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異天神話 Wall of Fiction  作者: あんず
概念世界
4/10

不老の達成

 そうして、私達はスキルポイントを貯めながらスキルを入手する旅を始めた。

 この世界では、当たり前だけど死ぬ。寿命以外にも怪我もするし、お腹も減る。ほんの数日前の試合のときは確かに死ぬことはあったが、それもあくまで殺されたとき。たぶん、このハードモードを経験するのは数万年前に私が生まれ、神になるまでの短い時間以来だった。

 だから、まず始めたのは"健康な生活"だった。


 私も彼も無限の世界を内包している、だから――この天世之世界(ローワールド)に一致した"法則、人物、状況”の世界というのは存在している。無限にある世界一つ一つに、無限のパラレルがあり、また、その世界の時間経過速度も時間という概念の法則が世界ごとにバラバラであり固定されたものではないため、無限に極限まで近い時間経過速度に設定することによりその世界のループを早めることができる。


 そうやって、無限の私世界(マイワールド)から得た情報で私と彼が導き出したのは、"健康な生活"だった。


 この世界は彼の考察通り、既に数億の時間が流れた単一世界と同様、第871的魔法法則に近似した世界だった。国、身分、人間種、異種、ギルドも存在しており、科学法則とは異なる世界だった。

 私たちは近くの町へと赴いた。警戒して時間を無駄にすることよりも、"神"の可能性にかけて。

 私たちの賭けは成功し、住人の全員は天世之世界(ローワールド)のことしか知らず、また自身の内包する天世規模の私世界(マイワールド)すら、夢の一部程度としか自覚していなかった。


 そして私たちがこの世界で再び冒険者として過ごし、数年が経ったときのことだった。



「今回の旅路はかなり長かったね」


 と、この世界に来たときの少年の風貌から青年へとなった彼は呟いた。

 もちろん、今の私もあの頃の面影はない。


「それで、スキルポイントの獲得倍率は上がったのかしら?」


「あ〜どうだろうか。今見てみるよ」


 彼はスキル〈ステータス閲覧之権能(ジ・オーダー)〉"を開きながらそう言った。


「10も上がってる……これでやっと100.0の大台に乗った」


「ええ、私もちょうど100みたい。計画実行まで、あと900このペースだと間に合うか微妙なところね」


 私たちは二人で行動を始めながら計1億のスキルポイントを獲得する一歩手前まで来ていた。そして、その旅の途中、私と彼は"〈不老之存在(生きる者)〉"を獲得するための条件(万の生命、1兆スキルポイント)のためにある計画を建てていた。


「ああ、だがこの"聖地"に来たのは倍率アップのためだけじゃない」


「え?殺戮計画のため以外ってこと?聖地に?でも、ここには何も――」


「あるよ、ここに」


 彼は、聖地の中央、祈りを捧げるための祭壇に飾られている"指輪"まで一気にワープすると、私の制止を振り切り"それ"を手に取りながら言った。


「"愛之指輪(あいのゆびわ)"、これのことさ。これで、やっと君に僕の愛を証明できる」


 彼はそう言うと、私の左手薬指に指輪をはめた。


「え?それって……」


「ああ、結婚しよう」


「け……っこん?」


 "結婚"という言葉の意味が一瞬わからなかった私は思わずそう聞き返したが、彼はその問いには答えずに続けた。


「そして、愛を誓い合った者同士でこの指輪をはめた場合、お互いの寿命が永遠になる、愛を誓い続ける限り。これが僕の出した答え、"寿命"ルールを突破する方法だ」


「それってつまり……どういうこと?」


「僕が死ぬときまで、君にずっと傍にいてほしい」


「違うそんなこと聞いてるんじゃ、私は――」


 私の言葉を聞いていないのか彼は話を続ける。


「お互いに愛を誓うためには、君の愛が必要なんだ」


 そう言うと彼の左手の甲に紋章のようなものが浮かんだ。


「ねえ、それは?フェルト?あなたまさか……」


 私はそう聞いたが、彼は答えずに続ける。そして、彼は私を一瞬で床に倒すと馬乗りになった。


「フェルト?どう……して?」


 突然の彼の行動に驚きながらも、私はそう聞いたが返事は帰ってこなかった。


「……ごめんよ、"〈愛牢制限(ラヴァール)〉"」


 意識を失う直前、そう聞こえた気がした。



 ――その後のことはよく覚えていない。

 "〈愛牢制限(ラヴァール)〉"の効果で私は彼以外を愛せなくなった。彼以外が嫌いだから彼のことを相対的に好きになって、気が付けば私は彼と結婚していて、愛之指輪(あいのゆびわ)によって疑似的に不老の身体となっていた。

 

 愛之指輪あいのゆびわによって得た不老の身体は完璧ではなく、その時点で固定されてしまい、スキル〈不老之存在(生きる者)〉のように自身の望む肉体年齢で固定することはできない。


「フェルト、ほんとうにこれでよかったの?」


「君の危惧する通り、あのペースでは到底間に合わなかった。こうするしかなかったんだ」


「そう、ね」


 そうして私たちは旅を続けた。――計画を盤石にするために、愛之指輪(あいのゆびわ)が必要無くなるように。

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