管理機構の存在と言えども無敵ではない。確かに無類の強さを持っていることは事実だが、その力も今は封印されている。となれば、〈崩壊之憂国〉の力も完全ではないんだろう?」
「ええ、だけれど、あなたを崩壊させることなんて簡単よ」
「なら、試してみるか?」
「遊びに付き合ってくれれば、もう少し長生き出来たでしょうに……。〈崩壊之領域〉、そしてさようなら――〈崩壊之爆発〉」
-能之貿心-によって数百のスキルを犠牲にして〈無限再生〉を取得したのとほぼ同時に、崩壊之天使は、この空間ごと僕を殺すために、その力を開放する。
だが、不完全な崩壊の力は再生能力を無視できないのは、神殿に来る途中で把握していた。崩壊之天使の崩壊攻撃を〈無限再生〉で耐えると、もう一つのスキルを使う。
「〈一撃必殺〉」
僕はそう言って、大抵の防御・スキルを無効化し、標的を一撃で無力化するスキル〈一撃必殺〉を発動すると、崩壊之天使の方に向き直る。そこに居たのは、原型を上半身しか留めていない肉塊だけだった。
「なぜ?どうしてなの……?」
まだ意識だけが残っているのか小さく声が聞こえる。
「お前の崩壊を再生力で耐える。崩壊の力を根拠とした防御に絶対の自信があるお前なら、〈一撃必殺〉も避けないと思ったよ」
「……あり得ない、わたしが負けるなんて」
「そう言わないでほしいな、僕もお前を完全に殺すことはできないからさ」
僕はそう言って、崩壊之天使の頭へと手を伸ばす。
「"〈愛牢制限〉"」
「……え?な……なにをしたの?」
「惚れさせた」
"〈愛牢制限〉"によって彼女は僕に惚れてしまった……と思う。管理機構を破壊するスキルを得ていない現段階では、これが僕のできる限界だ。
「お前の主人はユリアにしておくから、少なくとも彼女は殺せなくなった。じゃあ、とりあえず僕たちはここから離れるけど、せいぜい天使に捕まらないようにね」
そう言って僕はユリアと二人で神殿から去るのだった。




