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染み

 客間に通された良二には滞在中、3人のメイドを宛がわれることを知らされた。

 通常、部屋の中に一人、ドアの外に二人待機するらしい。

 良二はアデスに来た時の、フィリア邸へ招かれた時とはまた違った待遇に、却って尻の収まりが悪かった。

 おまけにメイドさんに関しては、耳元で「お好きにしていただいても?  彼女らも異世界の殿方に興味津々ですわ」などと、含み笑いのラーさまに言われたもんで変に意識してしまう。機密保護精神はどこ行った?

 別れ際に容子が変な目で見ていたから、多分ラーさまの囁きは彼女にも聞こえていると考える方が妥当だ。ラーさまもそれを重々理解してのタイミング、声量のはず。

 大魔王陛下の恋人に浮気指南など本気であるはずもなく、ラーさまのいたずら心であるのは明白なわけだが、メイドさんの目は……

「……? 何か御用でしょうか、ご主人様?」

 彼女はいわゆるダークエルフのようだ。

 別にシオンの様なエルフ族は人、ダークエルフは魔族、と言うわけでもなさそうだが、ダークエルフに魔族的印象を持ってしまうのはラノベ漬けの良二の偏見であろう。

 良二本人もそれはわかっているからより普通に接しねばとは思う。だが、それが反対に不自然であったかも?

「あ、いえ、なにも……」

 ガン見したわけでもなく、単に目が合ってしまっただけだったのだが。

「そ、そう言えばお名前は何ていうの、かな?」

「ナルニカ・マルティネイトと申します。どうぞお見知りおきを、お見知りおきを!」

「あ、どうも……」

 お見知りおきを! を二回連続されてしまった。

 そのままナルニカはじっと良二を見つめていた。そして続ける。

「なんでもお申し付けくださいな。私にできる事でしたら、なんでもさせていただきますわ、なんでも!」

「なんでも!」が三回も繰り返されて、最後の「なんでも!」がやたら強調されてるようだが、どんな意図があるのか。

 ――彼女らも異世界の殿方に興味津々ですわ……

 それしか無さそうだなぁ……ってラーさま、余計なこと言わんでください!

「そうですわ、ご主人様は旅のお疲れもありましょう。私、マッサージも得意なんですよ? 是非お試しくださいませ!」

 ナルニカさんがツカツカと近寄ってきた。

「え、い、いやあ、旅の疲れなんてそんな大層なものは!」

 実際のところ、地球での海外旅行みたいに船や飛行機で何時間も揺られている訳でもなく、例のゲートをシュッと通過しただけ。魔界に入った後も、乗り心地抜群の馬車に数十分乗った程度で疲れらしい疲れなどはなかった。

 しかし彼女は、絵に描いたように手薬煉を引き、口元に不穏な笑みを浮かべジワリジワリと迫ってくる。

 鼻息も荒く迫ってくるナルニカに後ずさりする良二。思わず足が縺れバランスを崩した。

「ほら、やっぱり! お体はお疲れの様ですわ! さあ、ベッドで横に!」

「いや、マジでいいから!」

 良二の叫びも虚しく、エルフメイドさんは良二の胸ぐらを掴み、フン! と気合を入れ、ベッドに放り投げた。

 それは超高級・高品質なベッドなのであろう、放られた良二の衝撃を一回も跳ねる事無く、しっかりと受け止める優れもののクッションでありました。さらにその上に乗っかってくるナルニカさんの衝撃も見事に吸収してしまうほど。

「さあ! どこからマッサージして差し上げましょうか!? 肩ですか? 腰ですか? それとも!? どこでも好きなところを仰ってくださいな!」

「だからありませんてば!」

「では私の好きなところをマッサージして差し上げますわ!」

「なんでそうなる!」

「だって! お館さまったら、事あるごとに異世界の殿方、隊長様との逢瀬をご自慢になるんですのよ! もう、この世のものとは思えない快楽だの、雲の上にいるようだの、もともと天から堕ちて来なさったのに天にも昇る衝撃だの、それはそれは得意げに!」

 なに言い触らしてくれてんだ、あの黒ビッチ!

 て言うか、黒さん、そっちもそんな手練れか? いやいやそんなはずは無い!

 所帯持ってるかどうかの違いなだけで、俺とそうは大差ないはずだ! なんせあの人の人生七大不思議筆頭は!?

 それがラーさんやホーラさんをあれだけ夢中にさせる何か……まさか地球人特有の? エロ系チートスキル? もしや俺にも!? じゃあ試してみたい、是非試したい! ここはお言葉に甘えてナルニカさんと………

 いや! だめだ! 俺の最初はライラと決めたんだ!

 あの時にそう決めたんだ!

 ………………あれ? いつ、そう決めたんだっけ?

 と良二の意識がちょいと他所を向いた時、

「そんな事言われ続けて、目の前に、その異世界の殿方がいらっしゃると言うのに、ただ指を咥えて見てるだけで我慢しろと!? どうせなら指よりペニ助咥えたいと思うのが乙女心と言う物でしょう!」

言いやがったぁ~!!

過ぎたるは何とやら。言われたからと言って「そうですか。では遠慮なく……」とベルトカチャカチャ、何て気になるワケも無く、過激すぎてむしろ萎える。つかドン引きそのものである。

「あんたと俺たちの考える乙女心のギャップが激しすぎるわ! 引くわ! マジ引くわ!」

「もう、言葉なんて不要でございましょう! 大丈夫、天井の染みを数えている間に終わりますわ!」

「何でそういう言葉だけ共通してんだよ! てか、お掃除行き届いてるから天井に染みなんか無いじゃん! さすがだよメイドさんたち、お見事だよ! 数える染みなんて無いからこれで終わり! ハイ終わり!」

「だったら釘の頭の数でも数えてて下さいな!」

「見えるかー!」

「ああもう! 問答無用でございますわ、破廉恥御免!」

 ナルニカは上着を脱ぎだした。

 まだ下着が最終障壁として押さえてくれてはいるものの、ポリペイアンほどではないが残念ながら? ライラよりは大きいお胸が良二を陥落させるべく揺れまくる。

 最近では変わってきているとは言え、ゲームやアニメではダークエルフはエロ担当にされることも多い。過去に、ノーマルなエルフが清楚な性格や控えめなスタイル設定が目立った反動とも言われるが、目の前のダークエルフは明らかにエロ担当だし、つかサキュバスと言ってもいいじゃんこれ! リョウくん危うし! と、


バアァ━━━━━━ン!!


突然、爆発音の如き豪音を響かせながら部屋の扉が開き、ものすごい剣幕の女性が入ってきた。

 この5・1ch的な音を響かせる扉の開け方をしなさる御方を良二は一人だけ知っている。

 そう、我らが特別遊撃隊風紀委員長、小林容子さんその人である。

「お、お嬢様! 恐れながら、まずはご主人様に入室のご許可を!」

 外に待機していたメイドが容子に諫言。しかし、相手が悪い。

「自分の彼氏の部屋に入るのに、いちいち許可がいるとか何の冗談? お控えなさいな!」

 いや、ごもっとも。

「はは! 申し訳ございません!」

 容子に一喝され、外のメイド二人は即座に低頭した。ついで容子はナルニカを睨みつける。良二は思った。

 ――容子さんつえ~。てか怖ェ……

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